文学系心理士の自己投資ブログ

文学系心理士の感想部屋

文学系心理士が好きなことを徒然なるままに書きまくるブログ。小説、NETFLIX、たまに心理学のことも♪

【中山七里】死にゆく者の祈り

死にゆく者の祈り [ 中山 七里 ]

価格:1,760円
(2021/4/12 21:58時点)
感想(1件)

あらすじ

教誨師である顕真は、刑務所で大学の同期と出会う。同じサークルだった関根は、なんと死刑囚になっていた。どうしても信じられない顕真は、関根の個人教誨を引き受けて真実を探そうとするがー?!

読んでみて

教誨師」という言葉は知らなかったので、「へぇ〜!」と思いながら読んでいました。知らない職業っていっぱいあるなあと思う。まあ心理士も一般的にみたら謎な職業だと思いますが笑。

興味深かったのは判決文の中に心理検査の結果が載っていたこと!小説で見たのは初めてでした!内容としては無難な感じだったのだけど、こういうのを書くのに色々な資料を参考にしたり監修してもらったりしたのかと思うと感慨深い。知らない人からしたら心理検査なんてよく分からないでしょうしね。


設定やストーリーが面白い。教誨師が主人公になっているのも斬新だし、坊主と刑事のコンビも新鮮だし。

関根ではないんだろうなと思いつつも、なかなか先が読めないし、そもそも関根が犯行を認めているし、どうなるんだ?!と思っていたけれど、いい感じにまとまっていてよかった。

一度はやっぱり関根か?!と思わせておいてね。登場人物が少ないので、なんとなく殺人犯は予想しやすくはあるんですが、関根の勘違いを解くことも重要になってくる。

最後あたりはアクションもあり、色々盛りだくさんでした。まあ最後はちょっと現実離れしすぎではありますが…笑。

和尚さんの言葉が深かった!

「同じ人間、同じ親鷲聖人の弟子です。あなたに心掛けてほしいのは、逃げるのを覚えることです(中略)情熱を傾ければ傾けるほど、関根さんとの別れは痛切になるはずです。教識師として全うするのも結構ですが、いざとなったら逃げることも選択肢の一つなのだと肝に銘じてください。人の生き死にに己の生涯を賭けろと命じるほど、真宗は頑なな教えではありません。ひどく手前勝手な言い方になってしまいますが、導願寺住職として一人の死刑囚の行く末よりも優秀な僧侶を失うことの方が痛いですからね」


あと顕真が話していたこの辺りは心理にもつながると思う。

不安もあるが、全てを吐き出したことで胸がすっと軽くなった。どんな悩みでも解放してやれば一部分なりとも抜けていく。後は自力で解決するか、時間の経過とともに忘却するのを待つか二つに一つだ。だが吐き出した相手が良然なら、時間の経過を待つまでもないという期待がある。快刀乱麻を断つごとく、顕真の迷いを両断してくれそうな気がする。