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【本】私は黒人奴隷だった フレデリック・ダグラスの物語

 

地下鉄道→ハリエット・タブマン→フレデリック・ダグラスに!

ハリエット・タブマンのところでフレデリック・ダグラスについて当たり前のように書いてあったんだよね。

なんとなく知っていたけれど詳細は全然知らなかったので読んでみることに。


こちらは岩波ジュニア新書なのでとても読みやすくてよかった。


ダグラスの幼少期は悲しい。

母とはほとんど会えず、そのまま亡くなってしまう

子どもはちょっとでも成長したら奴隷として働かされる。

ハリエットは一応家族と過ごせていたのに、ダグラスのは家族と過ごすこともできなかった。

家族を離散させるというのは本当にひどい。


興味深かったのは、ダグラスが自分たちを所有しているロイド大佐の息子アンソニーの娘と関わっていたこと!

特にアンソニーの娘のルクレシアはダグラスに親切にしてくれていて、怪我の手当てをしてくれたり待遇がいい働き口を推薦してくれたりする。

そんなドラマみたいなことがあるのだと驚いた。


また、ダグラスはルクレシアの夫の弟のところへ行くことになったのだけれど、そこの奥さんから文字を教えてもらう

夫に見つかってすぐに辞めさせられたのだけれど、ダグラスは文字を学ぶことがどれだけ重要かを実感して、一人でなんとか学んでいく

「もしも、お前が赤ん坊の奴隷に読み方を教えるなら、奴は今度は書き方を覚えたがる。そして、読み書きができるようになった奴隷がすることは、きまって逃亡だ!」

知識がなければ逃げることもできない。

自分たちがどこから来て、どうして奴隷なのか子どものダグラスは知らなかった

そのことが衝撃的だった。

言葉も文化も全て奪い去られるのが奴隷

本当にひどいね…。

 

自由黒人も多いボルティモアでダグラスは奴隷だけではない世間に触れていく。

奴隷として扱う人間ばかりではなく、人として扱う人間が周りにいてくれて本当によかった

やはり同じ人間を奴隷として働かせることに対してよく思わない人は当時でもいたのだな。


生まれ育ったところとは違い、自由な世界で成長していったダグラス

ところがまた呼び戻されることに。

原因は主人たちの兄弟喧嘩

なんかこんなのばっかり。些細なことで人生が決まる。

いや、ほんとさそんなアホみたいなことで人生変わったら堪らないよね。


自由な空気から一転、また南部の奴隷の世界に戻っていく。

反抗的なダグラスは反抗的な雇い主の元へ送られてしまい、鞭で打たれることに。

ところが驚くべきことにダグラスは反抗する。

なんと殴り倒す!

この命がけの抵抗によって、フレディーは相手にたいしてだけでなく、自分自身に打ち勝ったのでした。


私は、いまや、奴隷根性の臆病者ではない。私は、自由な人間になったのです。たとえ、私の形は奴隷としてどんなに長くとどまろうとも、私が実際に奴隷であった日は、もはや、永久に去ってしまったのです。

 

いやー、すごい。とてつもない勇気だと思う

読んでいるこちらが「そんなことして大丈夫?!」と怖くなってしまうくらい。

 

やはり奴隷として生まれ、奴隷として成長していくと反抗するのは難しくなるけれど、奴隷ではない期間があれば、特に幼少期であれば考え方が変わるのだと感じた。ダグラスの場合は奴隷ではあったけれど、自由国人として生きていく人々を身近で見て、誰かに虐げられることなく成長できたことが大きかったのではないかと思う。ずっと奴隷として虐げられてくると反抗できない状態を作り上げられてしまうから。


ここでダグラスが殺されなかったのは、やはり貸し出されていた奴隷だからなのだろうか

あまり詳しいことが描いて無かったのだけど、普通はやり返されるように思う。

どうなのか?


その後、ダグラスは脱走する

この辺りもあまり描いてなかったのでちょっと拍子抜け。

ハリエット・タブマンの時はすごく丁寧に描いてあったから詳細に知りたかった。

違う本ならもっと詳しく描いてあるのだろうか?

この本はどちらかというと奴隷時代と逃亡した後の運動について焦点が当たっている気がする。


逃亡奴隷の一人だったダグラスは、ある時演説をすることになる。

それが目に止まって、今後も演説をしないかと誘われる。最初は渋るが、演説をしていくことにする。

 

ダグラスはとても演説がうまかったようで、話し方も元・奴隷には見えず、逆に嘘ではないかと怪しまれたこともあったよう。

だが、ダグラスはその喋り方を変えることはなかった

パフォーマンスをするつもりはなかったのだ。


そしてダグラスはあらゆる差別に反対していくこととなる。

ハリエットの本で、ハリエットは女性差別に関してはそこまで運動しなかった〜的なことが描いてあって「?」という感じだったのだけれど、恐らくダグラスの方が積極的に関わっていたからその対比で書かれたのではないかと思う。

女性は男性の奴隷である

という記載があって、これはなかなか辛かった

確かに相続する権利も参政権もないって思うと奴隷と変わらない。

一見、大事にされているけれど、自由はない

結婚しないといけないし、未亡人になったらまた結婚相手を見つけないといけない

でも家庭内で暴力ふるわれるかもしれないのに。


そのため、ダグラスはあらゆる差別をなくすことが必要だと考えた。


ジョン・ブラウンについて、タブマンの方はやや否定的に考えていたように描いてあったけれど、ダグラスの方では親友と描かれていて、その辺りも違っている。

むしろ南北戦争のきっかけになったのはジョン・ブラウンだと演説していたよう。

南北戦争について詳しくないので実際はどうなのか分からないのだけど…。

タブマンの本では、逃亡した黒人をまたわざわざ危険に晒すなんて〜というようなことが描いてあって、確かにそうだなと思った。

でも結局、南北戦争が起こったわけで。

まあジョン・ブラウンが起こした事件と大々的な戦争とは違うのかもしれないけれど。

この本は古いからいい感じに書かれているだけで、最近はまた違うのだろうか…。

気になる!

 

リンカンについても記載があるのだけれど、私のイメージ的にはもっと積極的に奴隷制を廃止していたのかと思っていたら!

全然違った。

この戦いにおける私の最高の目的は、連邦を救うことであって、奴隷制度を救うことでもなければ、それを破壊することでもありません。

ただ、考え方が凝り固まっておらず、状況に応じて柔軟に対応したことは当時を考えるとすごいことだったのだろう。


にしてもダグラスから100年経っても参政権が手に入れられていなかったなんてね。

信じられない。

事実としては知っていたけれど、この流れを見ると奴隷が廃止されたらそのまま参政権があって当たり前なのに!と思ってしまう。

まあ当時は女性にも参政権がなかったのだけど…。

 

そう思うと本当にちょっと前までは公然と差別が行われていたのだな…、と。

少なくとも今は権利自体は認められているのはいいと思う。

 

次はこちらを読みたい。

自由への道―逃亡奴隷ハリエット・タブマンの生涯―

アメリカの奴隷制を生きる フレデリック・ダグラス自伝

ジョン・ブラウンの屍を越えて - 南北戦争とその時代

ダグラスにもタブマンにもジョン・ブラウンが出てくるから気になる!

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