文学系心理士の自己投資ブログ

文学系心理士の感想部屋

文学系心理士が好きなことを徒然なるままに書きまくるブログ。小説、NETFLIX、たまに心理学のことも♪

覚醒するシスターフッド

国内外の作家10人のシスターフッドの作品を集めたアンソロジー

表紙は可愛らしいけれど、内容はなかなかに濃くて難しい。

 

リッキーたち サラ・カリー

イプされた四人の大学生たちは被害者として生きることを拒否して生きようとするがー?!


ういう内容なのか最初はよく分からない部分もあった。驚くべきことにみんなリッキーに名前を変えてしまう。そのため、微妙に違う呼び方にしているのがおもしろかった。私も子どもの頃にリカちゃん人形をいくつか持っていて微妙に名前を変えていたのを思い出した。


イプという辛い出来事を扱っている作品だけれど、怒りのエネルギーだったり負けないという思いが強く出ていて勇気づけられる。

そんなリッキーたちも少しずつリッキーでいなくてもよくなっていく。

 

パティオ8   柚木麻子

庭を口の字形に囲む形で建てられた集合住宅。ステイホームによって在宅勤務、在宅子育てを余儀なくされた女性たちに、住民の男性から苦情が出てー?!


作の中では読みやすい作品。

時代も現代だしちょうどコロナ禍を描いているので共感できる部分も多い。ただ、今の状況とは違って初期の頃なので全く外に出れなかったりしている。今の方が感染者は多いのになんだか不思議だよね。


どもの声がうるさいとある住民の男性から苦情を言われる。でも実際は彼も子どもの声がうるさいことが本当の原因ではないことは分かっている。

まあでもずっと子どもの叫び声とか聞いているとストレスがかかるのは分かる。ただこの集合住宅は子どもが中庭で遊んでいいというのが前提条件だったので、それなのにわざわざ言うのは…という感じ。

 

々仲がいい住民たちがそれぞれの得意分野を活かして力を合わせていく様子は読んでいて気持ちよかった。でもなによりも!味方ではないと思っていた苦情を言ってきた男性の妻も協力してくれるのがすごい!これぞシスターフッドって感じがする。

でも最後はちょっと可哀想にも感じるけどね。

 

ケンブリッジ大学地味子団 ヘレン・オイェイェミ

ンブリッジ大学には地味子団がいる。男性たちが集まる他の団と敵対関係にあったがー?!


体が硬めというか、最初はどういうことがよく分からなかった。そもそも「〜団」っていうのに馴染みがないし、大学でそういうのがあるのもよく分からない。

サークルとは別でってことだよね?いつかモンスターズ・インクの大学生編の映画を観た時に寮ごとに別れてたりしてた気がする。「ザ・オーダー 暗黒の世界」っていうドラマでも魔法を使える不思議なクラブがあって〜という感じで、アメリカとかの大学にはそういうのがあるんだろうな〜となんとなくで読んでいた。


々、男性側が地味な子を連れてきてバカにしたことがある、というのが事の発端らしい。そういうアホなこと大学生でするなよ…小学生かよ…って思ってしまう。

でもアホなことだけど普通に傷つくよね…。


外に今はゆったりとしたクラブなのがおもしろかった。そして最後はうまい感じにまとまる。

 

先輩狩り 藤野香織

染症の影響によりずっと女子高生として生きることになってしまう。彼女たちは夜に彷徨いー?!


一応現代っぽい設定ではあるのだけど、女子高生たちを取り巻く環境が謎すぎる。夜に彷徨う理由もちょっとホラーっぽくて怖い。

どういうこと??となりつつもおもしろいので読んでいくと、状況が少しずつ明かされていく。


子高校生はいいけど女子高校生はダメっていう考えが怖すぎる。そして永遠に女子高校生として生きる。

一体どういうこと??何者にもなれない期間が長すぎる。ずっと女子高生なんて嫌すぎる…。


の中だとよく女子高生が主人公になったりするけれど、実際の女子高生なんて大変すぎて大人の方が全然楽だと思う。

学生の頃なんて自由もないし勉強しないといけないし、頑張ったからといってお金がもらえるわけじゃないし。

今なんて自分のやりたいことをしたらお金がもらえるし、ある程度は先が見通せるし、自分が欲しいものを買って自分のしたいことができるし。

ということで何十年も女子高生になる世界は無理〜〜〜。まあこの物語の中では現代の女子高生っぽい生活は送ってないみたいだけども。

 

星空と海を隔てて 文珍

司から受けたセクハラ。うまくあしらったつもりだったがー?!


