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【イプセン】人形の家

人形の家 (岩波文庫) [ ヘンリク・イプセン ]

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感想(5件)

あらすじ

ノーラはヘルメルと結婚していて、可愛い子どもたちもいる。さらにヘルメルが出世することになり、何もかも順調にいっているはずだったが、過去の影が迫ってきてー?!

 

読んでみて!

ずっと読みたいな〜〜〜と思っていたので、読めて大満足!

読んだのは大分前なのですが、投稿するのを忘れていました笑。

 

思ったよりも直球に書かれていてびっくりした。

普通の小説ではなく舞台用なので、舞台構成と台詞のみしかないのもあってすぐに読めちゃいます。

劇でも観てみたいな〜と思う。


イプセン1828年に生まれているのですが、その当時の女性たちが男性の所有物でしかなかったのがとても悲しい。

女性は自分で何か意思決定することができず、男性の庇護がなければ生きていけない存在だった。

イプセンがこの物語を描いた背景も悲しい。


当たり前に女性は存在しているのに、いなかったようにする社会構造っておかしいと思う。

女性の小説家がいるのに学会の投票権はないとかね。

男性たちには悪気も何もなく、女性は難しい物事を考えて決めることが難しい、と思っているのだろう。

そして女性たちもそういう振る舞いをしたり、それが当たり前だと思ったりしてしまう。


もうすでに社会構造が決まっているなら、そこで逆らわずに受け入れて愛らしく振る舞った方が得だからね。

女性差別に関係なく全ての差別に言えるけど。

こういう時にその社会構造に反発しない当事者を責めることが多いけど、当事者を責めるんじゃなくってその社会構造を作り維持している側を責めないと意味がないと思う。


でも維持している側は大きな変化を望んでいない。

差別を受けている側も大きな変化を望んでいない場合が多い。

というか望んでいたとしても社会構造は変わったとしても周囲の見方は変わらないと難しいんだと思う。


日本も男女機会均等法があるって授業でそう習って、差別なんてないと思っていたけれど現実は全く甘くなかった。

何かのデータで男性の高卒の方が女性の大卒よりも給料が高いというのを知って、例え同じ学歴であっても同じ土俵にはいられないんだなと驚いた。

当たり前のように浸透しているとそれが差別であり問題だって理解するのが難しい場合が多い。

自覚がないからこそ、自覚するのが怖くて否定したりするんだと感じる。

 


ノーラも最初はヒバリちゃんというのがぴったりなちょっと頭のネジが足りなさそうな女性だった。

途中でものすごく悩みながら結局いい手立ても見つからず夫にバレることになるのだけども、その時の夫が本当にひどい!


ピンチな時に人間の本性が出るってその通りだね。こんなこと言われてたら誰だって別れると思う。

でも当時は離婚するのが難しかったらしく…。

悲しいなあ。

でもノーラの潔さがすごい。まあそれまでには何年も一緒に暮らしてきてはいるけども。

「あたし自身に対する義務よ。」

「お前は何よりまず妻で、母親だ。」

「あたしは、何よりもまず、人間よ。あなたと同じくらいにねーー少なくとも、そうなるように努めようとしているわ。そりゃ世間の人たちは、あなたに賛成するでしょう、トルヴァル、それに、本で言っているのも、そういうことよ。でも、あたしは、もう、世間の人の言うことや、本に書いてあることには信用がおけないの。自分自身でよく考えて、物事をはっきりさせるようにしなくちゃ。」

 

「でも、これからはわかるようにするわ。社会とあたしのどちらが正しいか、確かめてみなくちゃね。」

なんというか今の時代にも色々と刺さるものはある。

当時よりは進歩しているけれど今でもこれが刺さるっていうのは逆に悲しくなってしまう。


父がいるときは父が主人で、夫ができたら夫が主人で、息子ができたら息子が主人。

それが女性の一生。

家父長制は男性が特権を握るための構造でしかない。

家父長制はなくなって欲しい。


女性はどの社会にもいて、各々の役割があったはずなのにいないことになっている。

〇〇の娘とか〇〇の母とかね。

きっとノーラは今後世間や周りの人から色々言われるのだろうし、すごく大変だと思う。

でも自分の人生を自分で握ることができる。

それって素敵じゃない?


読んでいて「めぐりあう時間たち」という映画を思い出した。

その中でローラという女性はは夫と子どもを捨てて家を出る。

彼女にはこれといった悩みはないのだけど、今の人生が幸せだと思えなかった。

どうして捨てるのか分からなくて、最初はローラのことをひどいと思ったのだけど、当時の社会(1950年代)では女性は結婚するのが当たり前な時代だった、ということを知って考えが変わった。


好きで結婚するのと結婚するしか道がないから結婚するのとでは全く違う。

今みたいに離婚も簡単にはできないだろうし、そもそも女性が自立するのが難しい社会だったわけで。

幸せの定義って人それぞれだからこそ、こういうことが起こったのだと思う。


レ・ミゼラブルのフォンティーヌの時代は、結婚していないのに子どもを持つことは許されなかった時代だった。

だから田舎に帰ることもできず身体を売ることになり、ついには病気になってしまう。

 

女性の権利が確立されたのはまだ最近で、それでもまだまだ途中なんだと感じる。

女性の年齢とクリスマスケーキを同じにして言っていたのを知ったときはびっくりした。

でも今も年齢が上がっただけで結婚するのが当たり前、みたいな風潮はまだ残っているよね。

 

別姓も認められていないし、女性が不利になる場合が多いのにそれが当たり前っていう風潮はよくないと思う。

本当に。

まあでも私も男だったら何も考えずに結婚しようとしていた気がすると思う。

よく結婚は人生の墓場って男性側が言うけど、でも結婚したいと思っているのは男性側が多いよね?

熟年離婚も女性側が別れたい場合が多いし。

鬼嫁とかも似たようなもので、そんなにひどいなら別れればいいわけで、「ヒバリちゃん」とヘルメルが呼ぶのと似たようなものだと思う。

演じている役割が違うだけで。