文学系心理士の自己投資ブログ

文学系心理士の感想部屋

文学系心理士が好きなことを徒然なるままに書きまくるブログ。小説、NETFLIX、たまに心理学のことも♪

【読みたい本】10月に読みたい本

読みたい本シリーズ久しぶりにやります〜!

ここしばらく私生活でバタバタしていたのもあってあまりできず…。もう10月も半ば過ぎてしまったけど書いていこうと思います!既に読んだ本もあるけども!

 

十戒

方舟の続編!気になっていたので読んでみようと思います〜!

 

メインテーマは殺人

初のアンソニーホロヴィッツの作品!

よく見かけていて読みたいとは思っていたのだけれどなかなか読めず。もう一つの「カササギ殺人事件」シリーズとどっちを先に読むのか迷ったのだけれど、「メインテーマは殺人」の方のシリーズはまだ続いているし、毎年ランキングでも見かけるので先にこちらを読むことに!

 

爆弾

以前に紹介されている方がいて気になっていた作品。爆弾を予知する変なおじさんと警察官の戦いって一体どうなるのか気になりすぎる!読みたいと思っていたのでやっと読めるの楽しみ。

 

ヒポクラテスの誓い

中山七里先生の作品。まだ数冊しか読んだことはないのだけれど、法医学という設定が気に入りすぎて!シリーズでもあるらしいので、好きになったら追うシリーズが増えて嬉しいな。

 

両手にトカレフ

プレディみかこさんの小説。ティーンエイジャー向けのちょっと重めの作品なのかな?プレディみかこさんなら間違いないはず!

 

野外上映の殺人

マーダー・ミステリー・ブッククラブの新作!読むの楽しみすぎる〜!主人公含め登場人物たちやミステリー、テンポ、そこまで暗くならない世界観など全部好きすぎる〜!アガサ大好きな女性ということで自分と重なる部分も。本家のアガサ作品もまた読み始めようかな〜!

 

青瓜不動

大事にしすぎて読めていない三島屋百物語シリーズの最新作!よ、よみたい!!

 

一時期よりは最近はあまり冊数が読めなくなってしまっている…。

少し前から新しいことを初めて、それが今は本よりも優先しないといけないことなのでなかなか読めず。でも読書は趣味だし癒しなので5冊以上は小説読みたい!さらに専門書とか気になる分野の本とかもプラスで読めたら嬉しいけどもね。なかなか難しいね。

ブログも適度に更新していこうと思うのでお願いします!

【アンソニー・ホロヴィッツ】メインテーマは殺人

あらすじ

作家のアンソニーホロヴィッツは、ドラマの脚本を書くときに話を聞いていた元刑事・ホーソーンから自分を主人公にした本を書かないかと誘われる。人付き合いも悪く謎に包まれたホーソーンのことをあまり好きではないホロヴィッツは断ろうとするが、事件は奇妙なものだった。老婦人が自分の葬式を予約した後に殺されたのだーーー!

 

読んでみて

アンソニーホロヴィッツの名前は以前からよく聞いていたのだけれど、あまりちゃんと読めていなかった。ミステリーに手を出したのは今回が初めて。なぜか子ども向けホラーは読んだことあったけど笑。

oljikotoushi.hatenablog.com

 

作中にも出てくるが、アンソニーが書いた「絹の家」もぜひ読みたい。ただシャーロック・ホームズ全部読んでからにしようと思っているからまだ先かも。

 

「メインテーマは殺人」は絶賛されているだけあっておもしろかった。特に中盤以降は続きが気になってすぐ読めてしまった。ただ、序盤は作家の一人称で物語が進み、ミステリーと関係のない話も多かったため前半部分はあまりのめり込めなかったかな。今回のミステリーにはあまり関係なくとも、今後も続くホロヴィッツホーソーンの関係性のために必要な箇所だとは思うから仕方ないのだけれど。

作中でホロヴィッツホーソーンに振り回されているけれど、意外にホロヴィッツも振り回してるな、と思う。ワトスン役なんだから仕方ないとは言え、余計なことをしてしまって窮地に陥りがちだよね。

