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【トリイ・ヘイデン】最悪なことリスト

【トリイ・ヘイデン】最悪なことリスト

こちらもトリイの小説!「機械じかけの猫」と違うところは子どもが正真正銘の主人公ということ。トリイの作品はいつも子どもが主人公だけど、この作品は子どもが実際に何を考えてどう思って行動しているか子どもの本音が子ども目線で描かれていてすごくおもしろい。大人になるとどうしても子どもの気持ちを忘れちゃうけど、これを読むと思い出させてくれる。

あらすじ

デイヴィットには親がおらず、里親に預けられて暮らしていた。新しい里親のもとにやってきたデイヴィッドだが、うまく喋れず自分の感情もコントロールできないため友達もできず問題を起こしていた。ある時、飛級をするほど賢い少女・マブと一緒にふくろうの卵を孵化させることになるがーーー?!

 

読んでみて

こうやってデイヴィッド目線デイヴィッドのことを知らなかったらたぶん可愛げのない子だなーって思ったと思う。実際に多くの大人が彼のことをそう思っている。頑なで身勝手で生意気な子だって。でも子どもたちが勝手にそうなるわけじゃなくて、周りにいた大人から裏切られたり期待されなかったりどうでもよく扱われたりそういうことを繰り返されたから自分を守るためにやっているだけ。本当は愛されたいし大事にされたいし抱きしめて欲しい。でもそれを求めても叶わなくって、そもそもどう求めていいのかすら分からない

デイヴィッドは心の中でいろいろ考えている。でもそれを周りの大人に言ったり助けを求めたりはしない。その分、どうしてもうまくいかないことがあるとかんしゃくを起こしてしまってそれが問題になってしまう。全く発散できないよりは発散できた方が良いし、そうやってデイヴィッドは心のバランスを取ってきたのだけど、大人側の都合だけでみると「手がかかる子ということになってしまう。

でも新しい里親になった「おばあちゃん」はとても子どものことが分かっていてデイヴィッドみたいに傷ついて硬い殻に閉じこもっている子どもについてもすごくよく分かっている。子どもが大人に媚び売るのがおかしいことだとも分かっている。

デイヴィッドと立場は違うけれどマブも周りと馴染めずにいる。飛級っていう制度は本人の能力を最大限に引き出すために必要だとは思うけれど、でも子どもの頃に体格とか遊びとかが同じレベルの子と一緒に入れないっていうのは悲しくも感じる。やっぱり一人だけ違う年齢の子がいたら浮いちゃうよね。もう少し歳を取ればそんなに気にならなくなるのかもしれないけど。二人が抱えている問題は全く違うけれど、周囲から浮いている二人が少しずつ心を通わせていく。デイヴィッドの方がマブよりも年上だけれど、マブの方が精神的に発達しているなあと感じる。


マブがデイヴィッドに言う言葉が心に残った。

「〝おれのもの" ってどういう意味でいってるの? だいじなことはお互い世話をし合うってことでしょ。その人がどうなるのか気にかける、ってことでしょ。一生懸命気にかけて、その人たちに悪いことを起こさせないってことでしょ。たとえそのために自分が欲しいものをあきらめることになっても。あたしがいってるのはそのことなんだ」


そしておばあちゃんの言葉も深い

おばあちゃんはデイヴィッドを見た。「こういうことの後には、もう悪いことは二度と起こらない、っていってあげられればどれほどいいかと思うよ。でもね、ほんとうのところ、あたしたちは運命を引き受けるしかないんだよ。それについては選べないんだ。あたしたちに選べるのは、いいにしろ悪いにしろ、何かが起こったときに自分が何をするかということだけなんだよ」

↓同じくトリイの小説「機械じかけの猫」はこちら↓ 

oljikotoushi.hatenablog.com