「自由研究には向かない殺人」から始まった3部作!ついに完結です〜!
あらすじ
大学入学直前のピップには問題があった。それは前回の事件から立ち直ることができていなかったのだ。周りも自分も騙しつつなんとか生活を送っていたピップ。立ち直るためにも最後に事件を解決しようとしていたが、そんな時にピップの周りで不気味なことが起き始めてー!?
読んでみて
ピップシリーズに最終作!
1巻目を読んでから大好きになった作品。最初はポップな感じだったのに、徐々にダークな感じになってきていたのでどう終わるか気になっていた作品。
個人的には1巻目の「自由研究で殺人事件を調べる」というそこまで深刻にならずにピップが関わっていたのが好きだったかな。もちろん1巻目からもシリアスな側面はあったのだけれど、ピップが当事者ではなかったからこそコージーミステリー的な気楽さがあってよかった。なにより読者である私もピップと一緒に自由研究をやっている感じがとても興味深かったのだよね。
2巻以降、ピップ自身が当事者となって事件に巻き込まれるようになってきて、3巻目ではとうとうピップ自身の周りに不気味なことが起き始める。本当に些細なことで、でも不気味なこと。相変わらず仲良しなラヴィには打ち明けられるけれど、それ以外に味方はいない。でもラヴィにも前回の事件の時の傷つきは打ち明けられない。ピップ自身がもう気楽な女の子ではなく問題を抱えている側になってしまっているのが悲しい。でもあれだけのことがあったら仕方ないよね。
今作は途中から衝撃的な展開があるということで、一体どうなるのかと思っていたら予想しなかったことが起こって驚かせられた。本当にこれは上手いなと思う。でももっとどうにかできなかったのか!?とも。ネタバレなしだとこれくらいしか言えないので、ぜひ読んでいない人は1巻から読んでみてください〜!
以下ネタバレあり!!!
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一体何が起こるのかとドキドキしながら読んでいた。今作は670Pくらいあって、衝撃的なことが起こるより前ですでに普通のミステリーの本くらいページ数がある。それまで結構手に汗握っていたので、何が起こるのかドキドキしながらも物語に夢中になっていた。
ホーキンス警部は相変わらず役に立たない。どれだけ落胆したことか。まあ確かに分からなくはないけどもうちょっと寄り添うことはできなかったのか?とも思うし。もうちょっと色々分かってから行ってもよかったのでは?とか。ホーキンス以外はダメなの?とか。
そしてピップが捕まって、最悪の事態を想定しながらなんとか抜け出して欲しいと思っていたらまさかの展開に。でも正当防衛では?!!とラヴィと全く同じことを思ったけれどピップの言い分も分からないでもない。でもそれでも正当防衛になるのでは??と思ったけどね。もっといいやり方があったと思う。
ピップは今の段階ですでに色々抱えていて、その上こんな秘密を抱えるのは明らかに精神的な問題が大きくなるだけだと思う。秘密っていうのはなかなか辛い。秘密は秘密だからこそ力を持つのであって、秘密でなくなれば力を持たなくなる。ピップもいつかこの選択を後悔する日が来るのではないだろうか?
そしてうーーーんと思ったのはラヴィや大切な人も巻き込んだこと。ラヴィはまだわからなくはないけれど、他の友人もみんな共犯にするのはどうなの?大切な人じゃないの?と思ってしまった。もちろんこれは犯人が言っていた「行方不明になったら誰が助けてくれるの?」ということへのピップに答えになっているのだけれど。
まあ色々言ったけれど、それまでの犯人の行動全てがこうなっても仕方なかったという状況を読者に分かるようにしてくれるのはすごい。ホーキンスの関わりも犯人の言葉もピップが死の淵から戻ってきたことも。
まあでももっとうまくどうにかできたのはで???と思わなくはないよね、やっぱり。過剰防衛と言われるかもしれないけど、相手は成人男性でもし逃げている途中で見つかったらまた命の危険があったわけだし。周りに人がいて助けを呼べる状況でもなかったわけだしさ。うーーーん、なんとかならなかったのかな?とはやはり思う。最初に知っていたピップはとても遠くに行ってしまったように感じる。真実だけが全てじゃない、真実が大事なわけじゃないと変わってしまった。成長した?大人になったと言えるかもしれないけれど純粋だったピップが恋しい。
作中でもあったけれど結局エリオットと同じことをしているピップ。つまりこの偽りもいつかピップのような子が来てバレる可能性もあるわけだよね?そうなりそうで、というかそこで暴かれてこそ終わりそうな感じがする。
あとみんなでグルになるのも、詳細は知らないにしろ怖いなと思った。仲間至上主義というか。まあ実際違法なことはピップ以外はしていないはしていないのだけども。
ホーキンスだけじゃなくて、ラヴィだけじゃなくて、もっとみんなに相談したらよかったのでは?それこそポッドキャストでストーカーのこと配信すればみんな耳を傾けたのではー?!とか色々思ってしまうけれど。
ただ、すごく驚かされたし物語の構成としてはとてもおもしろかった。なかなか賛否両論ある展開とラストではあったと思うけれど。いやだってさ、途中でこういう展開になって、「え?でもこれってどう終わるの?捕まっても捕まらなくてもどっちもうまく終わらなくない?ダメじゃない?」って思ってしまったよね。だから心のどこかでは真相が明らかになるのでは?とか思っていたのだけど、最終的にはバレずに終わってちょっと拍子抜けというか「そんなうまくいくか?」というところはあったのだけれど。でも最後のチャットの終わり方は好きだな〜と思いました。
まあでもこれからが大変だよね!ピップとラヴィは犯罪の共犯という切っても切れない縁で繋がってしまって。それが精神的に及ぼす影響はどう考えても計り知れないし、犯人は最低最悪なヤツであっても秘密があるということは人生にすごく暗い影を落とすと思う。
でも途中でピップが「これは復讐だ」と自分で納得している部分があって、やっぱそうだよな〜と思った。だってマックスに罪をなすりつける理由がないじゃんね。まあそれもDTキラーの事件を例にとって、警察は例え本当の犯人ではなくても犯人を欲しているっていうところが表れていて考え方としては分かるのだけど。
これもマックスは最低最悪な人間だけれどこの結末でよかったのか、というのはあるよね。彼の本当の罪と服役する刑期に見合っているのか。でもそれも含めて著者の怒りなんだろうな。そもそも今の現状の刑期が問題だし。有罪にならないのも。あとがきでも書いているけれど性的暴行の通報件数や有罪判決が極めて低いことを挙げている。作中のDTキラーの被害者はみんな女性で、しかもストーカー被害にあっている人もいた。多くの場合、ストーカー被害にあっていても対処してくれない場合が多いことをピップも語っていた。
根底にはなかなか深い著者の怒りがあったのだなあと実感した。そう思うとこういう結末もそういうことだったのか、と。ホーキンスも警察ももうちょっと有能でしょ!と思ってしまっていたけれど、今までそうじゃなかった事例が実際にたくさんあったからこそのかの終わり方なんだろうな。
とにかく!夢中になって読んでしまった作品でした〜!読めて本当によかった!次回作も期待しています!