あとシャーロック・ホームズだなあと思う部分があったりしたのはおもしろかった。アガサ・クリスティも尊敬していると言っていて親近感!ホロヴィッツ自身はすごい作家だしもうベテランの域なのに自らワトスン役をするのおもしろいよね。みんなから「あー!そんなことしちゃダメなのに!」「探偵に任しておけばいいのに!」って思われる役をね。

ミステリー自体はすごくよかった!こうじゃない??というのを匂わせつつ実は色んなところに本当の真実が散りばめられていて、という感じでよかった!変にこじつけ感がなくまとまっていた印象。

 

ホロヴィッツのことは色々分かったけれど(ただ、作中の記述と実際の事実はよく分からないけど笑)、いまいちホーソーンのことはよく分からない。でも恐らく徐々に分かっていくのでしょう!二人の関係性がどうなるのかも知りたい!

続きも楽しみ〜〜〜!

【夕木春央】十戒

方舟の感想はこちら!

oljikotoushi.hatenablog.com

あらすじ

芸大に受かるために浪人中の里恵は、父とともに父の兄、叔父が所有していた島に来ていた。少し前に叔父が亡くなり、小さな島だが趣のあるこの別荘を新しくリゾート施設にしようと不動産業者や観光開発会社と関係者とともにやってきたのだ。1日だけの下見で終わるはずだったのだが、殺人事件が起こりーーー!?

 

読んでみて

まだ読んだことない人はあまりネタバレを読まずに読む方が楽しいと思う!

今作は去年話題になった「方舟」の続編?のような作品なので、今回はどういう作品になるのか気になっていた。クローズドサークル自体はあまり好きではないのだけれど、どういう展開になるのか気になり過ぎたので読んでみました〜!

 

前作の展開を基に、恐らくここはこうでは?と考えているとわりと当たっていました!多分この人かこの人が犯人なのかな〜と考えたり、こういうふうにやったのでは?と考えながら読むのは楽しかった!

ただ、やっぱりおもしろいのは最後の推理のところなので、サクサクは読めるけど最後以外はあまり驚きは少なかったかな。

 

やっぱり現代でクローズドサークルってなかなか無理があるのと、個人的には日常の謎が好きなのでこういう壮大な感じのミステリーはあんまり好みではないなと再認識。

1日で読んでしまうくらいにおもしろかったけどね!!「そして誰もいなくなった」みたいな感じの作品なら、もうディストピアっぽい感じとかにした方が個人的には好みなんだよね。「そして誰もいなくなった」もアガサ作品大好きな人間のくせにあまり好きじゃないし。

 

今回も十戒を提示したけどそんなにうまくいかないよね〜〜〜と思ってしまう。そんなことする?!!っていうことをするのが極限状態の人間だし、一定数の集団がいたら揉め事は必然だし、もっと人間のドロドロした部分が出てくるよなあと思うので。「グレイス・イヤー」の時も少女たちだけでの暮らしは大変だったし。「二年間の休暇」とかも仲間割れをするし。そういう人間らしさ、人間臭さの作品が好きなのでやっぱり物足りなさがある。まあミステリーだからしょうがないのか?

 


以下ネタバレあり!!!

 

 

 

 

 

 

ミステリーで言うと「WHY?」が自分としては重要だと思う。今作の理由は分からなくもないけど普通はそこまでできる?と疑問を感じてしまう。ただ、実行した人が実行した人なのでこの人ならできるだろうなあとは思うけども。

でもそもそも前作はなんでそこまでできたのかあんまり分かってなくて。犯人の葛藤が書かれていなかったからあんまり分からなかったんだよね〜。やっぱり葛藤が知りたいんだよね。心理が専門だからかなあ。ヤバいやつってことならそれはそれでもいいんだけど、ヤバいやつになる過程とか知りたいし葛藤も少なからずあると思うので知りたいんだよね〜〜〜!!!私はミステリで驚きたいというよりは、その人にどういう事情があってどうしてそんなことをしたのかを知りたい、自分以外の考えや人生を知りたいから読んでいるのかな。アガサは動機は大体お金だし、それまでに疑わしい登場人物がどんな人なのかちょっとずつ分かっていく過程が好きなのかも。

 

以上!!
サクッと読めるし、次のページを早く捲りたくなる本でした〜!

