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文学系心理士が好きなことを徒然なるままに書きまくるブログ。小説、NETFLIX、たまに心理学のことも♪

【チョ・ナムジュ】84年生まれキム・ジヨン

 

読んでみて

ずーっと読みたかった作品。

フェミニズム小説といえばまずはこれ!というくらい有名。

韓国でも大ヒットしたし、日本でも大ヒットした。

フェミニズムっていう言葉は嫌悪されていると思っていたから、この作品が日本でもヒットしたことには驚いた

みんな色々と思うところがあったのだな…。


だいぶ前に冒頭だけ読んだことがあったのだけれど、その時の印象は「堅苦しくて分かりにくい」だった。

それもあって、ちゃんと読めるときに読もう、とずっと脇に置いていた。

ちゃんとフェミニズム関連の本を読んでいきたいと思ってやーーっと読むことに


小説っぽくない独特の文体に慣れる必要はあった

ただ、内容としては分かりやすくて読みやすいので、何ページか読めばすぐに気にならなくなった。

あまり韓国の名前に詳しくないため、「これは誰だったけ?」となることはあったが、登場人物は限られているのでそこまで難しくはなかった。

最後の解説に書かれてあったのだが、女性の登場人物はすべてフルネームで出てくるのに対して、男性の登場人物はほとんど名前が出てこない

女性は「〇〇の母」「〇〇の娘」という名前で呼ばれないこと、本人の存在をなくされてしまうことへの強烈なミラーリングとなっている。

韓国の名前に慣れていないのもあって読んでいる間はそこまで気がつかなかった。

最近はないだろうけど、昔は「〇〇の母」「〇〇の娘」としか記録に残っていない人はいたからね。


読んでいて、「これは自分だなあ」と思うところが随所にあった。

違う国なのに

世代も違うのに


ただ、韓国の方が儒教が強いからか、男児を産むことについては日本よりも強いように感じた。

男児じゃなかったら中絶する、というのが辛い。

遠い国のことではなく、日本とそう変わらない国なのに少し前まではそんなことが行われていたなんて…。

もちろん今でも行われている国はある。

明治とか日本でも女の子が売られたりしてたわけだからね。

時代や生まれた国で人生が変わってしまう、そもそも人生が始められない可能性もある。


共感できたり、母や祖母はそうだったのだろうなと思ったり、色々と感じることがあった。

自分も体験したことがあって似ていると思った部分と違いをまとめてみた。

完全に主観です。


似ているところまとめ

・祖父母には男の子の方が可愛がられる

・男の子の方が将来を有望視される

・家族の中でも男性からご飯やお風呂を準備される

・男の子の方が好きなものをたくさん食べられる

・学校でもなんでも最初に男性、次に女性の番号になる

・男性が学級委員になりやすい

・男性より女性に対して服装の規則が厳しい

・性被害にあうと女性が責められる

・痴漢や盗撮などの性被害が身近にある

・就活でのセクハラが起こる

・男性の方が女性よりも採用されやすい

・同期なのに男性と女性で年収が違う

・女性の管理職は少ない

・育休産休を取る可能性のある女性は長期的なプロジェクトに参加できない

・出産・育児をしながら仕事を継続するのは難しい

・出産・育児などで一度離職すると再就職が難しい

・タクシー運転手から馬鹿にされる

・女性を侮蔑するネットスラングがある

・主婦は馬鹿にされる

・夫の実家で料理や家事などを手伝う必要がある

・子どもは夫の姓を名乗るのが一般的


違いまとめ

・夫婦は別姓

・男女ともに勉強を頑張るのが当たり前

・勉強では差別されない

・無痛分娩に切り替えることが可能

・大規模なフェミニズムのデモが起こる

・兵役がある


今思うと学生の頃も男女の扱われ方は違ったのだけれど、当時はそれが普通だと思っていた。

ずっとそれが当たり前だったから。

実際に働くまで明確な差別なんてないと思っていたけれど、実は自分が気づかなかっただけだということがよく分かった。

だから小学生で違和感に気づけていたキム・ジヨンたちはすごいと思う。

 

祖父母は男兄弟を可愛がったし、男兄弟と喧嘩すると怒られた。

両親からも男兄弟ならやっていても何も言われないのに私には止めるように言ったり、男兄弟はやらなくてもいいと言われていることをやるように言われたりした。

その頃からとにかく人と対等になりたかったので、猛然と反発したことを覚えている。

そうすると「女の子でしょ!」と言われたなあ(苦笑)。

その理論はおかしいと思っていたけれど、それは自分の家族がたまたま間違っているのであって社会全体がそうだと思わなかった。

でも違ったのだな…と大人になってから気づく


この本を読むと結婚して子育てすることがどれだけ大変なことなのか分かる。

主人公たちの世代は受験勉強、学校生活、就活で競争して勝ち取ってきた仕事なのに、結婚して子どもを育てるためには辞めないといけない

実際に働いている年数よりもそこに至るまでの期間の方が長いんじゃないかと思う。

つらいなあ

もちろん専業主婦になりたい人もいるだろうけど、専業主夫になりたい人もいるだろうし、もっと柔軟にあらゆる人を寛容に受け入れる社会になるといいよね。


それができないのは、やっぱり長時間労働が背景にあるわけで…。

実際の業務だけではなく接待とか会社の飲み会とかも含めて。


あと韓国が夫婦別姓になったのは羨ましすぎる

ただ、子どもの姓は圧倒的に夫ということで、そこはまた慣習を乗り越えていかないといけないけど。

姓が変わることで「結婚したー結婚してないー離婚した」が分かってしまうのってすごく生きづらいと思う。

だって本来ならとってもプライベートなことだと思うから。

仲がいい人とか身近な人になら言ってもいいけど、そうじゃない人にも分かってしまうよね。

子どもでも両親が離婚した場合、母親側の名前に変える場合もあるし、そうすると周りに分かってしまうのも辛いと思う。

変えないようにもできるけども。


とにかく読んでいて辛い本でした。

あと盗撮が怖かった…。

私もよく知らないトレイに入る時は注意するけど、もし職場でそんなことがあったら…!

それは辛すぎると思う。

どんどん技術が発展しているのに法律が追いついていないように思う。