一番リアルな話だった。

飲み会の席でのセクハラ。大事にしたくなくてうまくあしらったつもりだったのに、なぜか表面化して逆に上司からの怒りを買う。

実際にセクハラされたのは事実なのに色々と理不尽すぎる。

その場でセクハラだって糾弾すればよかった?逆に弱みを握ればよかった?でも証拠がなかったら窮地に立たされるのはこっちだし。


く女性は仕事をもらえていいね的なことを見るけど、こういうふうに一瞬で崩れ去るなんてこと男性側はそうそうないじゃん?と思う。

うまくあしらえてたらまだしも、そうできなかったら実際に性被害に合うし、逆に今回みたいに批判されるしでいいことなんてないと思う。

逆に男性同士の方がそういう感情が入り込まなくて親密になれば比例するように信頼されるわけで。そしてそれはよっぽどのことがなければ崩れないよね。

 

なあ、ブラザー 大前栗生

らすじを伝えるのが難しい作品。

日本人の方が書いている作品だけれど、難しかった。

読んでいるうちになんとなく分かるのだけれど、あまり理解できなかったかも。

でもみんなすごく考えていてハッとさせられた。

 

桃子さんのいる夏

隣さんに素敵な夫婦が引っ越してきてー?!


婚をせっつかれている主人公。

隣に引っ越してきた素敵な夫婦。でも彼らにももちろん悩みがあった。

モデルとなった実際の方がいるよう。素敵な人だったのだろうなあ。心があたたかくなる物語。

 

未来は長く続く キム・ソンジュ

星で生まれた少女は、ロボットと犬に育てられるがー?!


一番「物語」っぽかった。

最初はちょっと「?」と思うところもあったけれど、状況がのみこめると彼女たちを応援したくなってしまう。


げて来た女の子の話はリアルで怖い。

人間だけど人間じゃない、特別な存在が親代わり。ロボットと犬だけれど愛情深い育ててくれた。彼女たちの家庭はあったかいなと思う。

この世界観にずっといたくなる。

 

断崖式 桐野夏生

庭教師先の子どもが事件を起こしたー。


ょっと薄暗い話。

存在感のない影の薄いお母さんとか不倫相手の女性を責めたくなるけど、でも不倫や浮気には絶対男性の存在があるもんな…と最近気づいた。

人間同士の関係性だから、「こういう妻だから浮気した」っていう構図は「浮気したいからこういう妻にした」にもなる。だって浮気をしたくないと本気で思ってたら妻を変えたり別れたりするじゃん?

でも妻は家庭には必要、でも恋人も必要だからそういう家族関係になるんだろうな。子どもが一番の被害者。

 

老いぼれを燃やせ マーガレット・アトウッド

級高齢者施設に炎が上がる。警察もなんとかしようとするが、どうにもできない。ある時、自分達の施設にもーー?!


ょっと前提条件がよく分からなかったのだけれど、現実に実際に起きている問題らしい。今作ほどにいくのは極端ではあるけれど。

でも高齢者を非難するというのは、将来の自分を非難することなのになあと思ってしまう。でもそれを考えられないくらい今の状況が大変で辛くて、高齢者と若者が分断されているのだろうな。

それこそ頑張って頑張ってやっとほっと一息つけたらもう高齢者で、そうしたら若者から非難されるって辛すぎるよね。


こっていることはめちゃ怖いのだけど、主人公はあんまり目が見えなくなってて幻視が見えるというシャルル・ボネ症候群になっている。なので、ちょっと幻想的というか現実離れした感じがある。


も怖すぎる〜。施設にいる人たちのことを諦めてるのが怖い。あと、危険な状況が続いていても子どもたちは施設から親を引き取ろうとしないのも怖い。職員たちが逃げるのも怖い。警察がちゃんと動かないのも怖い。

 

最後に

ンソロジーは色々な作家さんに出会えるのが楽しい。

でもやっぱり短編はその世界観には入るまでが大変なので長編の方が好きかも、と思ったのでした。

【小野不由美】ゴーストハント2  人形の檻

ゴーストハントの2巻目です〜!

今回は洋館が舞台!お人形も出てくるよ!

 

あらすじ

古い洋館で頻発するポルターガイスト現象。ナルたちと一緒に来た麻衣は、前回と同様ぼーさんや巫女と遭遇する。一人娘である礼美が持つ人形が不穏な気を放っていることを察知するがー?!

