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【瀬尾まいこ】そして、バトンは渡された

そして、バトンは渡された [ 瀬尾 まいこ ]

価格:1,760円
(2021/5/3 11:21時点)
感想(26件)

あらすじ

森宮優子は父と暮らす高校2年生。普通の高校生だが、一緒に住んでいる父・森宮さんは実の親ではなくって。今まで3人の父と2人の母がいてー?!

読んでみて

色んなところに載っている作品だったので読んでみました!が、わたしにはあんまり合わなかったかな〜。

テンポも良いし読みやすいしひどい悪者もいなくてサクサク読めます。ちょっと生い立ちが変わっている優子の高校生活を一緒に体験してる気分になってくる。


じゃあ何が合わなかったというと、やっぱ心理・福祉目線で見ちゃうからかな〜と思いました。優子が不幸じゃないってことは分かるんですよ。みんな優しくてどの親も愛してくれたってことが。問題は優子じゃなくて周りの親にあって...。


まず最初の父親の水戸さんと梨花さんが優子にどうしたいか聞いたこと。文面にもあったけどこれは本当にひどい。子どもに責任を丸投げしているのでやっちゃダメだと思う。子どもに離婚していいか聞いて決めるのも一緒。


梨花さんは優子と離れたくないって理由で決めるのではなく、子どもにとって何が一番いいのかで決めるべきだった。それにその後に実の親と接点を断つなんて一番やってはいけないこと。子どもは気を遣ってしまうのが当たり前なのだから、信頼できて相談できる相手との関係を残しておかなくちゃいけない。実の父である水戸さんもそれに乗っかっちゃったわけなので問題だと思う。


水戸さんが優子と全く会わなかったこともひどい。例え名字が変わろうが梨花さんについて行こうが保護者であることには変わりがないのにそれ以降関わろうとしないのはよくない。例え戸籍上は違っても保護者であることには変わりないので育児放棄だと思う。実際は梨花さんがいるので優子に直接の被害はないけど、親が親であることを放棄していると思う。


そして梨花さん!次々に親が変わっていく話なので何かしら理由をつけないといけないのは分かるのだけど!結果として育児放棄になっていると思う。しかも最初の離婚の時は優子に決めさせたのに次の時は勝手に決めてしまうことにもびっくり。優子が大事なのは分かるのだけど、いきなりいなくなるのは問題だと思うし見捨てられたと捉えられる可能性が高いのでやめた方がいい。決めるのは梨花さんだとしてもそれを子どもに説明しなくてもいい理由にはならない。


構想としてはおもしろかったし、ステップアップファミリーの話が増えるのは大事だと思う。

ただイエ的な価値観が強いなあ〜と思った。名前が変わったからその家の子で父親ができる、前の家の子ではなくなったから距離を取らないといけない、という考え方はあんまり新しい考えじゃないし、優子にとってもあんまり良くない考え方だよね?

新しい家族も前の家族もみんなで子育てすればいいのに、と思いました。どんどん増えていった方が良くない??バトンも大事だけど。優子の場合は増えると減ってしまうので、誰か大事な人ができるということは大事な人がいなくなるということを指しているので辛い。

あと最後の結婚で締めるところもイエ的な考えが強いな〜と感じた。


ということを色々と考えてしまう話だったのであんまり楽しめなかったんですよね。子どもは保護される対象なのでその子どもが大変な目にあっていると周りの大人たちがしっかりしろよ!と思ってしまう。だから温かい目でみれない。でもどのレビュー見ても高評価なので一般的には引っかからないんだと思います。職業病か??


こういう子が実際にいたらかなり注意すると思うのだよね。保護者という信頼できる大人がコロコロ変わっているので、何かあっても発信できない可能性が高いから。友人関係とか最近だとSNS関連の問題とかも含めて。バトンを渡した後も細くてもいいから繋がり続けて欲しいと思いました。

 

「夜明けのすべて」や「君が夏を走らせる」など気になっている作品はあるので読んでいこうと思う。