子どもの頃から知っていて気になっているのに読まなかったシリーズの一つ。
多分、表紙が怖かったのだと思う(苦笑)。
読んでみてとってもいい話でした。
なんとなく結末は分かってしまうのだけれど、それでもおもしろい。
最後の最後はとにかく泣ける。
あらすじ
トムは夏休みに兄弟のピーターと庭で遊ぶのを楽しみにしていた。ところがピーターが麻疹にかかってしまい、トムは親戚の家に行くことに。そこは元は古い屋敷だったのをアパートにしたところだった。おじさんおばさんの家で退屈に過ごしていたトムだったが、ある夜、大時計の音に導かれ外に出ると、そこには素敵な庭が広がっていてー?!
読んでみて
親戚のおじさんおばさん夫婦のお家に来たトム。
遊び相手は誰もいないし、遊ぶ庭もないし、早く寝るように言われるして楽しくないトム。
本当なら家の庭でピーターと一緒に思う存分遊ぶはずだったのに…。
入り口にある大きな古時計は間違った鐘を鳴らす。
興味を持ったトムは、夜中に部屋から抜け出すことにする。
夜中に抜け出すなんて大人からしたら迷惑だけど、子どもからしたら大冒険。
何かおもしろいことが起こるに違いない、と感じさせてくれる。
トムも素敵で綺麗な庭を見つけ、そこで自由に過ごす。
おもしろいことにトムの姿は誰にも見えない。
ドアをすり抜けることもできる。
トムは幽霊になってしまったのかー?
周りの人たちがトムのことを幽霊だと思っているのが面白かった。
アベルがトムのことを心底怖がっているのに、トムは自分を怖がっているなんて知らなくって噛み合っていない場面が好き。
幽霊だと思っていたのが本当は幽霊じゃなくて、みんなが怖がっている姿を不思議に思っていることもあるかもしれない。
アベルがトムのことを悪魔のように思っているのは悲しかったけれど、徐々にトムが危害を加えるわけじゃないことを分かっていってくれたのもよかった。
そしてハティ!
子どもの方が柔軟だなあと思う。
周りから見たらイマジナリーフレンドに見るだろうけど。
いつの間にかハティが大人になってしまう。
寂しかった幼少期は過ぎ去り、色々な人と関われるようになって成長していく。
でもトムはずっと同じ年齢。
幽霊と思われても仕方ない苦笑。
最後の最後でトムとハティが再会する場面が泣けた。
著者のあとがきから抜粋。
おばあさんは自分の中に子どもをもっていた。私たちはみんな、じぶんのなかに子どもをもっているのだ。
そうなのだよね。
でもおばあさんにも子ども時代があったっていうことをうまく想像するのは難しい。おばあさんはずっとおばあさんだった気がしてしまう。
みんな子ども時代があって親がいて友達がいて恋をして働いていたのだよね...。
でも大人も自分の子ども時代を自分を忘れないようにするのも難しいよね。
今作みたいにおばあさんになってから子ども時代の友達と再会できたら嬉しいだろうなあ。
ちなみに「トムは真夜中の庭で」は1958年にカーネギー賞を受賞しています。
バーネットの「秘密の花園」ともなんとなく似ている気がする。親戚のお屋敷で同年代の友達と会うっていうのが。でも「トムは真夜中の庭」の方がファンタジー色が強いと思う。