 

読んでみて

前回同様、ぼーさんと巫女の綾子、エクソシストのジョン、そして真砂子も登場する。

洋館ってだけで既に怖そう。しかも裏には池がある…。

ポルターガイストについて勉強になったりして読んでいるとおもしろい。


最初は超能力者がいるのか?となるが、やはり霊の仕業か?人形?それとも…?

と、謎解きもおもしろい。


幼い少女の礼美ちゃんがつねられたり傷をつけられてコントロールされている様子は、只々怖い。人間のようなことするのだな…。

 

ネタバレあり!!


こんな家に住んでいたら怖すぎるのだけど。

人形に何かが?!となったけれど、実際には違った。人形について怖い描写が結構あったのだけれど私は人形好きなんだよね〜。でも人の人形はあんまり持ってないかも、と気づいた。確かに動物とかキャラクターよりも人の人形は怖いかもね。


池で子どもたちが亡くなる部分は宮部みゆきの「この世の春」を思い出した。こちらも子どもたちがたくさん亡くなる。

ホラーって言われると怖く感じるんだけど、内容的には宮部みゆきと似ているのだよね。不思議な話って言われると怖くないのにホラーって言われると怖いという謎。


怖いかも、怖いかも…とビクビクしながら読んでいたけれどそんなに怖くなかった。本当のホラーではないからかな。

子どもの頃は怖い話ばっかり読んでた人間なので新鮮味を感じないからかも。たぶん全体が常に怖い話の方が怖がると思う。

小野不由美先生の他の怖い話もまた読んでいきたいな。

【読んだ本】4月に読んだ本

全部で13冊読みました〜!

まあまあ読めたかな?

 

上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!

読む前は難しい本なのかな?と思っていたのだけれど、話し言葉で書かれているのでインタビュー記事を読んでいる感じですごく読みやすかった。100年以内のことなのに知らないことって多いのだなあと感じた。

今の常識も一世代前くらいからできたのが多いのかもしれない。長生きするなら自分もちゃんとアップデートしていかないとなって思う。

↓詳しい感想はこちら↓

oljikotoushi.hatenablog.com

 

わたしを離さないで

カズオ・イシグロさん初作品。

とてもよかったので他の作品も順番に読んでいこうと思う。

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おんなのじかん

おもしろかったー!!

アルテイシアさんのエッセイ好きなんだけれど、アルテイシアさんと似ている感じで率直に書かれてあってすごくよかった。

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覚醒するシスターフッド

こちらもずーっと読みたかったので読めて満足。

マーガレット・アトウッドが好き。シャルル・ボネが出てきて驚いた。

 

ウォーター・ダンサー

「地下鉄道」についてのフィクションの物語。

リアルさはもちろんありつつ、ファンタジー要素や幻想的な雰囲気が漂う作品だった。

誰かの奴隷になること、尊厳を奪われること、女として生きること…。

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ペルセポリス1 2

漫画で描かれているのだけれど、内容はかなり重い。

主人公のマルジャン・サトラピはイランで生まれ育つが、イスラーム革命、イラン・イラク戦争などに翻弄される。

フランス学校で育って著者にとって、行動がどんどん制限されていくのは本当に辛かったろうと思う。一方で子どもながらデモに参加したり違反品を持っててもうまく切り抜けたりと著者の度胸がすごい。

親戚や隣人が逮捕されて殺されてしまったり爆撃が当たり前になってしまう状況は怖い。また、戦争中の母国から抜け出してヨーロッパに行くとそこでは異質な存在として扱われるのはまた辛い。戦争は辛いし命の危険があるけれど自分の家族や大事な人たちと一緒に暮らせることは何にも代え難いことでもある。

テヘランでロリータを読む」も読みたい。マルジャンが子どもの頃に大学で教員してた感じかな?

でもまずロリータを読むべき??

同じロリータが主題となっているこちらも気になる。

 

回想のシャーロック・ホームズ

有名なモリアーティ教授が出てきてシャーロックと戦うよ。

残念ながらコナン・ドイルによってシャーロックはいなくなってしまったので、次は復活してもらいます。

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すてきで偉大な女性たちが歴史をつくった

ハリエット・タブマンが載っていたので読んでみたよ〜。

知らない人も多くておもしろかった!

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茶色い朝

内容は何かで読んで知っていたのだけれど、本で実際に読むと絵が怖すぎた!

そしてもちろん内容も怖い…。

茶色でない犬や猫は殺されてしまって、そうして遂にはーーー?!

 

元彼の遺言状

ドラマ化されるということで気になって読むことに。

テンポよくておもしろかった。

ドラマとは結構違うね。続編もあるみたいなのでそのうち読もうかな。

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牧師館の殺人

ミス・マープルの最初の長編!

