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【高瀬隼子】おいしいごはんが食べられますように

 

あらすじ

二谷は職場の同僚である芦川と付き合っていたが、彼女の食へのこだわりを理解することができない。そんな時、同僚の押尾から芦川に意地悪することを持ちかけられーーー。

 

読んでみて

2022年に注目された作品。第167回芥川賞受賞作品でもある。

読後が悪い作品、嫌な女…などなど当時の感想はこんな感じだったことを覚えている。なのでもっと直接喧嘩したりとか何か起こったりとかするのかと思っていたらそういうことはあんまりなく拍子抜けしてしまった。

 

想としては芦川さんこんなうまくいく?ということと、二谷は食に対しても他のことに対しても結構ウジウジしていて面倒くさいなと感じた。

でも二谷が食に感じる面倒くささは部分的に理解はできる。私も普段はあんまり食に対してこだわりなくて、一時期はサプリみたいなもので栄養が取れれば楽なのに、と二谷と同じことを思っていた。ただ、自分の場合はそういうことを感じる時は大体疲れている時。人って精神的にも肉体的にも疲れると食に対してこだわりがなくなったり、掃除もできなくなったり何もかも億劫になったりする。二谷も結構忙しいし、そういうところもあるのでは?と思う部分もある。カップラーメンは好きだしね。まあそもそも食自体が好きではないという人はいるとは思うけど。

私は親があんまり食にこだわりがなくて、毎日ラーメンとかあまりよくない食生活で育ったこともあり、こだわりがなく無頓着になってしまう部分と、一方でおいしいご飯を食べた時にすごくおいしいと感じるギャップがあった。なのでおいしいご飯を食べるのは好き。でも毎日のご飯に栄養とか今まではあまり考えてこなかった。

というか大学生くらいまで休日とか1日1食だったりしたこともあるし、お腹が空けば食べればいいだろうと考えていた。家族全員過集中気味なこともあり、気がついたら10時間くらい何も食べずに作業して、なんか疲れたなとやっと気づいてからご飯食べたり。何か集中している時って食がメインではなくて作業になっちゃうんだよね〜。

でも大学生の頃にやっと毎食食べた方が体調がいいことに気づき(遅い笑)、それからはちゃんと毎食食べている。そして最近はパートナーに言われて栄養面にも気をつけている!なので「食」って結構育った家庭も大きそうだなあと思ったりする。

 

川さんはか弱い人で守ってあげたくなる存在として描かれているけれど、私としては結構自己主張できる人だな、という印象。

いい意味で言うと自分の能力や上限を理解して、周囲にもちゃんと伝えることができて周りを頼ることができる人だと思う。あまり良くない面を言うと自分の限界までは頑張らない人。

日本に多い責任感の強くて限界まで頑張って休めなくて抑うつ的になってしまうタイプとはある意味真逆だと思う。責任感や自責感が強い人はギリギリまで1人で頑張ってしまって周りを頼れない。もちろん頼れない環境という面が大きい場合もあるけれど。でも芦川さんはそういうところでもきっと主張できるんだと思う。

特に体調不良で帰った次の日に手作りお菓子を持ってこれるのは色んな意味で強い。強かだなあという印象。普通に考えたら周りから「そんな暇ある?」「体調悪いなら休みなよ」って思われる可能性大なのに。

 

方押尾さんは一見芦川さんよりも主張しそうなタイプと思いきや自分でなんとか頑張るタイプ。ちゃんとプライドがあるんだなあと思う。疑われた時とかに「私じゃないのに疑われて悲しい。」って泣けたら形勢逆転できたかもね笑。まあでも普通そんなことできないよね。泣くとか悔しいし。弱い部分を出したくないし。

職場のみんな芦川さんにすごく優しいよね。お菓子食べたくないなら「私は甘いの苦手なので。」って自分なら言うだろうなと思っていた。陰で陰湿なことするよりも。でもそういうことじゃないんだよね。「食」とそれぞれの人間関係とそれぞれの考えが絡まっていてややこしいことになってるんだよね。一番微妙だったのは二谷は芦川さんと結婚するの?っていうところだった。なんか自分の気持ちに蓋をして天邪鬼なことばかりやっている印象。周りに対してだけではなく自分自身に対しても本音を言えないんだなあと。一方で芦川さんは周りにも気を遣えるような大人しい女性に見えるけれど実は自己主張強い人。体調悪ければはっきり言うし、二谷の感情に全く気づいてないことはないと思うのに自分はブレないし。自分の家の犬も1人で世話できないと思われているのに、好きな料理には色々挑戦しているし。それでいいのか?と思わなくもないけれど、一昔前の夫を立てつつ夫をコントロールする妻的なタイプだなと感じる。本人がそれでいいならいいんだけど。二谷は自分の言うことを聞いてくれそうな大人しいタイプとばかり付き合っているらしいけど芦川さんは本当は逆だよね。でもお互いぶつかり合いたくないみたいだからちょうどいいのか?

 

尾さんは現代の女の子っていう感じがして一番共感できる登場人物だった。猫を助けた描写は共感は持てる。もちろん押尾さん視点の話ではあるのだけど。ただ、ムカつくからと言ってわざわざ意地悪しましょうと提案するのは微妙。それにお菓子の件以外は過度に優しくしないようにしているだけなので、わざわざ言わなくてもいいのにね。でも三角関係的になっているから仕方ないのか。

二谷は普通に嫌。ウジウジぐちぐちしているし彼女に対して行う嫌がらせとしては陰湿だし。直接不満も言わないし。そんな関係性なのにそのまま関係を築くことに意味あるのか?と思ってしまう。

芦川さんは基本的には人生生きやすそうではあるけれど、自立した感がなくて弟にも下に見られているってそれでいいのか?と思ってしまう。まあ良さそうだから別にいいんだろうけど。ただ、セクハラっぽいことをされてたりしてたり?して、そういうポジションは大変は大変だなと感じた。感情的に怒ったりはできないキャラだもんね。受け流すか泣くかしかない。

 

作は芦川さん視点がないので実際のところがよく分からなくなっているように感じる。ただ、芦川さん視点がないことで色々考察が生まれていて、こんなに話題になった部分もあるのだろうな。