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ジブリで映画化されている「思い出のマーニー」の原作。

宮崎駿監督ではない作品の中では、この思い出のマーニーが結構好きで。

と、同時に怖さもあるのだけれど。

原作があるのを知って読みたいと思っていたので今回読んでみました。

あらすじ

アンナ養母のすすめで自然豊かな村に療養に行くように勧められる。無表情になることで自分を守っていたアンナだったが、村で不思議な少女・マーニーと出会いー?!

 

読んでみて

やっぱり好きな作品だった。

思っていたよりも原作に忠実に映画が作られていることが分かったのだけれど、やはり原作の方が丁寧なので、映画で曖昧だった部分が色々と腑に落ちた。


舞台はイギリス

主人公の名前もアンナであり、映画でも同じ名前を使っている。

ところがこの名前にも実は意味があって、それが最後に明かされる


どうなるのか分かりながら読んでいたけれど、それでも感動した。

アンナが母にも祖母にも見捨てられたと思っている場面は心が痛んだ。

それから、怒りをこめて、つづけました。「あたしを、ひとりぼっちにして行ったから、おばあちゃんなんかきらい。あたしの世話をしてくれるために生きててくれなかったから、きらい。あたしを、おいてきぼりにするなんて、ひどい。ぜった い、ぜった いゆるせない。おばあちゃんなんか、きらい。」

そうだよね〜〜。そう感じるよね。

しかも「おばちゃん」という母や祖母の代わりだった人が、実は自分を育てるために国からお金を支給されていたと言うことを知ってしまい、さらに人を信じられなくなってしまう。

話してくれると思っていたのに話してくれなかった絶望感

「……だけど、あたし、あたしは、ミセス·プレストン自身に話してもらいたかったの、とっても。あんなにいっぱい、チャンスを作ってあげたのに。」

私はもう大人なので、もっとちゃんと聞いてたら答えてくれたよ〜と思っちゃうんですが、それじゃあ意味ないんだよね。

難しい。


アンナは無条件な愛情が欲しくて、でもそれが得られないし、信じることができなくなっている。

マーニーには実の両親がいて、ばあややお手伝いの女中もいるのに、誰もマーニーのことを本当に愛してはくれない

二人とも孤独で本当の愛を求めている。


マーニーとアンナの仲にエドワードが入ってくる。

マーニーは、まるで、うんと小さい子に話すように、ちょっと前かがみになっていいました。声まで、なんだか、小さい子をなだめる時のようでした。「いとしいアンナ。あたし、できることなら、あなたといっしょにいたいの。わかってくれるでしょ? そのほうが、ずうっといいの。でも、エドワードはいとこだし、とてもいい人なの。あたし、行かなくちゃ。大急ぎで。」マーニーは、アンナのほっぺたに、ほんの一瞬、自分のほっぺたをくっつけました。


この作品でおもしろいところは男性、父親がことごとく不在ということ。

マーニーの夫も早くに亡くなっている。

マーニーの娘でアンナの母も亡くなるが、実の父親とは離婚をしただけなので生きているはず。

唯一の肉親なのに出てこない。

 

また、ミセス・プレストンだけがアンナを養子に取ったのではなく、プレストン氏も関わっているはずなのに存在感は薄い。

アンナ自身もあまり話さないと言っているし、唯一部屋をリメイクしている、という話題でしか活躍しない。

 

一方で、しめっ地屋敷に引っ越してきたリンジー母も父も子どもたちに関わりアンナにも関わる。そしてアンナはリンジー氏が好きになる。

 

全体的にはやはり男性が邪魔者のように描かれている気がする。

マーニーをアンナから奪ったのはエドワードで(事実とは違うが…)、マーニーからすると自分の娘を他の男が奪い、最終的には事故で亡くなってしまう。

残ったのはやはり女の子のマーニー。自分の娘の代わりになれる女の子。


両親の愛情を感じずに大人になったマーニーは、結局自分がなりたかった母親にはなれず、温かい家庭を作ることができない

そんな娘の忘れ形見であり、唯一大事な存在となったアンナを置いていくのはどれだけ辛かったか。

でもアンナも見捨てられたように感じて辛かったのね。

 

風車の場面はとても怖い。映画ではサイロになっている。

あの場面があれほど怖いのはマーニーがアンナを見捨ててしまう場面だからか

マーニーに風車に置いてけぼりにされたアンナはマーニーに裏切られたと感じる。でも、心からの謝罪でアンナはマーニーを許す。

「ごめんなさい! あんなふうに、あなたをおいてきぼりにするつもりはなかったの。あのことで、あたし、ずっと、ここにすわって泣いてたの。ねえ、アンナ、おねがい! ゆるしてくれるって!」

マーニーの言葉は、ほとんど、風にとばされてしまいました。窓の外を川になって流れ落ちる雨で、マーニーの顔も、もうほとんど見えなくなっていました。でも、アンナにはきこえました。わかりました。まるで、その言葉は、アンナ自身の中からきこえてくるようでした。風と雨にもかかわらず、マーニーの言葉は、とてもはっきりときこえました。

アンナがマーニーに対していだきつづけていた激しく苦いうらみは、あっとうまに、すべて、とけ去ってしまいました。マーニーはアンナの友でした。マーニーは、やっぱりアンナをだいじに思っていました。

うれしさにあふれて、アンナは叫びかえしました。「もちろんよ! もちろん、ゆるしてあげる! あなたがすきよ、マーニー。けっして、あなたを忘れないわ。永遠に、忘れないわ!」


これはアンナの「喪の作業」だったのだとしみじみ感じる。

ミセス・プレストンがお金のために自分を育てているのではないかという疑惑が出てきたことで、祖母も母も同じように自分を捨てたのではないかと感じてしまう

幼い頃に大事な人を亡くしたことで、時が経っても本当の意味で乗り越えてはいなかったアンナ。

でも、マーニーと再び出会い、マーニーと関わり、もう一度再体験することで別れ受容することができるようになったのだと感じた。

 

色々な見方や考察ができそうでおもしろいね!

本の内容や作者の経歴も含めて心理学的に考えたりすることがあるので、マーニーについて書いた本や論文があったら読んでみたい。

 

にしてもしめっ地屋敷みたいな水が近くにあるお家に住みたいな。

水が好きなんですよね。水に入りたくなっちゃう衝動があって。特に池みたいなところに笑。

カリギュラ効果?と思ったこともあったのだけど、それとも違う感じ。

まあとにかく水に面してる家に住みたいなって話。