マープル好きだな〜〜〜。ポアロも好きなんですけど、マープル読んでるとマープルがいい!ってなる。

どっちも好き。

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エーミルと小さなイーダ

家にあったので読んでみました〜。

ずっとエーミールと探偵たちの仲間かと思っていた笑。

長靴下のピッピの作者。

 

【阿津川辰海】蒼海館の殺人

前作「紅蓮館の殺人」の続編。

名探偵・葛城と助手である田所くんが主人公。

 

あらすじ

紅蓮館で起こった凄惨な事件。そこでの出来事のせいで名探偵だった葛城は学校に来なくなっていた。葛城の助手だと思っている田所は、同級生の三谷とともに葛城の実家に行くが、台風が勢いを増しておりーー?!

 

読んでみて

炎の次は水。

どちらも自然災害が原因となっている。そのため人間ではコントロールできない。

そんな状況にプラスして殺人事件も起こる。


前回は隠してある道を見つけなければ助からなかったため、そんな状況の中で謎解きするのは変すぎるだろ…と私も思ってしまっていた。

でも今作は台風で逃げ道がどこにもないという状況。できることはもう既にやっている状況であるため、その間に謎解きをするというのは違和感なく受け入れることができた。


600ページ以上もあるなかなかの大作だけれど、読んでいると次の展開が気になってサクサク読めてしまう。

ただ、殺人が起こるまでの前提状況は長め。殺人が起こって台風もひどくなって、というところからの展開は早くて読んでいて気持ちがよかった。


なんとなーく殺される人が分かってしまったけれど、一方で犯人っぽい人も目星がついてしまう。ただ、方法までは分からないし、色々な謎が散りばめられているからおもしろかった。表とか図とか書いてあるミステリってあんまり読んだことがなかったのだけれど、あるとあるで分かりやすいなと思う。


前作は読んだけれど、そこまで落ち込まなくても…と思ってしまうし、田所くんの不安定さにはややドン引きしてしまったりもして(分かる部分もあるのだけど)、完全に三谷と同じような気持ちで読んでしまっていた。

前作よりも今作の方が葛城的にも辛い状況じゃないのか?と思ってしまったり。

でもまあ主人公が高校生という設定だからか無条件に応援したくなっちゃうところはある。ほんと。

 

↓ややネタバレあり↓


謎解きはすごくよかったのだけれど、犯人の心情があんまり分からなかった。

あそこまで計算高くて冷徹なのに最後の最後で取り乱しすぎているような気がするし、お金のためっていうのもしっくりこない。

祖父のお金がなくても父はお金持ちだしさ、今のままの方が盤石じゃない?

家の支配から抜け出したかったっていうのはまだ分かるけども。

みんな犯人って分かる前は犯人のこと好きだったのに冷静すぎる気もしてしまった。


トリックを捻ろうとすると犯人も意外な人じゃないといけなくなって、でもそうすると動機が曖昧になるというか…。

まあ普段クリスティばっかり読んでいるので、そうすると大体金、たまに愛と復讐なのでめちゃ分かりやすいんだよね〜。


田所くんも犯行に加担していたっていう場面はおもしろかった!

これは確かに助手失格だろうな…と思っていたら実は操られていたということで首の皮一枚で繋がったというね。

でも謎を解いてもらうために謎を作るって消防士が放火魔になるのと思考回路すぎて危なすぎるよな。自分が謎を解いて賞賛を浴びるっていう訳ではないけども。代理ミュンヒハウゼン症候群っぽさもある。怖いすぎる。

でもヘイスティングズもカーテンでやろうとしちゃってたけどね。


なんとか?二人は立ち直ったみたいなので続編も気になる。

ただ災害にいつも出会っているので、また災害にあったら不運すぎる二人になるよね〜。まあそういうものってことにするしかないね!

 

↓「紅蓮館の殺人」の感想はこちら↓

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【トーベ・ヤンソン】ムーミンパパの思い出

読んだのは去年なのですが、やっと感想を書こうと思います〜。

 

あらすじ

ある時ムーミンみなし子ホームの前に紙袋が置かれていた。その紙袋の中身がムーミンパパだった!そしてある春の日、ムーミンパパはホームを抜け出して冒険に出るがー?!

 

読んでみて

なんとまあ可哀想なムーミンパパ!

紙袋の中に入れられてムーミンみなし子ホームの前に置かれるなんて!

ムーミンたち一家しか知らないからか、ムーミンって愛情深い種族かと思っていたけれど、実際は人(ムーミン)によるのかな?


