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【宮部みゆき】よって件のごとし

三島屋変調百物語八之続になります〜!

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あらすじ

おちかから百物語を引き継ぐことになった袋物屋三島屋の次男坊・富次郎。おちかとは違って墨絵を描くことで聞き捨てにしている。百物語にも慣れてきた富次郎だったがー。

 

読んでみて

前作の「魂手形」と今作は続きになっている。なので挿絵も三好愛さんという同じ方が描いている。

読みたくってたまらなかったのですぐに読んでしまったけれど、前作を読み返してから読めばよかったなと後悔。そのうち2作続けて改めて読もうと思う。

 

賽子と虻

神様のお話。

最初に蝉くらいの虻っていう意味が分からなくググって後悔した。でも虻ってそんな見たことないような気がする。虻って認識してないだけ?!!マジで蝉くらいの虻がいたら怖すぎる。蝉でも怖いのに。しかも虻って血を吸うらしくて…。

 

語り手は笑えなくなってしまった餅太郎。

幼い餅太郎にとてつもなく恐ろしいことが待ち構えているのかと戦々恐々としていたら、恐ろしいは恐ろしいけど人間の恐ろしさだった。

姉のためを思って呪いを受け、さらに燕の神様の代わりに痛手を被り、自分の命を捨てて大事な人を助ける餅太郎。なんてすごい子!!

もう餅太郎を幸せにしてあげてーーー!!!って何度思ったか、

 

というかそもそも神様のお社でずっと働き続けるってことが大変すぎる。

十二国記の鈴を思い出していて、彼女も長い年月働いたんだよね。嫌がらせもされてずっと働かされてだから拗ねていた鈴。でもそれが当然だと思うよ…。11歳の子どもが親や家族からも離れて仕事をずっとするなんて…。でもそれも昔は当たり前だったのだろうな…。子どもが子どもとして暮らせないっていう。

弥生様との仕事の差も身分の差っていう感じで嫌だったな…。

 

そもそも玉の輿に乗った姉に嫉妬するっていうのがひどい。宮部みゆきの短編集で同じようなのがあったのを思い出していた。「あやし」の中の「梅の雨降る」という作品。その作品では呪った側だったけれど。でも今回の加害者は全く反省していなかったけれどね。

 

神様たちの世界を垣間見えるのは興味深かった。本当にこんなふうなのだろうか?

人間たちに敬われている神様は強い。人間よりも圧倒的な存在が神様。でも人間に忘れ去られてはいけない。人間は時に神にひどい仕打ちをすることもある。

今まで信仰して敬っていた神様にひどい仕打ちができる人間って自分に自信があるのだなと思う。そうじゃないとできないから。

でも今主流の信仰も起源があるわけで、それ以前の信仰とは違う考えを打ち出しているわけだし。多くの人が信仰してくれればそれだけ神様は強力になるのだろうか…。

「それが神々の定められたことだと考えるとすると、さて、人と神々はどちらが先でどちらが後なのでしょうか。難しすぎて、わたくしにはわかりませんわ」

人がいるから神々がいるのか、神々がおわすから人がいるのかーー


お供してくれる賽子たちがよかった。自分の味方がいるのは嬉しいよね。

 

土鍋女房

こちらも神様のお話。

神様と夫婦になるということで、話としては聞いたことがある内容だと思う。

興味深かったのは「三笠の渡し守」。貧乏だけれど村の人々からは尊ばれる。でも危険な仕事だからこと短命。

難しいところだよね。誇りは持てるけども、お金はないし…。もうちょっと金銭的に何かできないのかと思ったり。

でもお金目当てでやるのはよくないって考えなのだろうな。うーーーむ。

 

話し手のとんびがとてもよかった。

そして最後には話し手から頂き物をもらってしまう富次郎。以前とは少し違う百物語の関わり方になってきているけども?!

 

よって件のごとし

こ、これは!??まさか?!!というお話。

現代ではよく見かけるけどもまさか江戸時代にもいたとは!??

 

江戸時代は江戸時代で大変そう…とは思うけど、現代よりも戦えたりするのでは?!と思ったり。現代人なんてそもそも戦えないからね。武術の覚えがある人なんてほぼいないし。かといって銃なんて使えないし。海外とかならいいのかもしれないけど。

 

さらにパラレルワールド的な世界観も出てきておもしろかった。戻れなくなっちゃったから真偽は確かめようもないけども。

とにかくハラハラドキドキ。病っぽいけど未知の存在。中ノ村の人々がすぐに助けに行こうとするのがかっこよかった。なかなかできないよ〜。

そして村を捨てるか捨てないか、というのも辛いよね…。

やはり違う世界に来ると良くないのだろうか。例え似ていたとしても。悲しいね。

「繋がる縁なら、どんな困難だって乗り越えて繋がる」

そうだよね〜〜〜。二人を見た後だとそうなるよね〜〜〜。

人との出会いって不思議ですよね。もっとこうしておけばよかったな、と思うことがあっても、そこで出会って人がいるとそれなら今のままでいいなって思えてしまう。

私も若い時に失恋したことがあって、だいぶ引きずっていたのだけど本当に運命の相手ならいつかまた出会うかもしれないし、そうじゃないならそういう相手じゃなかったのだなと思うことにしたのだよね。合理化と言っていいのかというレベルの合理化だけど笑。

違う時期に会ってたらきっと仲良くならなかっただろうな、とかそういうこともあるし本当に縁だなって思う。

私もパートナーとは色々な偶然(?)的なことが重なって出会っているのでそれも縁だなと思います笑。


三島屋の人々もちょっとずつ変化がある。

おちかはお嫁に行き、妊娠中。

そして古参のおしまが瓢箪古堂へ行き、なんと最後には伊一郎も帰ってきて環境がどんどん変わっていく。伊一郎も参加したりするのかな?!

どうなるんだ〜〜〜!?そもそも百物語はしばらく休むらしくて、それも悲しい…。

にしてもお嫁に行くっていうのが…身内から外れるっていうのが…。

つ、つらい!!おしまも夜逃げ的な感じで行かないといけないっていうのが…。

め、めんどう!!つらい!!

江戸もの好きなのだけど徹底的な身分制度とか男女差別とかには怒れてきてしまう〜〜。


次回作も楽しみです!!!生きる糧!!!

今までの感想はこちら↓

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