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文学系心理士が好きなことを徒然なるままに書きまくるブログ。小説、NETFLIX、たまに心理学のことも♪

【山本史緒】自転しながら公転する

あらすじ

都は32歳。母の病気の介護のために地元に帰ってきていた。そしてアウトレットモールで契約社員として働いていたが、そこで回転寿司の店員・貫一と出会うがー!?

 

読んでみて

ずっと気になっていたのですがやっと読めた!

最初はあまり状況が掴めなかったけれど、少し読み進めればグッとのめり込んでどんどん読み進めることができた。

読みやすいし物語もとてもよかった!


主人公の都は32歳の女性。

あだ名は「みゃー」。

恋愛に結婚に仕事に家族に悩みは尽きない。何も決まっていないからこそ悩む。

何も決まってないのはそれくらい自由ではあるけど先行きが不安になるよね。私は学生の頃より大人になった方がすごく楽しい。学生の頃に感じていた自分が何者になるのか分からないっていうのがすごく不安だったのだよね。

だから卒業して仕事してってところまではいいと思うのだけど、それ以降も次のライフステージに行く段階になるたびに決断をしないといけない。

自分は何になるのか、何になれるのか、どういう人生を送るのか…。

この選択をしたら自分はどうなるのか、将来後悔しないか、何が正解なのか…。


ちょうど都と同じくらいの世代なので、女友達の話を聞いているようで楽しかった。

「結婚」がテーマなので、ちょっと前に読んだ「傲慢と善良」を思い出していた。あれもボランティアするし。

でも「傲慢と善良」の方がちょっとサスペンス味があって非現実的な感じがした。今作の方が些細なことがたくさん積み重なっていく感じで現実味があったかな。

前にkindle unlimitedで読んだ山本史緒先生作の「あなたには帰る家がある」っていう作品があったのだけど、この作品は1990年代に書かれていたのもあって今の私の価値観とはあんまり会わなかったのだよね〜。

でも今作はすごく今の感覚が随所に散りばめられていて本当に共感できた。その時代の感性を感じて書けるってすごい。


都くらいの年齢になると、まず結婚する人生を選択するかどうかっていう問題が出ててくる。私の周りの子は大体みんな結婚する選択をしようとしている。まだ結婚していない子も含めて。

私は子どもの頃からあんまり結婚したくなかったので多分パートナーがいなかったらしようと思わなかったように思う。それともむしろ頑張って探したのだろうか?


都は貫一について周りに相談するけれど、二人の友人は別々のことを言う。

中卒男なんて!

内面を見ないと!

まあ難しいよな〜と思う。個人的には口を出されると反発したくなる天邪鬼な性格なので楽かもしれないけど笑。

学歴なんて関係ないよね、と言えるくらい好きなら問題ないと思う。でも当人たちが所属している環境にも依るかなあ。

私の親は別に高学歴でも何でもないのだけど、私は一応院卒なので世間的には高学歴に入ると思う。世間的には「院まで行ってすごいね〜!」って反応をされたりする。でも行かないと心理士にならないから行っただけなので別にすごくも何ともないし、心理士の友人や知り合いは当たり前だけどみんな院卒なので院卒であること自体に何か感じたりはしない。

例えば医者同士は医者であること自体が特別プラスにはなったりしない。当たり前というか。そういう感じで人って自分と似た人と自然と仲良くなることが多い。それが世間一般的には普通じゃなくても周りがみんなそうだとそれが普通に感じたりすることがあるよね〜って最近よく思う。自分は普通だと思っていてもそれって大分上の方だと思うよ?って。

別に中卒がプラスにはならないまでも大きくマイナスにならないこともあると思う。似たようなコミュニティの場合もあるだろうし、反対に相手に学歴や収入を求めない人にとってもいいかもしれない。私も地元は高卒が大半で行っても専門学校、大学行ってる人はほとんどいない、中卒の子も当たり前のようにいる感じだったので、どこの時の友人と話すかで当たり前が全然違ってくるなと思う。