そしてみなし子ホームから家出をするムーミンパパ。

マッシュかぼちゃの缶を一缶しか持ってこなかったらしくて、それでこれから大丈夫なの?!!と読んでいるこちらか心配になる。しかもすぐ食べちゃったし。


そのうち森に着いたムーミンパパは初めてみる風景にドキドキ。

近くにいるハリネズミ話しかけるけれどあまり相手にしてもらえない。

まあ急に色々言われたらハリネズミさんも困るよね…。


そうしてその後に出会ったのがフレドリクソン!!

そして親友に!

よかったね!同じ価値観の人と出会えて!!

甥っ子のロッドユール、そしてヨクサルにも出会う。

ロッドユールが可愛いんですよ、ほんと。


そして自分の物語の間にムーミン、スニフ、スナフキンたちの会話が挟まれるのだけれど、スナフキンの「ヨクサルは今どこにいるの?」という問いかけが悲しい。いつもは大人びたスナフキンもまだまだ子どもなのだなあと分かる。

ムーミンパパとムーミンママ以外はみんなどこかに行っちゃったらしい。子どもたちを置いていくなんて!って思ってしまうけど…。

悲しいな。


再びムーミンパパの物語へ。

モランから助けたのはなんとヘムレンさんだった!

自由なムーミンになったのに…。

みんなヘムレンさんの窮屈さが嫌になってしまって、

「おばさんを食べてしまってくれるものが来ないかな。」

とまで言われてしまうヘムレンさん…。

か、可哀想!


そして最後にはニブリングたちに連れて行かれてしまったヘムレンさん。

それを見守るムーミンパパたち。

ムーミンパパはなんだかんだ言い訳をして助けない。

助けないの?!!とびっくりしてしまった。自由すぎるぞムーミンパパたち。


その後、ムーミンパパたちはミムラの娘とミムラと出逢います。

こ、これはまさか?!!

「たいしたミムラだねえ」

といって、ヨクサルはすっかり感心しました。


王様の園遊会は茶目っ気があっておもしろかった。

そして夏至の夜にはチビのミイが生まれる。つまりスナフキンよりミイの方がお姉さんってこと?!み、見えない。

「そうすると、ちびのミイはぼくの親類になるのか」と、スナフキンは驚きの声をあげました。

知らなかったのか?!

スニフもママのこと知らなかったみたいだし…なぜ?!


ロッドユールはソースユールと結婚することになるけど、二人の絵が可愛い!!

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ニブリングたちに食べられてしまったかと思っていたヘムレンさんがみんなに知育遊びをしてニブリングの女王様になっていると知って安心した。うまくいってよかった!


そして最後はムーミンママとの再会。

どうやって出会ったのか知らなかったんですが、びっくり仰天!

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ムーミンがなんとなく海に行くとママが波に乗って表れたのでした〜!

絵が本当におもしろい!めちゃ笑ってしまった。

タイミング良すぎない??

ママは今までどうしてたの??

しかも助けられてすぐハンドバックのことを気にするの??と色々と謎すぎた。


そうして最後には両親たちと再会できた子どもたち。よかったね…!

でもチビのミイが大きくならないのはなぜなのか…?


ムーミンパパの憂鬱

いっそ、ニョロニョロに生まれればよかったかあ。わたしはこんなことさえ考えました。もしニョロニョロたちのようにさだめなく、たださまようばかり運命の星の下に生まれていたら、だれだってわたしになにかを期待することはなかったでしょうよ。わたしだって、どうせたどりつけない水平線に向かって、ただよっていればよかったのです。それなら、しゃべることもないし、一生懸命になにかをする必要もなかったでしょうね。

ムーミンパパの名言

この日いちばん意味があったのは、わたしに初めての友だちができたということです。これから本当の意味でわたしの人生がはじまるのです。

↓以前の感想はこちら↓

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【アガサ・クリスティー】牧師館の殺人

 

 

あらすじ

閑静な田舎村のセント・メアリ・ミードの牧師館の書斎で殺人事件が発生した。亡くなったのは村のみんなから嫌われている判事、ルシアス・ブロズロウ大佐だった。容疑者はたくさんがいるが、大佐の妻であるアン・ブロズロウと浮気していた画家のロレンス・レディングが自首するがー?!

