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【レティシア・コロンバニ】三つ編み

初の小説にもかかわらずベストセラーになった有名作品。思った以上に読みやすくって人気の理由が分かったよ。

三つ編み [ レティシア・コロンバニ ]

価格:1,760円
(2021/3/3 22:18時点)
感想(4件)

あらすじ

インドのスミタは不可触民。娘には自分と同じ人生を歩んで欲しくなくて学校に通わせることにするがー?!一方、イタリアのジュリアは家族経営の毛髪加工会社が倒産の危機になりー?!カナダのサラはバリバリ働くシングルマザー。全てを仕事に費やしてきたが、病気の発覚でその座が危うくなりー?!

読んでみて

3人の女性の話が交互に紡がれる。まるで三つ編みのように。最初はどういうふうにまとまっていくのか分からなかったけれど、少しずつ道筋が見えてくる。「三つ編み」という題名で書き方もそうだし、三つ編みが3人を繋ぐのに感動する。

 

この中で衝撃的だったのはやはりスミタ。不可触民についてはなとなく知っていたけれど、スミタが人の便を手ですくうのが仕事だったり、夫も鼠捕りが仕事でそのネズミを食べたり…。そして公正な立場であるはずの教師も差別をするということ。そのため、今世に期待するのではなく来世に期待するというのも衝撃的だった。でもいくら来世により良い人生が待っていたとしても今がここまで辛いのはおかしいと思う。それに彼らが割りを食っている反面、誰かが得をしているわけで…。それは人間が人間のために作った枠組みなのだから、人間が壊せるはずだし壊す必要があると思う。他の人種を差別するのはどの国でもあるけど、見た目では分からないことでさえ差別するなんてね。

 

日本でも部落差別がある。私は教科書でしか知らなかっただけど、今でも差別は存在している。どれだけ似ていても、どこかに違いを見つけて差別するのってなんなのだろうね。差別すると安心するからだろうけど。不可触民にも階層のようなものがあるらしくってなんとも言えない気持ちになった。奴隷がより下の奴隷を持つこともあったみたいだし、人は優位に立って安心したい生き物なんだろう。

 

インドって結構発展している印象があったけれど、農村部はまだ水洗トイレじゃないのも驚き…。水洗トイレって本当に大事だと思う。衛生的だし、安全だし、清潔になるし…。

ちなみにジェンダーキャップ指数でインド108位、日本は110位という結果も衝撃的だった。発展度合いで言えば日本の方が上だ。国内どこに行っても同じような水準の暮らしができるし自由に行き来できるし…。この指数は男女間の差らしいので、それを知って一応納得。日本の場合はインドよりも人権はあっても男性と女性の差は大きいということ。特に政治の面で顕著。インドは19位だが、日本は125位という。女性の首相や大統領なんてほとんどいないと思っていたけれど、調べると「あの国も?!」という国もみかける。エチオピアやネパール、そしてインドも!日本なんて20年経っても女性の首相が生まれるか微妙なところなのにね。日本は女性が生まれながらに殺されることもなく小中学校は女性でもみんな行けるけれど、そういうのが難しいインドの方が女性の大統領が生まれるっていうね。

 

日本の感覚に近いのはイタリアとカナダの方だと思う。でもどちらかというとイタリア寄りだろうか…。今はわりと新しい考えが出てきていて、特にネット上では活発だけれど、いまだに家父長制は色濃いので、そういうところはイタリアと似ているし、都会でバリバリ働いてっていうのだとカナダの方が似ていると思う。

ただ政治もそうだけれど社長とかも日本って女性がすごく少ないので、そういう意味ではカナダよりも大変そうではある。カナダのサラはもう少しでトップの差に昇り詰めそうだったけれど、日本だったら女性がトップに選ばれるって滅多になさそう。副にはつきそうだけども。「女性はきめ細かい」とか「女性特有の考え方」とか「女性は繊細な作業が得意」とかそういうことをいまだにいう人がいて、しかもそれが褒め言葉だと思っている場合が多い。これを人種に変えたら良くないって思えても何故か性別だと思わなかったりする。運動系の部活とかで女性がマネージャーをやることが多いのもそれと地続きだなと思う。一昔前は女性はサポート役で、それが女性にとって適任だと思われていたけれどそんなことはないのにね。

 

本書はフェミニズム小説だけれど、そういうと倦厭する人が多いように思う。日本の場合ってまだ性差別があるかないか、性差別に該当するかしないかっていうのを争っている段階だから、差別に対して声を上げても否定されることが多い。もう少し次の段階に行けば差別はあるのが前提になるんだろうな。

でも今は有名な人たちもなぜかフェミニズムか毛嫌いしたり馬鹿にしたりする。一昔前にLGBTQのことを公的な場でも非難していたのと同じように感じる。私も社会に出るまでは男女差別なんてないと思っていたし、それまでに経験していたことも「そういうもの」として受け入れるか「その場限りのこと」だと思っていた。男女とも一見平等に見えるから余計に分かりにくいのだと思う。でも結婚ひとつとっても夫の苗字にすること、「お嫁に行く」という考え、夫の仕事に合わせること、女性が家事や育児をすること…なんかが当たり前のこととして残っている。当たり前すぎてそういうものだと思ってしまうので差に気づかない。

 

サラは病気を最初は否定していたのだけど最後には生きていこうという気持ちを持つ。その過程がすごくリアルだった。そしてジュリア!ジュリアが自分で切り開いていくのがとてもかっこよかった!この先も自分で未来を切り開いて行けるのだろう。

インドの話はわりと暗い内容が多くて、かなり悲しくなってしまった。辛い。それもあって感想を書くのが遅くなってしまった。家父長制や差別がこの世からなくなって、全ての人が尊重されて欲しいと切に願う。

 

最近読んだNETFLIX作品「世界の今をダイジェスト」シーズン1の「男女間の賃金格差」も勉強になったよ!

「クリスチャン・アマンプール 世界の恋愛&セックス」ではインドの恋愛事情が分かりやすいまとまっているのでおすすめ!

History 101」のシーズン1にも「フェミニズム」があるよ!


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