日本のヤバい女の子シリーズの2作目!!
安定しておもしろい。昔話あんまり知らないので、物語を読むだけでも楽しい。
鬼を拝んだおばあさん
お、鬼を拝む!?お、鬼が推しなの!??
と、びっくり仰天してしまう。
鬼が推しになるってどういう状況だったのか?
鬼とか仏様とかよく分かっていない時に、なぜか鬼が大好きになってしまったのか…。
経緯は分からないけれど、鬼を推すのはなかなかに大変だったのではないだろうか。下手したら魔女狩り的なことになったりしていたのではないだろうか。
と、彼女の人生を色々考えてしまう。
でもそれくらい好きなものがあるって羨ましい。
推しがある生活っていいだろうなあと思う。私はあんまりないのだよね〜。知らない人を推せないというか…。でもアガサ・クリスティは知り合いではないけど全肯定したいくらいには好きかも。推し…?
辰子姫(辰子姫伝説)
いつまでも可愛く若くありたかった辰子姫。ところが龍になってしまう。
龍に!?絶対思っていたのと違うよね!?びっくりだよね!
若くありたい、元気でありたい、老いたくない。分かる。
でも年齢はね!年齢はどうしようもないよね!
龍になるか人魚の肉を食べるしかないのでは!?結局人ではないものになっちゃよね。
そうすると既存の枠から飛び出しすぎちゃって、元々の願いが本末転倒になってしまうというね。
老いたくはないけど、知っている人が全員いなくなってその後も永久に生きるのは嫌だし…。ほどよくがいいけど、そんなこと言ったら誰だってほどよくがいいもんね。
鬼女 紅葉(紅葉伝説)
なかなかにパワフルな主人公!
とにかく自分のしたいようにする!躊躇しない。清々しすぎる。
悪女と言われる一方で、紅葉が晩年過ごした地域では本当に優しく素敵な女性だったと言われているらしく、その差がおもしろいと思う。
どちらの立場から見るかで評価が別れる。でもそういうものだよね。力が強い方が考えた筋書きが正しいと思われるんだから。
紅葉はひどいことをしてはいるのだけど、強引に結婚させられそうになったから逃げたのは正当だし、源経基も正妻いるのに紅葉を娶ったのも問題では?って思ってしまうし…。
急に旅人や他の村を襲うのはやりすぎだけど。
八百屋お七(好色五人女)
自分の好きな人に会いたいがために火事を起こしたお七。
そこまでして会いたい相手がいるってすごいな。
これまた鬼を拝んだおばあさんと一緒で、そこまで盲目に好きになれるって羨ましい部分もある。でも、自分じゃどうにもできないのは結構辛かったりするのかもね。
この章でゴッデンの「人形の家」が紹介されていて、前々から読みたいと思っていたので嬉しかった。
磯良(雨月物語 吉備津の釜)
夫は結婚したのに自分に見向きもせず、浮気して出ていっちゃった話。
いや、正太郎嫌なヤツすぎるでしょ。最低じゃん。
著者は「女の嫉妬」が原因ではないのではないか?と言っている。確かに嫉妬ではないかも。なんか男側が浮気したりして女性が怒ると問答無用で嫉妬にさせられるけど別に嫉妬じゃないよね。裏切ったことに対して怒っているわけで。
よく、浮気した人がバレた時に「もうしないから!家に戻るから!」的な感じで許しを乞うことがあるけど、「自分が戻る」ということで許してもらえると思っているのすごい。それくらい自分には価値があると思っているわけで。
基本的にはこっちの尊厳を踏みにじったこと、信用を裏切ったことを怒っているはず。結婚ってちゃんと契約しているわけで、その契約を裏切ったことが問題なのに。
例えば結婚相手じゃなくてビジネスパートナーとして考えたらヤバさが分かる。最近会社に顔出さないないな、仕事にも身が入っていないな、なんだかお金も勝手に使われているような?と思っていたら別の人と別の会社立ち上げてました!ってことが分かり、突き付けたら「こっちの会社にはもう行かない。元の会社でちゃんと頑張るから。いいよね!」って言われても一ミリも信用できないし、怒っているのはそっちの会社に嫉妬したんじゃなくて信頼を裏切ったことだと思う。
宇治の橋姫(平家物語 剣の巻ほか)
この話は短いのにすごく怖い。
いや、21日間川に浸かるの無理じゃない???って思うの私だけ?