 

読んでみて

ミス・マープルの長編初登場作品。

だからか、今作は牧師のレナード・クレメントの視点が物語が進んでいく。

ミス・マープルは詮索好きで最悪のケースを考えがちだけれど、なんだかんだ合っていることが多い村のおばあさんという立ち位置。

まだ誰もミス・マープルのすごさを知らないので、みんな軽くあしらったり馬鹿にしたりすることが多い。でも最後にはみんなミス・マープルのすごさを認めてくれるのでいいのだけども。ただ、もどかしく感じてしまうことは多い。


ポアロも外国人だからと能力を低く見積もられたりすることが多いので、ミス・マープルポアロの場合も取り合ってもらえないことが多い。ただ、ポアロの方はちゃんと探偵なのでまだ捜査はしやすい。ミス・マープルの場合はまず捜査に入ることが難しい。


今後も出てくるメルチェット大佐やスラック警部も登場する。

スラック警部はあんまり想像力は豊かではないし物語の登場人物としては楽しくないのだけど、文中でもあるように警察官としては優秀なのだと思う。実際に大事なのはこういう人だろうな、と思う。想像で犯人を決めてそこから証拠を見つけるのじゃなくて、証拠から犯人を見つけているからね。ただ、マープルと違って全体を見ていないから複雑な事件だと難しいのだけど。


マープルの甥であるレイモンド・ウェストも登場する。レイモンドはなんだかんだ可愛い。私もマープル目線で見るからか可愛く思える。

牧師のレナードと妻のグリゼルダの関係は好きだなと思った。


今作は時計の時間が15分早いこと、銃の音が聞こえた時間、謎の手紙などの状況や大佐と不倫していた妻とその不倫相手、大佐とはあまり仲がよくない娘レティス、謎の女性エステル・レストレインジ夫人、考古学者のストーン博士なと登場人物たちの関係が複雑に絡み合っている。

レティスが継母であるアンに罪をきせようとしたり、牧師の妻であるグリゼルダと甥がしたイタズラが関係していたり、副牧師のホーズの罪など盛りだくさん。

ちょっとややこしいけれど最後はうまくまとまっていておもしろかった。

 

↓ネタバレあり↓

この前に読んだ「書斎の死体」となんとなーく似ている登場人物がいた。

パーティ好きの青年ベイジル・ブレイクと今作に出てきた女性にモテる画家のロレンス・レディング。

書斎の死体ではいかにも殺人犯だと思われた無責任そうな青年がベイジル・ブレイクで、今作でも妻と浮気した画家がロレンス・レディングだった。二人とも殺人犯っぽく感じるけれど実際はー?!

結末としては正反対だったな、という印象。

書斎の死体では今作で妊娠したグリゼルダが出産しているので、ぜひ順番に読むとおもしろいと思う。


以前にも読んだことがあったので、謎の女性エステル・レストレインジ夫人のことはなんとなく分かってしまった。

にしてもなぜ大佐と結婚しようと思ったのか??前妻にも現在の妻にも言えることだけれどもね。

 

「あの、こんなにちょっと辺鄙なところに、わたしみたいに一人っきりで暮らしておりますよね、誰だって興味を持たないではいられなくなりますのよ。もちろん、毛糸のししゅうとか、伝導のお仕事とか、福祉のお仕事とか、スケッチとかいろいろありますけど、わたしの趣味っていうのはーー前からずっとそうなんですけれどーー人間性の研究なんですの。人さまざまでーーとってもおもしろいんですのよ。それにもちろん、ここのように小さな村ですと気が散るようなことがありませんから、自分の研究に熟練するような機会はいくらでもあるんですの。まず最初に、鳥や花みたいにきちんと分類しますのーー誰々さんは何々属、誰々さんは何々種っていうふうにね。もちろん間違えることもありますけど、そのうちにだんだん間違えなくなるんです。そしたら自分で試してみるんです。小さな問題ーー(中略)ーーもちろん、あとでその仮定が正しかったことがわかったんですのよ。自分の判断をいろいろと応用して、自分の考えが正しいってことがわかるのは、それはとってもいい気持ちですわ」

「あなたが考えていらっしゃることはいつも正しいですよ」

「ですからわたし、ちょっとうぬぼれてしまったんですの」ミス・マープルは白状した。

「でも、いつかほんとに大きな謎の事件が起こったら、わたし、同じようにやれるだろうかって思ってましたの。つまりーー正しく解き明かすことができるかしらって。論理的には、大きな謎でも小さな謎でもおなじはずなんですわ。結局、ちっぽけな実用模型の魚雷だって、本物の魚雷とおなじですからね」

 

「今まではお話しすべきじゃないと思っていたんですの。自分の信念というものはーーたとえ知識と同じくらいしっかりしたものであってもーー証拠と同じじゃありませんからね。すべての事実にぴったり合う説明がつかない限り、どんなに確信してても口に出すことはできないものですわ。わたしの説明も完璧なものじゃなかったんですのーーたった一つだけ欠けているものがありましたーーところが突然、クレメントさんの書斎を出ようとしたときに、鉢植えのシュロがフランス窓の横に置いてあるのに気がつきましたのーーそれでーーもう、すべてがはっきりしたんですのよ!お日さまの光みたいにはっきりとね!」

ミス・マープルが事件の謎を解こうとする理由がここで書かれている。読んだのが昔だったからか、なんとなくは分かっていたけれど今回再度知れてよかった〜!