また次も気になって読んでしまいそう!

【ホリー・ジャクソン】卒業生には向かない真実

「自由研究には向かない殺人」から始まった3部作!ついに完結です〜!

oljikotoushi.hatenablog.com

oljikotoushi.hatenablog.com

 

あらすじ

大学入学直前のピップには問題があった。それは前回の事件から立ち直ることができていなかったのだ。周りも自分も騙しつつなんとか生活を送っていたピップ。立ち直るためにも最後に事件を解決しようとしていたが、そんな時にピップの周りで不気味なことが起き始めてー!?

 

読んでみて

ピップシリーズに最終作!

1巻目を読んでから大好きになった作品。最初はポップな感じだったのに、徐々にダークな感じになってきていたのでどう終わるか気になっていた作品。

個人的には1巻目の「自由研究で殺人事件を調べる」というそこまで深刻にならずにピップが関わっていたのが好きだったかな。もちろん1巻目からもシリアスな側面はあったのだけれど、ピップが当事者ではなかったからこそコージーミステリー的な気楽さがあってよかった。なにより読者である私もピップと一緒に自由研究をやっている感じがとても興味深かったのだよね。

 

2巻以降、ピップ自身が当事者となって事件に巻き込まれるようになってきて、3巻目ではとうとうピップ自身の周りに不気味なことが起き始める。本当に些細なことで、でも不気味なこと。相変わらず仲良しなラヴィには打ち明けられるけれど、それ以外に味方はいない。でもラヴィにも前回の事件の時の傷つきは打ち明けられない。ピップ自身がもう気楽な女の子ではなく問題を抱えている側になってしまっているのが悲しい。でもあれだけのことがあったら仕方ないよね。

 


今作は途中から衝撃的な展開があるということで、一体どうなるのかと思っていたら予想しなかったことが起こって驚かせられた。本当にこれは上手いなと思う。でももっとどうにかできなかったのか!?とも。ネタバレなしだとこれくらいしか言えないので、ぜひ読んでいない人は1巻から読んでみてください〜!

 


以下ネタバレあり!!!

 

 

 

 

 

 

 


一体何が起こるのかとドキドキしながら読んでいた。今作は670Pくらいあって、衝撃的なことが起こるより前ですでに普通のミステリーの本くらいページ数がある。それまで結構手に汗握っていたので、何が起こるのかドキドキしながらも物語に夢中になっていた。

ホーキンス警部は相変わらず役に立たない。どれだけ落胆したことか。まあ確かに分からなくはないけどもうちょっと寄り添うことはできなかったのか?とも思うし。もうちょっと色々分かってから行ってもよかったのでは?とか。ホーキンス以外はダメなの?とか。

そしてピップが捕まって、最悪の事態を想定しながらなんとか抜け出して欲しいと思っていたらまさかの展開に。でも正当防衛では?!!とラヴィと全く同じことを思ったけれどピップの言い分も分からないでもない。でもそれでも正当防衛になるのでは??と思ったけどね。もっといいやり方があったと思う。

ピップは今の段階ですでに色々抱えていて、その上こんな秘密を抱えるのは明らかに精神的な問題が大きくなるだけだと思う。秘密っていうのはなかなか辛い。秘密は秘密だからこそ力を持つのであって、秘密でなくなれば力を持たなくなる。ピップもいつかこの選択を後悔する日が来るのではないだろうか?

そしてうーーーんと思ったのはラヴィや大切な人も巻き込んだこと。ラヴィはまだわからなくはないけれど、他の友人もみんな共犯にするのはどうなの?大切な人じゃないの?と思ってしまった。もちろんこれは犯人が言っていた「行方不明になったら誰が助けてくれるの?」ということへのピップに答えになっているのだけれど。

まあ色々言ったけれど、それまでの犯人の行動全てがこうなっても仕方なかったという状況を読者に分かるようにしてくれるのはすごい。ホーキンスの関わりも犯人の言葉もピップが死の淵から戻ってきたことも。

