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【アガサ・クリスティー】牧師館の殺人

 

 

あらすじ

閑静な田舎村のセント・メアリ・ミードの牧師館の書斎で殺人事件が発生した。亡くなったのは村のみんなから嫌われている判事、ルシアス・ブロズロウ大佐だった。容疑者はたくさんがいるが、大佐の妻であるアン・ブロズロウと浮気していた画家のロレンス・レディングが自首するがー?!

 

読んでみて

ミス・マープルの長編初登場作品。

だからか、今作は牧師のレナード・クレメントの視点が物語が進んでいく。

ミス・マープルは詮索好きで最悪のケースを考えがちだけれど、なんだかんだ合っていることが多い村のおばあさんという立ち位置。

まだ誰もミス・マープルのすごさを知らないので、みんな軽くあしらったり馬鹿にしたりすることが多い。でも最後にはみんなミス・マープルのすごさを認めてくれるのでいいのだけども。ただ、もどかしく感じてしまうことは多い。


ポアロも外国人だからと能力を低く見積もられたりすることが多いので、ミス・マープルポアロの場合も取り合ってもらえないことが多い。ただ、ポアロの方はちゃんと探偵なのでまだ捜査はしやすい。ミス・マープルの場合はまず捜査に入ることが難しい。


今後も出てくるメルチェット大佐やスラック警部も登場する。

スラック警部はあんまり想像力は豊かではないし物語の登場人物としては楽しくないのだけど、文中でもあるように警察官としては優秀なのだと思う。実際に大事なのはこういう人だろうな、と思う。想像で犯人を決めてそこから証拠を見つけるのじゃなくて、証拠から犯人を見つけているからね。ただ、マープルと違って全体を見ていないから複雑な事件だと難しいのだけど。


マープルの甥であるレイモンド・ウェストも登場する。レイモンドはなんだかんだ可愛い。私もマープル目線で見るからか可愛く思える。

牧師のレナードと妻のグリゼルダの関係は好きだなと思った。


今作は時計の時間が15分早いこと、銃の音が聞こえた時間、謎の手紙などの状況や大佐と不倫していた妻とその不倫相手、大佐とはあまり仲がよくない娘レティス、謎の女性エステル・レストレインジ夫人、考古学者のストーン博士なと登場人物たちの関係が複雑に絡み合っている。

レティスが継母であるアンに罪をきせようとしたり、牧師の妻であるグリゼルダと甥がしたイタズラが関係していたり、副牧師のホーズの罪など盛りだくさん。

ちょっとややこしいけれど最後はうまくまとまっていておもしろかった。

 

↓ネタバレあり↓

この前に読んだ「書斎の死体」となんとなーく似ている登場人物がいた。

パーティ好きの青年ベイジル・ブレイクと今作に出てきた女性にモテる画家のロレンス・レディング。

書斎の死体ではいかにも殺人犯だと思われた無責任そうな青年がベイジル・ブレイクで、今作でも妻と浮気した画家がロレンス・レディングだった。二人とも殺人犯っぽく感じるけれど実際はー?!

結末としては正反対だったな、という印象。

書斎の死体では今作で妊娠したグリゼルダが出産しているので、ぜひ順番に読むとおもしろいと思う。


以前にも読んだことがあったので、謎の女性エステル・レストレインジ夫人のことはなんとなく分かってしまった。

にしてもなぜ大佐と結婚しようと思ったのか??前妻にも現在の妻にも言えることだけれどもね。

 

「あの、こんなにちょっと辺鄙なところに、わたしみたいに一人っきりで暮らしておりますよね、誰だって興味を持たないではいられなくなりますのよ。もちろん、毛糸のししゅうとか、伝導のお仕事とか、福祉のお仕事とか、スケッチとかいろいろありますけど、わたしの趣味っていうのはーー前からずっとそうなんですけれどーー人間性の研究なんですの。人さまざまでーーとってもおもしろいんですのよ。それにもちろん、ここのように小さな村ですと気が散るようなことがありませんから、自分の研究に熟練するような機会はいくらでもあるんですの。まず最初に、鳥や花みたいにきちんと分類しますのーー誰々さんは何々属、誰々さんは何々種っていうふうにね。もちろん間違えることもありますけど、そのうちにだんだん間違えなくなるんです。そしたら自分で試してみるんです。小さな問題ーー(中略)ーーもちろん、あとでその仮定が正しかったことがわかったんですのよ。自分の判断をいろいろと応用して、自分の考えが正しいってことがわかるのは、それはとってもいい気持ちですわ」

「あなたが考えていらっしゃることはいつも正しいですよ」

「ですからわたし、ちょっとうぬぼれてしまったんですの」ミス・マープルは白状した。

「でも、いつかほんとに大きな謎の事件が起こったら、わたし、同じようにやれるだろうかって思ってましたの。つまりーー正しく解き明かすことができるかしらって。論理的には、大きな謎でも小さな謎でもおなじはずなんですわ。結局、ちっぽけな実用模型の魚雷だって、本物の魚雷とおなじですからね」

 

「今まではお話しすべきじゃないと思っていたんですの。自分の信念というものはーーたとえ知識と同じくらいしっかりしたものであってもーー証拠と同じじゃありませんからね。すべての事実にぴったり合う説明がつかない限り、どんなに確信してても口に出すことはできないものですわ。わたしの説明も完璧なものじゃなかったんですのーーたった一つだけ欠けているものがありましたーーところが突然、クレメントさんの書斎を出ようとしたときに、鉢植えのシュロがフランス窓の横に置いてあるのに気がつきましたのーーそれでーーもう、すべてがはっきりしたんですのよ!お日さまの光みたいにはっきりとね!」

ミス・マープルが事件の謎を解こうとする理由がここで書かれている。読んだのが昔だったからか、なんとなくは分かっていたけれど今回再度知れてよかった〜!

 

oljikotoushi.hatenablog.com