文学系心理士の自己投資ブログ

文学系心理士の感想部屋

文学系心理士が好きなことを徒然なるままに書きまくるブログ。小説、NETFLIX、たまに心理学のことも♪

【年森瑛】N/A

一昨年?!に読みたかった本をやっと読めました〜!

 

あらすじ

高校生の松井まどかはうみちゃんと付き合っている。クラスの女子たちからは様付けて名前を呼ばれている。母親からは拒食症であることを心配されている。そんなまどかの思いや日常の物語。

 

読んでみて

ページ数的には少なく1時間くらいで読めてしまった。文体は読みやすいのだが、要所要所考えさせられる部分があった。

読む前は高校生の気持ちって今更分かるかな?と思っていた部分もあったが、まどかの気持ちは思っていたよりも共感できる部分があった。

と言っても、今も共感できるというよりは同じくらいの年にそう思ったな、という感じだけれども。生理に関する忌避感の根底の感情は理解することができた。ただまどかのように体重までコントロールして生理を来なくする発想は当時の私にはなかったけれど。

 

まどかは特定の決まった枠組みに入ることを良しとしない子で、女性だから生理がくる、女性だから女の子らしくする、女性だから男性と付き合う、そう言ったことに対して違和感を感じている。母親から拒食症だと思われて拒食症の人に対する対応を調べていることに対しても、自分は拒食症ではないのにと感じている。安易にレッテルを貼られたくはないのだけれど、王子様キャラという立ち位置は周りの女子生徒とたちとは違うという面で安心しているように感じた。

自分は簡単にカテゴライズされるような人間ではないし、何か普通の人とは違うという感覚は、まどかと同じくらいの年頃にはよく感じるようにも思う。がまくんとかえるくんのような「かけがえのない他人」に憧れながらも、他人とは距離を置いて冷めた視点で少し上から接している部分がある。「かけがえのない他人」というやや幻想的な関係性を求めている部分は、一歩引いて普段は大人びた考えをしようとするまどかの幼い部分のように感じる。幼いというか、期待している部分というか。現実の人間関係に対しては冷めた目線で見ながらも、どこかに「かけがえのない他人」という素晴らしい関係性があるのではないかと感じているまどか。純粋すぎるが故に、普通の人間関係から「かけがえのない他人」が育まれることは考えない。確かに私もぐりとぐらみたいな唯一無二の存在がいたらいいなと思ったなあ。双子の小説を読んで双子に憧れたりね。

 

自分のことを理解して一番に考えてくれる親友。絵本は確かに同性の友達が多いなと感じた。一方で、もう少し成長すると少女漫画とかはほぼ異性との関係性が中心になる。私はちょうど漫画の「君に届け」の世代だったのだけれど、当時新鮮だったのは恋愛も描かれるけど友人関係も同時並行的にテーマとして描かれること。そして何より驚いたのは普通は主人公の当て馬になるだけのライバル的な女の子がちゃんと自分の考えを持って主人公と関わり合って、そして最終的には友達になること。そのことに対してすごく感動したのを覚えている。友情よりも恋愛になってしまうことが多い中で、ちゃんと友情にも焦点を充てた漫画だった。

作中でもまどかが、がまくんとかえるくんもぐりとぐらも男性だから、女性同士の「かけがえのない他人」は難しいのではないかと考える場面がある。そんなことないよ、と言ってあげたい。あなたが仲良くなりたいと思って真摯に向き合えば、同じくらい、それ以上に返してくれる人がいるよって。自分を無理に特別に見せなくても特別に思ってくれる人はいるよって。


この感想を書いている時に「かけがえのない他人」について自分なりに色々考えた。自分にとっては誰が当てはまるだろう?親友が一番当てはまるのかなと思ったけれど、「かけがえのない他人」って難しいなと感じた。恋愛関係の結果、家族になることが多い。そう思うともう家族は他人ではないし。でもパートナーは原家族とは違って関係を切ることもできるし…。でもそもそも原家族だって関係を切ることだってある。

この枠組みはなかなか難しい。そもそもまどかにとっては恋愛関係は「かけがえのない他人」ではない。恋愛関係から家族になることもできるけれど、何かのきっかけで別れることにもなるわけで、多分まどかはもっと純粋に特別な存在が欲しかったのだろうと思う。さっきも書いたけどちょっと幻想的だよね。人の心は移り変わるし関係性も変わるし。唯一無二の存在だからと言って、その人とずっと一緒にいるわけじゃないし。絶対常に一番なわけじゃないし、例えそうでも関係性も変わるし。

絵本に出てくる関係性って心理学的な母ー子関係性と似ているな〜と感じた。絶対的で唯一無二で何も言わなくても分かってくれるし絶対見捨てないし。でもそんな母と子の関係もいつかは変わるよね。関わる人がどんどん増えていって、いつかは母よりも大事な人ができたりする。永遠に変わらない関係性なんてないけど永遠に憧れる年齢だよねと思ったり。別れは悲しいけど成長と捉えることもできるし、関係を持続させるためにはお互いにすごく努力をする必要がある。私も年齢を重ねて絶対的なものが正しいわけじゃないし、変わることも必要だということが分かったのかな。そしてお互いの思いが完全に同じ熱量でなくても、自分が大事だと思う相手がのことを思えるのならそれでいいんじゃないのかな、と思ったり。

 

ラストは今までまどかが見ていた視点が少し広がって終わったようで大人としては安心した。まどかはまだ高校生だもんね。むしろ私が高校生の時よりもちゃんと人と関わろうとしているなあと感じる。

あと現実的な話をすると低体重の問題が解決するといいかな。低体重って健康的にも色んな問題があるので。折り合いがつけれるといいなあ。

ただ、「拒食症だから〜だろう」みたいな決めつけは私も注意しないといけないし、その人本人をしっかり見ていく必要があると感じた。

 

終わりに

読んでいる間はぼんやりしていてあまり腑に落ちない部分も多かったのだけど、こうやって感想を書くと色々考えて自分になりにまとまったように感じる。

「かけがえのない他人」を中心に書いたけれど、表題でもある「not applicable(該当なし)」という枠組みに当て嵌めようとすることに対して、うみちゃんの投稿について、最後の友人との関わりに対しても色々考えることができるなあと思う。

なんというか著者の答えはこの本にははっきり書いていないので、読み手が受け取って色々と考えることができる作品だと思う。主人公の時と同じ年代の時に感じた気持ちと現代のことをうまく混ぜて書いていて、どこかに共感できる部分があり共感できない部分もあるというその配分がすごいなと感じた。