まあでももっとうまくどうにかできたのはで???と思わなくはないよね、やっぱり。過剰防衛と言われるかもしれないけど、相手は成人男性でもし逃げている途中で見つかったらまた命の危険があったわけだし。周りに人がいて助けを呼べる状況でもなかったわけだしさ。うーーーん、なんとかならなかったのかな?とはやはり思う。最初に知っていたピップはとても遠くに行ってしまったように感じる。真実だけが全てじゃない、真実が大事なわけじゃないと変わってしまった。成長した?大人になったと言えるかもしれないけれど純粋だったピップが恋しい。

作中でもあったけれど結局エリオットと同じことをしているピップ。つまりこの偽りもいつかピップのような子が来てバレる可能性もあるわけだよね?そうなりそうで、というかそこで暴かれてこそ終わりそうな感じがする。

あとみんなでグルになるのも、詳細は知らないにしろ怖いなと思った。仲間至上主義というか。まあ実際違法なことはピップ以外はしていないはしていないのだけども。

ホーキンスだけじゃなくて、ラヴィだけじゃなくて、もっとみんなに相談したらよかったのでは?それこそポッドキャストでストーカーのこと配信すればみんな耳を傾けたのではー?!とか色々思ってしまうけれど。

ただ、すごく驚かされたし物語の構成としてはとてもおもしろかった。なかなか賛否両論ある展開とラストではあったと思うけれど。いやだってさ、途中でこういう展開になって、「え?でもこれってどう終わるの?捕まっても捕まらなくてもどっちもうまく終わらなくない?ダメじゃない?」って思ってしまったよね。だから心のどこかでは真相が明らかになるのでは?とか思っていたのだけど、最終的にはバレずに終わってちょっと拍子抜けというか「そんなうまくいくか?」というところはあったのだけれど。でも最後のチャットの終わり方は好きだな〜と思いました。

まあでもこれからが大変だよね!ピップとラヴィは犯罪の共犯という切っても切れない縁で繋がってしまって。それが精神的に及ぼす影響はどう考えても計り知れないし、犯人は最低最悪なヤツであっても秘密があるということは人生にすごく暗い影を落とすと思う。

でも途中でピップが「これは復讐だ」と自分で納得している部分があって、やっぱそうだよな〜と思った。だってマックスに罪をなすりつける理由がないじゃんね。まあそれもDTキラーの事件を例にとって、警察は例え本当の犯人ではなくても犯人を欲しているっていうところが表れていて考え方としては分かるのだけど。

これもマックスは最低最悪な人間だけれどこの結末でよかったのか、というのはあるよね。彼の本当の罪と服役する刑期に見合っているのか。でもそれも含めて著者の怒りなんだろうな。そもそも今の現状の刑期が問題だし。有罪にならないのも。あとがきでも書いているけれど性的暴行の通報件数や有罪判決が極めて低いことを挙げている。作中のDTキラーの被害者はみんな女性で、しかもストーカー被害にあっている人もいた。多くの場合、ストーカー被害にあっていても対処してくれない場合が多いことをピップも語っていた。

根底にはなかなか深い著者の怒りがあったのだなあと実感した。そう思うとこういう結末もそういうことだったのか、と。ホーキンスも警察ももうちょっと有能でしょ!と思ってしまっていたけれど、今までそうじゃなかった事例が実際にたくさんあったからこそのかの終わり方なんだろうな。


とにかく!夢中になって読んでしまった作品でした〜!読めて本当によかった!次回作も期待しています!

【モントクレア】ロンドン謎解き結婚相談所 魅惑の入会者

以前にも紹介したことのある「ロンドン謎解き結婚相談所」の3巻目です〜!

1巻目の感想はこちら!

oljikotoushi.hatenablog.com

あらすじ

戦後のロンドン。出自も経歴も性格も正反対のアイリスとグウェンは結婚相談所の共同経営者。ある日、アフリカ出身の好青年が入会希望者が表れる。今までは同じ人種の人々しか想定していなかったが、今後はグローバルにやっていこうと考える二人。ところがグウェンの直感で彼が嘘をついている疑いがかかりーーー!?