学歴とか関係なく貫一の知識の奥深さは素敵だと思う。学歴だけで頭のよさは判断できないよね。本当の頭の良さがある人と結婚したいなら貫一で良くない?と思ってしまうし。


ただ学歴が問題なのか学歴の結果収入が少ないのが問題なのかを見極めないと難しい。都は最初どっちもそうだったし。傲慢と善良でもそうだったけど、最初はみんな目標魔界よね〜仕方ないけど。お金持ちで学歴もあって賢くて優しくていい会社に勤めてて自分を愛してくれて大事にしてくれる。でもそれは難しいよね。

都は徐々に自分も人のこと言えないじゃんっていうことも分かってきた。親や友人からしたらそんな苦労する人!って思うので色々言っちゃうけど、自分がそこまで望めるのかという。

ただ自分が不安だと相手に求めてしまうのは分からなくもないな〜と思う。依存はしたくないけど。後見人的な?親的な?


そして結婚の後には出産・子どもがあるよね。

結婚と出産って基本的にくっついていて、出産して子どもが欲しいから結婚するっていう子がほとんどなイメージ。自分の理想の家庭を作りたいって感じ。

私はそもそもそういうのがなくて自立したいっていう思いが強くて。自分の子どもにどうしても会いたい!っていう渇望みたいなのも今のところない。子どもが欲しいってなっても血が繋がってなきゃいけないわけじゃないように感じるし。まあ今の日本の里親制度はいつ子どもを里親にできるか分からないのでなかなか選択肢には入りにくいと思うけど。

男性と女性でも考え方が違うように思う。子どもが欲しいって確信している子は行動が早い。産むのにタイムリミットもあるし、さらに仕事のことも考えなきゃだし。女性は考えることが多くて本当に大変。あーあ。

「おんなの時間」で吉川トリコさんが不妊治療の大変さを語っていたのを思い出した。

そんなに大変でお金がかかるなんて!そして吉川さんも最初は子どもが欲しいと思ってなかったけれどタイムリミットが近づいて不妊治療をって感じなので、もしかして未来の自分?と人ごとと思えずに読んでいた。


主人公の母視点がよかったな〜!

都視点ではいい娘って感じがあったけどもそれが崩れていってよかった。

更年期の大変さに戦々恐々としたけども。

両親が一軒家を手放して経済的な不安から解放される選択をしたのもよかった。母も最初は一軒家が理想、成功、幸せだと思っていたけどそうじゃなかったかもって気づいて。自分の理想の一軒家に住むことで活力も湧いて頑張れる人もいるだろうけどそうじゃない人もいるし、状況は変わるものだから。

一度決めた決断を考え直して今の状況にあったより良い選択に夫婦二人で決めてできたっていうのがいいなあと思う。


都は色々悩んでグダグダしてしまう部分もあるけど、最終的には自分の意見をちゃんと言えてかっこいい女性だと思う。

あそこまで当たってダメなら諦めつくよね。かっこいいなあ。

そしてその後にふとした時に考えてしまうあの感じもすごく共感できた。

 

ややネタバレあり!!


この本には仕掛けがあるのだけど、私はすっかりそれに騙されてしまった!

だってこうなるんでしょ?って思っていたので…。いやーおもしろかった!

最後の部分を読むと果たしてその選択で良かったのか?と全く思わないわけでもない。それでも最後の最後はその選択はきっとそれなりによかったのだなと感じることができた。

人生何もかも思い通りにはいかないもんね。

「別にそんな幸せになろうとしなくてもいいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ」

そうだよな、と思う。

私は後悔したくない、失敗したくないって思うことが多かったけど、もっと鷹揚に構えてもいいのかもと感じた。同じ出来事でも視点を変えるといい意味にも悪い意味にも受け取ることができるんだし。

最近ある出来事があったのだけど、それを人に伝えるとすごくいいこととして受け取ってくれる子とマイナスなこととして受け取ってくれる子と様々で興味深かった。

同じ出来事でも人によって価値観も違うし将来の自分がずっと今と同じ価値観な訳じゃないし。今失敗だと思っていることが実際その時になったら、これも経験だなって思えることもあると思うから。

都がすごく幸せになってないからこそ、何だか安心できたように思う。

結婚して二人は幸せに暮らしました、で終わらないのが人生だもんね。何が失敗かなんて考え方次第だし失敗するから何も挑戦しないのは人生が勿体無いと思うから。