シャーロック・ホームズの回想の感想②です〜!
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<グロリア・スコット>号の悲劇
まだ大学生だったシャーロックは唯一(?)の友人であるヴィクター・トレヴァーの自宅に滞在することとなる。ある手紙を読んだトレヴァー氏は恐怖でショック死してしまうーー。
シャーロックが過去の事件をワトスンに回想する。
そこでトレヴァーの父から探偵を仕事にすることを勧められ、初めて職業として考えたよう。
『きみは将来、これで身をたてるといいぞ。世間というものをいくらか知っておる男の言うことだから、これは信用してもらってもいい』
今作はシャーロック・ホームズの冒険に収録されている「ボスコム谷の惨劇」と似ている。
トレヴァー氏が脅されているのは明白。
しかも実際にまあまあひどいことをしている。トレヴァー氏もべドーズ氏は金を盗んだのor文書偽造でをしており、トレヴァー氏はそんな大したことなという感じに言っているけれどそれは都合が良すぎない?と思う。
お金を返す予定とか言ってるけど、だからって盗みは盗みだし大体の人は盗まないでしょと思ってしまう。ジャン・ヴァルジャンみたいに生きるためのパンとかならまだしも。
しかもその後は何の罪もない人を殺したわけだし。でも脅している方も潔白なわけじゃないのにね。既に罪人ってことが分かる方がすぐ捕まりそうだもんね。
あんまり共感できない罪が多い。完全に利己的だから…。
でも手紙の回想部分は「緋色の研究」や「四つの署名」と同様にドラマがあっておもしろかった。反乱を主導したジャック・プレンダガストっていう人が自分勝手ではあるけど魅力的だった。生きてたら主役級になっていそうな感じがする。
マズグレーヴ家の儀式書
大学で同窓だったレジナルド・マズグレーヴから依頼が入る。執事とメイドが失踪してしまったというのだがー!?
こちらもシャーロックが過去の事件を回想する。
事件の書類が溜まっていく一方で、山積みとなるためワトスンは片づけることを提案する。シャーロックも同意するが、櫃の中からくしゃくしゃになった紙片、古風な真鍮のキー、円錐状に尖った木釘、三つの錆ついた古い円錐状の金属片が出てくる。
これはある事件を思い出すために手元に残しておいたものだと言う。
気になったワトスンは片付けそっちのけで話を聞くことにする。
まだ駆け出しだった頃に大学の同窓生から持ち込まれた事件。
彼の家では<マスグレーヴ家の儀式書>というよく分からないが代々受け継がれていたものがあった。
一見よく分からない内容だが、何かの場所を示していることが分かる。
木の位置を見て、木釘を使って計算して位置を特定する過程はおもしろかった。
入り組んだ事件のように思えるが、謎が解き明かされるとメイドの混乱した様子にも納得がいく。にしてもいくら自分に惚れていたからってこっぴどく振った相手に命を託せるって自惚れすぎてるよね…。
実はあんまり賢くない??
ライゲートの大地主
働きすぎたシャーロックは体調が悪くなっていた。ワトスンは友人であるヘイター大佐から誘われ、大佐の家に一緒に療養に行くこととするが、その近所で事件が起こりー!?
いつもそれなりに元気そうなシャーロックが今作はダウンしている。
でも事件が起きると嬉しいようでワトスンが止めても事件を解決しようとする。
ただの泥棒の仕業かと思いきや今度は殺人事件が起きてしまう。
シャーロックが色々と画策しているのおもしろかった。
警部が犯人に重要な証拠のことを教えようとしてしまうので、そこで発作を起こす演技をして難を免れたり、わざと間違えて犯人に書き直させて筆跡と照らし合わせたり、わざと水差しなどを倒してワトスンのせいにして注目を集めさせてその間に違うことをしようとしたり…。
重要人物がイコール犯人なので、犯人に気づかれないように頑張るシャーロック。それを周りは「可哀想に…まだ本調子じゃないんだ…」と哀れみの目で見る。ワトスンも笑。
警部が言った言葉が興味深い。
「じつはその方式のなかにこそ、狂気の芽が隠されている、そう見るものもあるかも」警部がつぶやいた。
最初の方で目撃者の証言が正確すぎることを指摘しているので、なんとなく犯人は分かる。
動機はちょっと微妙だけど。
あと父より息子の方が力関係が強いっていうのも、この時代では不思議なようにも感じた。
有名なホームズ語録のうちの一つ。
「探偵という技術においてなにより大事なのは、数多くの事実のなかで、どれが付随的なもので、どれが決定的なものであるかを見きわめることです。そうでないと、精力と注意力とが拡散するばかりで、ひとつに集中するということがない。」
背の曲がった男
バークリー大佐が亡くなった。一緒にいた妻は意識が戻らない。殺されたのか、それとも事故だったのか?部屋のカーテンには奇妙な生き物が駆けあがった痕跡が残されておりー?!
ワトスンを誘いに来たシャーロック。
殺された大佐と一緒に妻がいたなら妻に聞けばいいのに…と思うが。また意識がはっきりしなきみたいなので仕方ない部分もあるとはいえ昔のイギリスって身分の高い女性に弱いなあと思う。
ホームズのセリフとして有名な「初歩的なことだよ」も出てくる。
この作品が一番好きかもしれない。
悲劇の恋だし、妻も昔の恋人を今でも思っているっていうところがいい。
回想場面は緋色の研究や四つの署名を想起させる。
別にイギリスに帰ればよかったのに、と思ってしまうな。
そうすれば相手は失脚するだろうし、恋人とも再会できたのに。
にしても仕事に恋愛感情を持ち込むって最低だよね。
女性の立場から考えたら知らないまま結婚し続けるのが一番嫌だと思う。
「いまさらどうなるのよ!わたしの一生を返してちょうだい!」という夫人の気持ちが痛いほど分かる。せめて選ばせて欲しかった。
この後二人はどうなったのか?恋人には戻れなくても友人として関係を続けられているといいなと思う。
回想のシャーロック・ホームズは③に続きます!