 

読んでみて

異なる人種の人が来ることを想定しいなかったということに驚き。今なら人種が違う人であろうと別に悩むこともないと思うけれど、時代は戦後のロンドン。ただ、そこはやはり現代の本。ちゃんとグローバル化を意識していくれる二人で安心する。

 

冒頭に二人とは違う描写が入るのだけれど、後々になって「なるほど〜」と分かってよかった。ただ、すっかり忘れていたけれど。

 

今回中心になるのはグウェンの家庭環境。裕福なグウェンだけれど、夫を戦争で亡くしてしまい心に傷を負ってしまう。そのせいで息子の親権を義父に取られており、グウェンも夫も望んでいない寄宿学校に入れられようとしてしまう。この辺りはねーーー本当にムカついたね!!!おい!!おっさん!!!って。

亭主関白で支配的で自分が一番正しいと思っているんですよね。しかも無駄に地位があるから困る。しかもこの当時ってそんなに女性の地位も高くないじゃないですか。地位もある家長が言ったことなんて絶対だし、周りも助けてくれないし。一番助けてくれるであろう夫もいないし。しかも夫がいなくて悲しんでいただけなのに判断能力がないということで親権取られるし。精神科医ともカウンセリングしているんですけど、いい精神科医なんだろうけど親権を認めないのはひどいよね、と思った。例え不安定だったとしても判断能力がちゃんとあるなら親権は認めるべきでは???あと会社の役員でもあるのに全然入れていなかったりとグウェンの能力を過小評価する男が多すぎて多すぎて。読んでいてイライラしたし結構辛かったよー!

 

そしてまた別の意味で辛いのがアイリス。グウェンの方は現在進行形で起きていることだけれど、アイリスの方は過去の傷つき。でもそれがとても大きすぎて深すぎて癒されない。アイリスのことを考えていると「あの本は読まれているか」も思い出す。トラウマは難しいよね。

 

前作からしばらく経ってから読んだこともあって、最初は「あれ?誰だっけ?」という感じだったのだけど徐々に思い出していって楽しめたよ。サリーとグウェンの関係がよかった!!

 

途中、感情移入しすぎてイライラしたりすることはあったのだけれど、とにかくまとまって終わって本当によかった。読後はスッキリでした〜!でも私ならもっと懲らしめてやりたい!

 

そして最後にはちょっとした短編も入っていてグウェンとアイリスの2人の活躍を楽しめました!

 

グレイス・イヤー

著者の方の名前がキム・リゲットさんという方で、私はてっきり韓国の方だと思っていたので現代のフェミニズム小説なのかと思っていたら全く違って読んでみてびっくり!

私たちがいる現代と全く違う世界観のディストピア小説でした〜!

 

あらすじ

ティアニーが住んでいるガーナー郡では少女たちには魔力があると信じられていた。その魔力とは男性を誘惑したり妻たちを嫉妬に狂わせる魔力のこと。その魔力が開花するのが16歳であるため、16歳の少女たちは住みなれた町からも家族からも離れて少女たちだけでキャンプで1年間を過ごす。この風習について語れることは禁じられているため、キャンプを経験するまで何が待ち受けるのかは分からなかった。ただ、戻ってきた少女たちの様子を見ると何かがあったことは明らかで、少女の人数も何人も減っているーーー。ティアニーはキャンプに行く年齢になりーーー。

 

読んでみて

とにかくおもしろかった。辛い内容なのだけれど、すごく引き込まれてしまった。現代と色々違うし分からないことも多いのだけれど、読み始めると一体どんな世界なのかどんどん気になってしまって読むのが止まらなくなってしまう。

すぐにキャンプに行くのかと思ったらそうではなくて、序盤はティアニーたちが育って世界がどんな世界でどんな暮らしをしていて人々がどう生きているのかが描かれている。ティアニーを通して見るこの世界はかなり歪で間違っているように思える。そして希望も何もなく助けてくれる人もいないように感じる。

「少女たちには魔力がある」と信じられているならもっと恐れるはずでは?と思うのだが、魔力があるのは期間限定であるため恐れられてはいない。女性の扱いは悪く、女性に人権はない。女性は結婚して子どもを産むこと、男児を産むことを求められるが、結婚相手は男性側だけで決まる。しかも16歳になる時に村の男性がみんな集まって話し合うらしい。結婚する側の男性と女性の父親と全体の人数によって決まる。相手が高齢の場合もある。不妊の場合は離婚されるし、何か問題がなかったとしても夫側から難癖をつけられて絞首刑にされることもある。

