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【アディーチェ】なにかが首のまわりに

やっとチママンダさんの作品を読めて嬉しい〜!短編集すごくよかった!アメリカーナも読みたい!

なにかが首のまわりに (河出文庫 河出文庫) [ チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ ]

価格:1,265円
(2021/5/23 15:26時点)
感想(0件)

あらすじ

ラゴスからアメリカに移民した若い主人公は、白人の男の子と親しくなるがー?!

読んでみて

12篇入っているけれどすぐに読める!続きも気になるし引き込まれてしまう。ただ、私こういう短めの短編もあんまり読んだことなかったので、ちょっと疲れてしまったのはある。最初はどういう話でどういう状況か分からないことが多いので、話にのめり込むまでがちょっと大変。と言っても1〜2ページ読めば夢中になるんだけども。私のキャパの問題だと思う。3〜4か5〜6篇くらいの感じの方が好みかもしれない。

でも内容としてはすごくよかった!

 

セル・ワン

まずお金持ちのボンボンなのに泥棒になるっていうのにびっくり!ちょっと悪いのはかっこいいってこと??隣人の子どもがテレビを盗むとかそんなことしたら大問題じゃない??

 

そして大学なのに安全じゃなさすぎてそれにも驚く。大学生同士の争いなのになぜこんな過激に…。

そして男なら何やっても両親から大体許されるっていうのにも驚いた。アディーチェ自身も6人兄弟の5人目らしくて兄弟間の差が色々あったのだろうか…。

お調子者の兄の心境の変化も興味深い。息子の代わりに父親が捕まっていて、犯人が捕まらなかった場合、その親族が代わりに捕まるなんてそんなことしていいの?!と思ってしまう。そんなんで捕まったら嫌すぎるんだが…。

 

イミテーション

この話は好きだな〜。最初は従順な妻っていう感じだったのだけど、色々考えて、最後には夫と対峙するのね。

稼いでくれて大事にしてくれる夫に対して不満を持つなんてよくないっていう考えが基本にある。さらに妻帯者と付き合うのは当たり前、付き合って援助してもらうのが当たり前な中で。夫が自分を見つけて見出して結婚してくれたからといって、対等になれないなんておかしいから。このあとこの2人はどうなるのだろう?と気になる作品。

 

ひそかな経験

これは最初どういうこと??と状況が読めなかったのだけど、だんだん分かるにつれて怖くなってくる。普通に市場にいただけでそんな怖い状況に陥るなんて…。

 

そして所々にあとからこう感じて〜っていう部分があるので、チカは助かるけど姉のンネディが見つからないこととか、その後のことが垣間見えて悲しくなる。

あそこで隠れている間は決して安全ではないのだけれど、でもまだ自分の身近に人たちも自分と同じように大丈夫だと祈ることができたのに…。民族や宗教の問題がちょっとしたことでも表面化するのだね…。

 

ゴースト

これはちょっと難しかった。

大学の教授で定年した後、年金がもらえない。なぜなら誰かが横領しているから!

そして死んだと思っていた人物と出会い、過去の戦争の話が出てくる。戦争がとても身近であったことが分かる。

 

アメリカに住む娘との会話が心に残る。

「父さんはその生活がいいの?」最近は電話でンキルが、あのどこか厄介なアメリカ風のアクセントできくようになった。いいとかわるいとか、そういうことじゃない、それがわたしの生活なんだ、と返事をする。それこそが大切な問題なんだ。


妻が戻って来る話もあたたかい気持ちになれた。例え便利でも全く違う文化に行くよりも、慣れ親しんだ文化で暮らす方が安心するよね。アメリカに行かずに晩年を過ごせれたらいいと思った。

 

先週の月曜日に

急に恋愛ものっぽい感じが出てきた作品。トレイシーと関わりたくて堪らないカマラが可愛い。まあでも久しぶりにあった恋人に対して微妙な感情を抱いてしまうのは分かりみすぎる!そういう状況に陥ったことはないけれど、やっぱ長い間会ってないとちょっとずつお互いが変わるからねー。


にしてもアメリカに先に彼氏が言っていて、呼び寄せるまでに6年くらいもかかるなんて驚いた。そんなに大変なものなのか…。


あとトレイシーは女性をメロメロにさせすぎでは??