 

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【コナン・ドイル】回想のシャーロック・ホームズ③

やっと③です〜!

モリアーティ教授が出てくるよ!

↓①と②はこちら↓

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寄留患者

優秀だがお金のない医師パーシー・トレヴェリアンは、ブレッシントン氏から開業資金を援助するという申し出を受ける。ただし、ブレッシントン氏も医院に住んで寄留患者となり、ブレッシントン氏に収入の3/4を渡すことが条件となった。一緒に住み始めてブレッシントン氏は何かに怯えているようだが、パーシーには話してくれない。そんなある時、ロシア貴族の親子が診察にやってきてー?!


寄留患者という言い方を初めて知った。

自分でお抱えの医者というか医院を持てるってすごいお金持ちだよね〜羨ましい。

ただ、3/4も渡すって多くない??収入のほとんどじゃない???と心配になる。

でもまあ家賃がきっとめちゃ高いだろうから妥当な金額なのかな??

 

ブレッシントン氏はどう考えても何かを恐れている様子だが、シャーロックには明かさない。

そこで明かしておけば…と思うけどしょうがなかったのかな。結末が分かっていたのか、ブレッシントン氏が殺されてもあまり動揺しないシャーロック。もっと守ってあげればよかったのに…と思わないでもないけど。

悪者だったということも分かっていたからこそ、あまり落胆していなかったのだろうか。

 

タバコの切り方などから部屋に複数人いたことを解き明かす場面はかっこいい。

今回も復讐もの。そして犯人たちは捕まらないが、不運な汽船に乗っていたのではないかとシャーロックは考えている。

シャーロック・ホームズの冒険「五つのオレンジの種」でも同じような結末になった気がする。

捕まって終わり!一件落着!という感じではなく、謎の部分は謎のまま終わる。けど悪いことしたら天罰が下るよっていう感じに終わる。


ホームズ語録のうちのひとつ。

「正義の剣はなお健在であり、いずれはその応報を果たしてくれるものと、ぼくなんかは信じているんだけどね」

 

ギリシア語通訳

シャーロックは兄のマイクロフトをワトスンに紹介する。そこでマイクロフトに来た相談をシャーロックが受け持つことになる。ギリシア語を通訳できるメラスさんはある時目隠しをされて連れて行かれてー?!


シャーロック・ホームズの冒険の「技師の親指」と似ている感じ。

今回は完全に騙されて拉致されたわけだけど。でも2回目もあったわけだから、そう思うと脅しに屈せずに警察に行った方が良かったのではないだろうか?

まあでも脅されたら怖いよね…。


兄のマイクロフトがサラリと出てくる。

シャーロックと同じかそれ以上に賢いにも関わらず、活力がない。

わりと普通のおじさんっぽい笑。

まあ確かに普通はそうだよね、と思わないでもない。シャーロックは謎が好きだし探偵を仕事にしているけれど、他に仕事があったらわざわざ深堀しないよな〜。面倒なことに巻き込まれそうだし。

シャーロックは冒険をいつもしていてどっちかというと子ども心を忘れてないような感じがするけど、マイクロフトは普通の大人なイメージ。リアル。


話の真相は結構「?」だった。

お金が欲しいからといって結婚相手の兄を監禁して意味ある??と思ってしまう。既に犯罪では??そんなことしたら妹に取り入った意味なくない??妹も逃げ出せなかったのか?と色々考えてしまった。でも最終的に意味深な感じで終わる。

妹が仇を打ったということなのかー?そこで妹が反撃できたのならよかったけど、もっと早く反撃できなかったのか??

 

海軍条約事件

ワトスンの学生時代の友人、パーシー・フェルプスは国家間に関わる重要な文書を紛失してしまった。それ以来調子を崩している。ワトスン経由からホームズに依頼が入りー?!