決まった髪型、決まったリボンの色。裸足で走ったり庭いじりをすることも女性になると禁じられる。

ティアニーの家は姉妹が多いがみんな女の子ばかり。ティアニーの父はティアニーを少年のように色々と生きる術を教えてくれた。だからこそティアニーは妻になんかなりたくなくて、過酷だけれど一人で生きることができる野良仕事をしたいと思っていた。ガーナー郡では合わないような自立心を持ったティアニー。そんな彼女を応援したくなってしまう。


キャンプには本当に女の子たちのみで暮らすということで、それならみんなで反抗すれば良くない?と安易に考えていたのだけれどそう簡単にはいかない。

そもそも少女たちがいるキャンプの外には少女たちを狩る猟師がいる。残酷すぎる世界で彼女たちは生きている。男性に支配されるための制度。そのためなら少女たちが犠牲になっても構わないと思っている。

また、今まで男性社会の中で抑圧されてきて、急に自分達でなんでも決めろと言われら戸惑うのも無理はない。何しろリボンの色でさえ決まっていたのだから。女性が主体性を持つのを禁止する社会でこのキャンプだけは主体的に生きることができる。だけれど今までの育った環境の価値観は変わらない。些細なことで絞首刑にしようとする。憎むべきは他の女の子ではないのにそうなってしまうのがとても悲しい。

それにティアニーは村の価値観から抜け出しているが、それは自分は周りとは違う、周りよりも自分の方が優れていると思っている部分もある。だからこそティアニーが正論を言っても反発する人が出てくる。例え真実を言おうとなかなか味方につかないのは仕方ないのだろうと思う。でも辛いけど!

はみ出し者のティアニーよりも村の中でちゃんと自分の立ち位置を理解して生きている人の方が普通であるわけだし。なので最初は女の子同士の戦いがなかなかに辛かった。

それも原因があるのだけど、その原因も卑劣すぎてね…。

 

 

 

以下ちょっとネタバレがあり↓

 

 


ティアニーと猟師。最初はこれどうなるんだ?と思っていたら案の定。もう絶対やめた方がいいけども!でも惹かれちゃうのは仕方ないのかもしれないけども!

いつ終わりがくるのかヒヤヒヤだったし、助けてくれたとはいえやっぱりそれを生業にしているの無理だよー。生きるためとはいえ。まあでもそもそもティアニーははみ出し者なわけだから、それくらい違っていた方がよかったのかな。

ティアニーを取り巻く男性は何人か出てくるけれど、やはり圧倒的にマイケルが好印象だったかな!ストーカーは論外だし。マイケルもいつ変貌するのか戦線恐々としていたのだけど…。マイケル、お前ってやつは…!


とにかくティアニーが何度も苦境を乗り越えて強くなっていく姿はかっこいい。ティアニーから勇気をもらえる。はみ出し者で自分以外に誰も味方がいないと思っていた少女が味方を作っていく。人との関わり方を学ぶ。人を許す。自暴自棄にならずにこの世界で生きていくことを決めて、守るべきものを守ろうとする。そうしていくことでガーナー郡に戻ってきた時には今まで見えていなかったものが見えていく。この変化がすごい。私たち読者も見えていなかったことが見えていく。誰も抵抗していなかったわけじゃない。男たちに踊らされていたわけじゃない。男性がみんな支配的なわけじゃない。変えようと思っている人たちがいる。少しずつ。

キャンプの終わりに少女達は次の少女達が自分達よりも楽をしないようにと全てを壊す。そのサイクルがあまりにも悲しくて。それが変わっていったのが本当に嬉しかった。

ただ、やはり女性への扱い、少女たちへの扱いは酷すぎて。そんなことを自分の父親だったり知り合いだったりがやっていると思うと…。

 

 


ここからネタバレなしです〜。


最初に全て全貌が明かされるわけではないので、この世界とは?果たしてキャンプとは?どこまでが本当でどこまでが嘘なのか?真実はどこなのか?という謎解き的な要素も含まれていて最後まですぐに読めてしまった。