 

ジャンピング・モンキー・ヒル

最後がスカッとして爽快感があった。

こういうちょっとしたセクハラってあるあるだよな…と思う。しかもやっている本人はセクハラしているっていう自覚がないというね…。

あと銀行員の仕事が本当にあり得なさすぎて最悪だった。これが普通なのか…?膝に乗るっていう時点で普通に気持ち悪いしあり得ないし…。

 

「みんな気付いてたの?」

「でも、私たち、なぜなにもいわないの?」ウジュンワはきいた。大きな声でいって、ほかの人たちを見た。「なぜいつも私たち、なにもいわないの?」

胸がギュッとされる。みんながみて見ぬふりをするから永遠に終わらないんだよな…。

作家の実体験に最も近い作品らしく、アディーチェが大変な状況を乗り越えてきたかが分かる。

 

なにかが首のまわりに

表題作にもなっている作品。ちょうど真ん中あたりにある。

「きみは〜」という語り口調で物語が始まる。「きみ」が主語の作品をあんまり読んだことなかったのでちょっと分かりにくいところもあったけれど、「きみ」が主語になっていることで、彼女の大変さとか思いとかがより際立っている感じがした。

居候先の叔父に性的な関係を迫られるという、最初から辛いことが多い中、白人の男の子との出会いは日常を彩っていくのだけれど、でもやっぱりどうしてもうまくいかない部分がある。最後の部分は悲しくなる。

 

アメリカ大使館

これは本当に悲しかった。本当に…。

声を上げることは本当に勇気があって素晴らしいことだけれど、その結果、本人や家族に危害が加えられたら…。

家族のために声を上げない人もいるだろう。難しい。でも何も声を上げなかったらそれこそ何も変わらないし、上げ続ける人たちに皺寄せくるだろうし…。

1984年を思い出したりした。

 

震え

これ一番好きかもしれない!

最初は急に知らない人を家に入れて大丈夫か??とちょっと心配だったのだけど。

元彼の話をこうやって聞いてくれる相手がいたら嬉しいだろうな〜と思いながら読んでいた笑。でも話を聞いてくれていたウカマカにも苦悩があって…。

多分大学生じゃないんだろうな〜と思っていたらやっぱりで。

でも最後に2人が仲直りをして戯れあっているところは読んでいてとても嬉しくなった。きっと、どうにかなるはず!と思わせてくれる。

 

結婚の世話人

これは色々と悲しくなってしまう物語だった。

世話になった叔父と叔母のために、2人が決めた結婚先に行く。世話になったからといって結婚先まで決められないといけないなんて!自分の人生なのに。

アメリカの医者」は確かにパワーワードで、一生お金に困らずに暮らせそうな感じはする。が、とにかく英語を話すように言ったり、名前も英語名に変えてしまうのはちょっと悲しかった。

でもそっちの方が仕事だったり隣人との付き合いだったり、そういうがうまく行くんだろうな…。料理の件も、まあ確かに日本でも普段嗅ぎなれていない匂いの方がよく分かるし。でもなあ…。

でも最後は少し希望があってよかった。主体的に人生を決めれるといいよね。

 

明日は遠すぎて

これも悲しい話だった。

従兄弟との秘密。それは兄の死にまつわることで。

日本でも内孫とか外孫とかいう言い方があるらしいからそういうのと一緒だよね〜と思う。特に祖父母になると自分たちよりも古い考え方なわけだし。私も同じような思いをしたことはある。

でも悲しいのは、ちょっとした悪戯が大事故になってしまったこと。

 

がんこな歴史家

この作品はちょっと時代が古い。ンワムバの目線から最後にはその孫娘に続く。

ンワムバの思惑とは違い、息子が西欧化してしまうのは悲しかった。でも中々両方の文化に身を置くのって難しいよね。特に子どもだし。学校では今までの文化を否定されるわけだし、そこにずっといればそりゃそうなるよね…。いつか気付いてくれるのか?と思っていたらそうはならず、孫娘に託されることになる。

自分の夫のスピリットが戻ってくるっていう考え方は素敵だと思う。最近、NETFLIXの「死後の世界を探究する」で前世について観たからっていうのもあってタイムリーだった。

名前を変えてしまうっていうのはなんだか悲しかった。名前ってそれこそその文化を象徴するものだと思うのに…。だからこそ、最後にグレイスからアファメフナにしたところはとてもよかった。