でもそれくらい執念があったってことなのか。
ものすごい執念だ。
橋と川について書かれているのが興味深い。心理学でも川は重要で、あちらとこちらを区別するものとなる。川に浸かるというのが大事だったのだろうな。
累(累ヶ淵)
累って漫画あったよねー!?これが元だったのかと初めて知った。
やっぱ昔の話は知っておくべきだね。
話の内容は辛すぎる。義父が可愛くないからって娘を殺し、今度は自分の娘が殺した娘に似てきて、その娘が結婚して夫に殺され、さらにその夫が再婚した相手が次々と死ぬ。
悲しすぎない??救いがなさすぎるな。
こういうのっていつも思うんですけど、なぜ女性ばっかり死ぬの??再婚相手を次々と殺す前に元凶の方を殺すべきでは?再婚相手を殺せるなら力があるはずだよね?って思うけど。
昔話で女性が被害者で加害者の男性が怖い目に合うっていう話は、圧倒的に立場が上だった男性を戒めるため的なことを読んだことがある気がする。大体幽霊になったり恨んだりするのは女性じゃん。でも加害者は男性が多いよね。女性は死んでからじゃないと男性を怖がらせられないというね。
「こんな女に誰がした」という曲が紹介されていて、悲しい気持ちになった。
あと「トリスタンとイゾルデ」についても説明されている。
ろくろ首 およつ(列国怪談聞書帖)
ろくろ首って昔はすごく怖かったけど、確かに首が長いってだけだとそんな怖くないかもね。
でもこれもひどい話で、一緒に駆け落ちしたのに相手が病気で伏せってしまって旅費も底を突きそうだから殺そうって…。どういうこと??どうしたらそんな発想になる???
しかもおよつは2回殺されたらしくて、どこのミステリー???
世の中にはいい人もたくさんいるはずなのに、大事なところで最低な人間に連続で会うなんて最悪すぎるよね…。ここでも娘が被害に遭っていて、娘じゃなくて本人にしろよー!って思ってしまう。
なぜ男性が加害者なのにその妻や娘が被害に遭うのか。解せない。
尾張の国の女(今昔物語)
この物語好きだー!
大体は女性が圧倒的に不利で弱者で、強者になるには人ならざる者になるしかない。
でもこの主人公は!最初っから強いんです!圧倒的に!
かっこいい!
でも通りがかりの人間から野次を飛ばされるって昔からあったんだ…。今で言う、歩いていたらたむろっているグループから冷やかされるってことだよね。
怖いけど普通ならどうしようもない。
でも彼女は違う!彼女には腕力がある!
かっこいい!
にしても自分より強い相手だって分かったら態度変えるのうざいな。どうせ弱い相手にはこれまで通り嫌がらせするんでしょうね!!
著者が言っているように尾張の国の女シリーズおもしろそう。読みたい。
山の女神(オコゼと山の神)
オコゼ…。急にオコゼが貶される!
オコゼの方が私よりも醜いから大丈夫!ってなる??
著者が言うように微妙な空気になりそうだけど…。
もう一つ、「竹生島」の話が書いてる。
女人禁制の島に入った女性を心配すると、海女は
「弁財天は女性。女を分け隔てすることはない」と語り、社の中へ消えていく。
女性だから女性が嫌いっていうのってちょっと安直すぎるよね。女性だから男性を好きなわけでもないし、女性だから女性が嫌いなわけでもないと思う。でも女性の神様は女性が嫌いっていう話は多いから女性同士を分断させたかったのかなと思う。
北山の狗の妻(今昔物語)
難しい!!!
結局どういう話なのかよく分からずに終わってしまう。
なんだか不思議な話だ。
アマテラスオオミカミ(古事記/日本書紀)
有名なお話!
にしても胸と下半身を露出して呼び出したって…。なぜ!??
しかも記憶にあるよりもスサノオノミコトがひどいことをしていてびっくりした。
松浦佐用姫
純粋な恋!
