文学系心理士の自己投資ブログ

文学系心理士の感想部屋

文学系心理士が好きなことを徒然なるままに書きまくるブログ。小説、NETFLIX、たまに心理学のことも♪

【阿津川辰海】蒼海館の殺人

前作「紅蓮館の殺人」の続編。

名探偵・葛城と助手である田所くんが主人公。

 

あらすじ

紅蓮館で起こった凄惨な事件。そこでの出来事のせいで名探偵だった葛城は学校に来なくなっていた。葛城の助手だと思っている田所は、同級生の三谷とともに葛城の実家に行くが、台風が勢いを増しておりーー?!

 

読んでみて

炎の次は水。

どちらも自然災害が原因となっている。そのため人間ではコントロールできない。

そんな状況にプラスして殺人事件も起こる。


前回は隠してある道を見つけなければ助からなかったため、そんな状況の中で謎解きするのは変すぎるだろ…と私も思ってしまっていた。

でも今作は台風で逃げ道がどこにもないという状況。できることはもう既にやっている状況であるため、その間に謎解きをするというのは違和感なく受け入れることができた。


600ページ以上もあるなかなかの大作だけれど、読んでいると次の展開が気になってサクサク読めてしまう。

ただ、殺人が起こるまでの前提状況は長め。殺人が起こって台風もひどくなって、というところからの展開は早くて読んでいて気持ちがよかった。


なんとなーく殺される人が分かってしまったけれど、一方で犯人っぽい人も目星がついてしまう。ただ、方法までは分からないし、色々な謎が散りばめられているからおもしろかった。表とか図とか書いてあるミステリってあんまり読んだことがなかったのだけれど、あるとあるで分かりやすいなと思う。


前作は読んだけれど、そこまで落ち込まなくても…と思ってしまうし、田所くんの不安定さにはややドン引きしてしまったりもして(分かる部分もあるのだけど)、完全に三谷と同じような気持ちで読んでしまっていた。

前作よりも今作の方が葛城的にも辛い状況じゃないのか?と思ってしまったり。

でもまあ主人公が高校生という設定だからか無条件に応援したくなっちゃうところはある。ほんと。

 

↓ややネタバレあり↓


謎解きはすごくよかったのだけれど、犯人の心情があんまり分からなかった。

あそこまで計算高くて冷徹なのに最後の最後で取り乱しすぎているような気がするし、お金のためっていうのもしっくりこない。

祖父のお金がなくても父はお金持ちだしさ、今のままの方が盤石じゃない?

家の支配から抜け出したかったっていうのはまだ分かるけども。

みんな犯人って分かる前は犯人のこと好きだったのに冷静すぎる気もしてしまった。


トリックを捻ろうとすると犯人も意外な人じゃないといけなくなって、でもそうすると動機が曖昧になるというか…。

まあ普段クリスティばっかり読んでいるので、そうすると大体金、たまに愛と復讐なのでめちゃ分かりやすいんだよね〜。


田所くんも犯行に加担していたっていう場面はおもしろかった!

これは確かに助手失格だろうな…と思っていたら実は操られていたということで首の皮一枚で繋がったというね。

でも謎を解いてもらうために謎を作るって消防士が放火魔になるのと思考回路すぎて危なすぎるよな。自分が謎を解いて賞賛を浴びるっていう訳ではないけども。代理ミュンヒハウゼン症候群っぽさもある。怖いすぎる。

でもヘイスティングズもカーテンでやろうとしちゃってたけどね。


なんとか?二人は立ち直ったみたいなので続編も気になる。

ただ災害にいつも出会っているので、また災害にあったら不運すぎる二人になるよね〜。まあそういうものってことにするしかないね!

 

↓「紅蓮館の殺人」の感想はこちら↓

oljikotoushi.hatenablog.com