文学系心理士の自己投資ブログ

文学系心理士が好きなことを徒然なるままに書きまくるブログ。小説、NETFLIX、たまに真理のことも?!

【宮部みゆき】人質カノン

人質カノン

街行く人にも秘密がある。悩みがある。袖すり合うも他生の縁で出逢った人たちが一時織りなす物語

 

人質カノン (文春文庫)

人質カノン (文春文庫)

 

 

あらすじ

コンビニで遭遇した強盗赤ちゃんのガラガラを落として去っていった。どうしてそんなものを落としていったのか、ガラガラは何のためのものだったのか。街の片隅の事件を描いたミステリー7編

 

読んでみて

完全なる短編集サクサク読めるよ7編もあるので趣向の違った宮部みゆきの世界を楽しめる。

心に残ったのは

八月の雪

かなぁ。

交通事故というか、元を辿ればいじめっ子たちが間接的に悪いのだけど、右足を失ってしまった少年が主人公。彼は正しいと思うことをして、その結果右足をなくしてしまう。そんな悲しいことある?理不尽すぎない?と思わずにはいられない。理不尽なことは世の中に腐るほどあるけども...中学生の少年が突きつけられる現実にしてはあまりにも酷い。彼が未来に希望を持てず腐りつつあるのは仕方がないことだと思う。そんな彼を周りの家族もうまく扱えない。このまま世を恨んでいじめっ子を恨んで生きていくのか...そうなっても全くおかしくなかったのだけど、亡くなった祖父の若き日の遺書を見つけたことで少しずつ変わっていく。彼にとって祖父はいてもいなくても変わらないような、あまり関わりのない存在だった。もっと幼い頃は思い出もあったような気がするけれど。祖父にも若い頃があって、生きていて、ましてや若き日に死ぬ覚悟をしていたなんてそんなこと思いもしなかった。祖父の過去を探るうちに少しずつ周りを見えるようになっていく。将来が希望で輝くわけではないけれど、世を恨んだまま過ごすことはなくなって、少しだけ生きていても良いと思える。そういうちょっとした希望、希望というほどではないもの、それが彼の将来の希望の原石みたいに見えて、嬉しくなった。

立ち直るのは簡単なことではない。すごく難しい。周りがなんとかしようとしても結局は自分で納得して進まないと難しい。理不尽なことはこの世にたくさんあるけれど、それでももう少し生きても良いかも、もう少し期待しても良いかも、そう思えたらそれだけで完璧だと思う。

何か辛いことに直面してる人に読んでみて欲しい

続いてもちょっと似てる作品。でもこっちの方がポジティブ

生者の特権

題名からして良いよね。生きているからこそできることしかこの世にはないから。

二股かけられて捨てられて自殺しようとしていた女性いじめられっ子の少年と出会って、夜の学校を一緒に冒険する話。冒険って言ってもいいのか分からないけど笑。私もいい大人になので、学校ってこんな感じだった!ドキドキしながら読んでたよ。

女性は自殺しようと良い自殺場所を探してたのに、夜の学校に1人で行くように言われている少年と出会ってその少年を助けようと一緒に夜の学校に行くことになる。死に場所を探したはずなのに、死ぬ覚悟があったはずなのに、夜の学校は怖く感じるんだよ!しかも学校に伝わるお化けみたなものもいるらしくて、不気味だよね。夜の学校ってなんだか大人を子どもにしちゃう不思議な力があるらしい。女性はそういう体験をしたことで、生きているっていう実感が芽生えて死ぬことがどうでもよくなっちゃうんだよね。おもしろいと思う。

少年の方も大人の女性でしかも一緒に冒険を共にした人がこれからも味方についてくれるっていうことになって、それだけですごく心強いし勇気が湧いてくるよね。

お互いがお互いの必要な時に出会った2人なんだなあと思う。ずっと続いていく縁ではないかもしれないけれど、確実にそれぞれの人生には影響していると思う。そういう関係ってたまにあるよね。人生って不思議だなぁ〜。しみじみ。

最後に題名にもなっている

人質カノン

コンビニ強盗のポケットから落ちたのは赤ちゃんのガラガラだった。緊迫した状況と不釣り合いなガラガラ。そしてそのまま強盗は行ってしまうが...。強盗と結びつかないガラガラは一体なんなのか。どういう繋がりなのか、そもそもうっかり落としたのか、それともわざと落としたのか。

なんとなーく予想はできるけれど、真実を知ると悲しい

 

↓ネタバレあり

強盗はわざとガラガラを落としたのだけど、それはガラガラを持っていた青年に罪を着せるためだった。ガラガラを持っていたから強盗に目をつけられてしまった青年。そして強盗に殺されてしまった青年。青年がガラガラを持っていたのは落し物を渡そうとしていたから。良い行いをしようとしていた、にも関わらずそのことで強盗に目をつけられるという悲しい結果になってしまう。8月の雪もそうだったけど、良い行いをしようとした結果、良くない状況に陥ってしまうことってすごく珍しくはないと思う人生何が起こるのか、どう転ぶのかは分からないのだから。良い行いにしろ悪い行いにしろ、自分にとってはささいなことが、自分や周りの人生を大きく変えてしまうことはあると思う。後でどれだけその選択肢を悔やんでもどうしようもできない。そんな状況に陥ると、自分で考えて自分で選択することが怖くなってしまうような気がする

ふと考える、この選択は正しいのかって


終わりに

宮部みゆき現代版短編はそれぞれ思うところがあっておもしろかった。好きなのは時代劇だけども、現代版も読んでるとおもしろい。7編中3編しか感想書けてないのでまたそのうち書きたいな〜。ひとまず興味深かった3編を今回はつらつら綴ったよ