恋人と永遠に会えなくなってしまって石になってしまう女の子の話。
石に!?何故石に!??
むずいな。
確かに恋愛している時はそれが全部みたいに感じるけど、でも人生って案外それ以外も楽しいよ?って伝えたくなる。
みんな一途だよね〜〜〜。石になったり火事をおこしたりさ。
絵姿女房
そんなうまくいく!??と思ってしまう話。
用意周到だったのか。
でもいくらお殿様が桃売りの格好をしたからって、お殿様でなくなるわけではないと思うけど。
何かを象徴しているのかなあ。
お殿様かどうかを誰も中身では判断してないってことだよね。
尻を出した娘(鬼が笑う)
尻を出したことで鬼が笑ってくれて逃げることができたお話。
なかなかぶっ飛んでいるな。
だって尻!?
ちょっと前に読んだ「禁断の果実」っていう本で、昔は女性器は神聖なもので、女性器を見せることは魔除け的な意味合いがあった的なことが書いてあって、もしかしてそれ!??って思ったのだけど。
でも鬼は笑っているわけで、有難いものを見て嬉しがっているのとはまた違うんだよね??
なんでそんな笑うんだろう…?
だって自分の妻の尻なわけじゃん。鬼との結婚生活はよく分からないけれど見慣れている可能性もあるわけで…。場違いなところで見せられて笑ってしまったってこと?
謎すぎる。気になりすぎる。
昔と感性が変わっていない部分もあるけれど、分からなくなった部分もあるからだろうか。
河合隼雄先生が昔話について語っている本があるこでそのうち読みたい。河合隼雄先生はたくさん本を出されているのでね。いつか全部読まなきゃね…。
姫君(とりかへばや)
とりかへばや!!!
氷室冴子先生も書いていたし、さいとうちほ先生の漫画出ていて有名な作品。
もうちょいオブラートな内容になっているとおもしろいけど、元のままだと関係性が乱れ過ぎててどん引いてしまうな。
この時代にもやっぱり男らしさー女らしさが窮屈に感じた人がいたのだろうな。
だって貴族女性に生まれたら外もろくに歩けないんだよ〜〜〜。嫌すぎるよね〜〜。
氷室冴子先生の本と漫画、さいとうちほ先生の漫画を読みたくなった。
コノハナノサクヤヒメ(古事記/日本書紀)
そんなこというのひどすぎない???
俺の子じゃないでしょって絶対に言っちゃいけないでしょ。てか思い当たることがないならまだしもあるんだからさ!
しかも結婚の時に姉と妹が一緒にお嫁に行かなきゃいけないっていうのもなかなかに辛い。しかも帰されるし。
いやでもむしろ帰された方がよかったのかもね!!!
ちょうふく山の山姥
赤ん坊が新生児なのにとても強いのは、千と千尋の坊を思い出してしまう。
でも坊はずっと子どもなだけで長生きしてたんだったっけ?
産後はどんな女性も大変だから誰かにいて欲しかったのかな〜〜〜。
その相手がおばあさんだったっていうのがなんか嬉しい。
おばあさんになってからでも友達ができるっていうのが嬉しいのかも。
炭焼き長者の妻(炭焼長者[再婚型])
娘が夫に離婚を突きつけるところがかっこいい。
清々しい。
でもなんか再婚しなきゃいけないっていうのはちょっとなあ。
娘自身でどうにかできたら一番いいのにね。
でもめっちゃかっこいい主人公だと思う。
山姥と百万山姥(能 山姥)
この話は結構心に響いた。
まだうまく言語化できないけど。能をみてみたいかも。
だって私たち、語り合えるということでしょう。私の中にあなたを、あなたの中に私を見出せるということでしょう。ページを破り取られても、文字が擦れて消えてしまっても、思うように綴り直せるということでしょう。
(中略)
やっぱりどう考えても、確かに私たち、いたよね。
今回も面白かった〜〜〜。元の話にもあたってみたい。
巻末に著者が昔話をどう集めているかが書いてあって、地方自治体のホームページの文化っていうところに大体書いてあるらしい。
なにそれ読みたい。
土地名、姫+伝説で検索するのもいいらしい。
↓河合隼雄先生の本↓