この話結構好き。

もし自分がこんな目にあったら…と思うと胃がキリキリするけど、読者としてはパーシーもうちょっと頑張れ!って叱咤したくなる気持ちもある。

書類が紛失した執務室と廊下、通用口などの見取り図が書いてあって分かりやすい。書類が紛失した際の話もハラハラするし、犯人当てもおもしろかった。用務員が怪しそうだがー?!

ただ登場人物がいないのでかなり絞られるんだけど。


シャーロックの自惚がすごい。

「疑っていますよ、ぼく自身をー」

「なんですって?」

「あまりにも早く結論に到達してしまったことについて、です」

こんなこと言われたら大丈夫かこの人?ってなるのは当然だよね笑。キザすぎる。


シャーロックが屋敷の住人に嘘をついて油断させようとするのはさすが。

せっかく盗んだのに部屋の下に隠して取れなくなっちゃうなんて不運だな。ただ、たまたま機会が訪れたからやっちゃったていうのはタイミングが悪かったのか…。でもシャーロックが犯人はどんなことでもやりかねない人物と言っているので、どこかの時点できっと悪いことをしていたでしょう。妹は可哀想だけど。


ホームズ語録のうちのひとつ。

「きみは決定的瞬間にきあわせたよ、ワトスン。もしこの試験紙が青のままなら、万事問題なし。だがもし赤く変わるようなら、ひとひとりの命にかかわるんだ」

 

最後の事件

ある夜、ワトスンの家にシャーロックは前触れもなくやってくる。彼は何かを恐れていたー。ロンドンの知能犯罪の背後にいる人物・モリアーティ教授との戦いが最終局面を迎えようとしていてー?!


有名なモリアーティ教授。

ジェームズ・モリアーティだと知っていたのだけど、彼の弟もジェームズ・モリアーティらしくて「?」となった。


この作品を読んだ記憶がほぼなくて、読んでなかったのだと思っていたらシャーロックとワトスンが最後の方に逃げるローヌ谷あたりの描写を読んだことを思い出した。当時は子どもだったのもあって台詞のない描写はあまり好きじゃなかったのだよね。今思うと全然長くないのだけど、当時は長いなって思ったことを今回思い出して、これ読んだことあったのか!とびっくり。

モリアーティ教授のことは全然覚えてないのに…(苦笑)。

モリアーティ教授は突然出てきてシャーロックもいなくなって、突然すぎてよく分からなくて記憶に残らなかったんだと思う。その後に復活もしたし。

 

モリアーティ教授がそこまで執拗にシャーロック狙う理由がよく分からなかった。賢いんだし一旦立て直した方がよくない??と思ってしまうけど。

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解説まで踏まえて読むと、本当にコナン・ドイルはホームズ書くの嫌だったんだな…と感じる。グラナダのテレビドラマではモリアーティ教授はこの前からホームズと因縁の中だったということにしているらしい。最近観たモリアーティ教授が主人公のアニメでもそんな感じだったし、そりゃそうだよなという感じ。

いきなり大物が出てきていきなり死なれてもよく分からないってなるよね。でもまあ元々敵対関係だったら最後の最後でホームズが敗れたらそれこそ読者から反感買いそうだしね。


最近、名探偵コナンの映画が公開されたのもあって見かけることが多いのだけど、主人公の江戸川コナンシャーロック・ホームズが大好きじゃないですか。尊敬していると言っていい。つまりコナンがシャーロック・ホームズを好きって思うと…なんか皮肉に感じてしまった笑。

現実のコナン・ドイルシャーロック・ホームズから抜け出そうと必死だったわけで。

現代だったらコナン・ドイルも純文学じゃダメって思わずに済んだのかな〜とか色々考えてしまう。「若草物語」でもジョーが殺人の話を読んだり書いたりするのはよくないっていう描写が出てくるんだけどその考えが今の私には全く分からないという。当時の感覚でいうと道徳的によくなかったということなんだろうな。

若草物語アメリカで時代もコナン・ドイルよりはちょっと昔だけど。

もし私がジョーの時代に生きていたらミステリーとか人が死ぬ話ばっかり読んでいるのでヤバい女性だと思われたのだろうな…。


本当はこの後にバスカヴィル犬を読みたかったのだけど今作でホームズが消えちゃったので、時系列的に今度は復活を読もうと思います。

そして全部読み終わったらまたコナン・ドイルの本読みたいな〜。

コナン・ドイルがもうシャーロックを書きたくないから拒否されるだろう金額をふっかけるけど承認されるっていうのが巻末の解説を読むたびに書かれていて、不憫だけど次の解説も待ち遠しくなっている。シャーロック・ホームズの復活は果たしてどれくらいふっかけたのか?!!