読んでいて思い出したのは「女の国の門」。こちらと比べるとグレイス・イヤーの方がまだ希望がある感じがする。恋愛という面においても。

今作は人と人との関わりがとても大事だと教えてくれる本だと感じた。


著者のあとがきで今作を描こうと思ったきっかけが一人の少女だったのもとても印象深かった。その少女を品定めするかのように見る男性、そして女性からの嫉妬。少女達の魔力が「男性を誘惑したり妻たちを嫉妬に狂わせる魔力」であり、男性だけではなく妻達にも影響があるしているのが興味深い。どちらも少女が原因のものではないのにね。若い女性に嫉妬するというのも結局は男性の社会構造に組み込まれているからだと思う。私はあんまり少女たちに嫉妬した経験はない。どちらかというと守らなければいけない存在という感じが強いのだよね。職業的にもそうだし。ただ、私ももっとこれくらい自由に過ごせばよかったな、色々経験すればよかったな、もっと青春楽しみたかったなとか思うことはある。でもまあそれは今からでもできるので。今が一番若いのだから!と思うようにしている。実際に少女の時は色々自由が効かなくて早く大人になりたいと思っていたので若いことがいいことではないのを知っているし。でも少女というか若さを羨ましく思うときはいつか来るのだろうと思ったりはする。男性の目線を独り占めしているとかいう理由ではなくて、女性男性問わず若さに対して。


今作は「侍女の物語」×「蠅の王」と「ハンガー・ゲーム」と言われているようで、「蠅の王」知らなかったので読んでみたいな。あと「声の物語」という作品も訳者あとがきに紹介されていておもしろそうだった。


↓本文で心に残った部分を抜粋。↓

それは意味のない、虚しい試みに見えるかもしれない。男たちはまったく気づかないかもしれない。でもわたしたちはこれを彼らのためにやっているんじゃない。わたしたちのため……アウトスカーツの女も、ガーナーの女も、老いも若きも、妻も労働者もひっくるめたみんなのためにやっている。わたしたちが足並みをそろえて帰ってきた姿を見て、彼らはきっとそこに漂う変化に気づくはずだ。

【C・Aラーマー】マーダーミステリーブッククラブ

あらすじ

アガサ・クリスティが大好きなアリシアは、ある時自分好みのブッククラブを作ることを思いつく。古典なクリスティ好き人がいるのか心配しながら待っていたところ、なんと多数の応募者が!そしてクリスティ好きのブッククラブが開催される。厳選されたブッククラブのメンバーはみんな個性的で!順調にいくかに思われたブッククラブだったが、早速あるメンバーが行方不明となりーーー!?

 

読んでみて

アガサ・クリスティ好きのブッククラブなんて!なんて楽しそうなんだろう!この本を読むとブッククラブに入りたくなる〜〜〜!

クリスティ好きに悪い人はいないだろう!ということで、登場人物たちも魅力的!最初は人数が多すぎて曖昧なところもあったけれど、それぞれの人となりが分かってくると人数も多いなんて思わなくなりみんな好きになってしまった。


そんなに?重くもならずサクサク読めるのでオススメです!

作中には「白昼の悪魔」だったり「ハロウィン・パーティー」だったり「青列車の秘密」だったりクリスティ作品もたくさん出てきて嬉しくなる。しかもクリスティ作品と関連付けながら謎解きしていったりするのもよい。


結構強引ながらも頑張って捜査するアリシアが良かった。素人探偵ものは「なぜ推理するのか?」という動機が難しいけれど今作はちょうどよかったかな。ちょっと強引だと思う部分もあるけれど、でも実際に行方不明になっているし身の安全が分からない状態なのに家族はあんまり役には立たないし…となれば頑張るしかないよね。


ただクリスティ好きだとすぐに真実がわかってしまうと思う。その部分はミステリーとしては微妙な部分でもあるけれど、そこを元にしたのね〜!という感じで嬉しい部分でもある。

ぜひ読んで欲しい!!

実は2作目もあって、そちらは船上のオリエント号という何とも嬉しくなる船!


久々にブログ再開しました〜!

ちょっとバタバタしていたのだけれどだいぶ落ち着いたので。また適度に更新していこうと思います!