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【荻原規子】風神秘抄(ふうじんひしょう)

荻原規子】風神秘抄(ふうじんひしょう)

荻原規子さんの作品「風神秘抄」と続編の「あまねく神竜住まう国」を読み終えたー!完走!

風神秘抄は長い!大大長編!場面も二転三転して違う本を読んでるみたいにも思えるし、主人公と長い間一緒に旅してる気分になるよ。

あらすじ

時は平安時代源氏側に所属する草十郎は初めての戦に出陣し、源家の義平に憧れ共に行くことを決意する。ところが義平の幼い弟である源頼朝を助けるために草十郎は1人外れることになりーーー。その後川原で舞を舞う不思議な少女・糸世(いとせ)と出会う。彼女のに惹かれて草十郎がを奏でると、空間が変わり運命を変えることもできるようになるが、その強力な力を理解したのは糸世だけだった。不思議な運命に導かれながら特異な芸能を持つ2人が出会い歴史さえ変えてしまうが、それには代償が伴い…?

 

読んでみて
物語の始まりは源氏に属する草十郎という少年が始めて戦に向かう場面から始まる。そこで源 義平、源 頼朝と出会い戦いに行く。が、結局は負けてしまい、草十郎は色々とあって源氏の一派とは外れてしまう。そして舞を舞う糸世という少女と出会うーーー。

一体どんなストーリーがよく分からないと思うけど私も最初はよく分からなかった!笑

なにしろ最初は戦が始まるし登場人物は男ばっかりだし、えっ?!これ戦モノ?!と驚きつつもそれに慣れてくると突如として戦が終わる。戦モノはそれはそれで面白かったのに...笑。

そして何だかんだあって糸世に会うんだけど最初はお互いツンケンしてるの。それにもう二度と会わないだろう状況にもなるし、これでどう物語が進むの?と謎すぎたんだけれども面白いことに草十郎と糸世の運命はもつれ合っていたらしく自然と繋がっていくんだよね。

一度絡まり合うともう二度と離れられない二人。糸世の舞と草十郎の笛という各々得意な分野がって、その二人が出会うと不思議なことが起こってしまう

文字の上で舞や笛を表現するって難しいことだと思う。でも読んでいくと彼らがどう奏でてどう舞っているのかなんとなく分かってくる。そもそも糸世の舞も草十郎の笛も本当の根元の部分は人間には分からないらしいから、むしろ現実世界で代替する方が無理がある。って思うと小説の方が表現しやすいんだと思う。映画化とかドラマ化した時の方が大変だよね。小説だからこそ読み手が各々の舞や笛を想像で補えるんだと思う2人みたいに得意で特異なことがあるのってうらやましいな〜とすごく思った。特別な存在というかね。少し上の存在として2人を見てた部分もある。でもだんだん人間臭くなっていくのが良かった!どれだけ特別な能力があっても人間だもんねって思い出させてくれる。みんな悩みながら生きてるんだなって。

風神秘抄は長編すぎて場面が何度も変わる。場面ごとで一冊の本が描けるんじゃないか?ってくらい。

糸世と出会うまでも中々長い。糸世のことを知らなかったある意味真っすぐな草十郎もいいなあと思う。尊敬した主君に忠誠を誓う真っすぐな感じがね。でも無鉄砲だし命を大事にしないしそんな状態のままだったら糸世と一緒に生きてはいけなかっただろうからね。それを自覚して変えれる草十郎はすごいと思う!変えれない人もいるじゃん。例え大事な人ができても。草十郎の中では糸世の存在が圧倒的になったからなんだろうなあ。そんなに愛されるというか特別な別格な存在になれるって羨ましい笑。でも意外に糸世本人は伝わってなかったりするのも面白い。そりゃそうだよね。読者は草十郎の視点でみてるから分かるけどそうじゃなかったら変に無愛想で不器用な少年だからなあ。

糸世がいってしまった別世界も荻原規子らしくてよかった。完全ネタバレになるけど、「入院をさせられた」とか「綺麗すぎる世界」とか完全に現代じゃん!!!ってなったよね。そういうとこワクワクするなあ。現代も良いぞ?と思うけど、糸世にとっては誰も知っている人がいなくて習慣も文化も何もかも変わっちゃった世界なわけだからそれって居心地悪いし怖いよね。神隠しされた子は今までも時空を飛んでたんだろうか?それとも世界が違ってたのか?過去に行くこともあるのか?というかもしかしたら実は過去だったり?そう考えだすと面白い時空モノ好きなんだよなあ。でも小説ではそこはわりとさっぱりいくんだけどね。

感動したのはやっぱり鳥彦王との別れ!!!悲しかった…。空色勾玉で出てきたあの鳥彦の子孫なんだなあと思うと感慨深いし、元は人、人と言っていいのか曖昧だけど人だったはずなのにもうすっかり烏として生活しているのがおもしろい。鳥の王としての尊厳というかね。まあ鳥の世界は鳥の世界で大変なんだなあというのもよかった。色んな人(烏)が集まればそりゃ色々あるよね。

あとはまあ、源氏と平氏の運命を変えてしまったていうところが中々に熱かった。あれはねー普通に歴史として習っている時でもなんとも言えない部分だからね。一族郎党根絶やしにするのは非道だけれど中途半端に残しても害を成す可能性があるっていうの中々難しいよね結局争いは争いを生むんだな、と。なぜか知らないけど平家側に立って考えちゃうんだよね。多分一度は栄花を掴んだのに敗れ去ったっていう儚さに惹かれるのかなあ。

そういう重大な歴史を草十郎と糸世が変えたっていうのがなんともね。そんなことしちゃダメだよー!と何度思ったことか…。特に源頼朝のところはまだ良いとしても上皇にもやるなよーってね。でもなんだかんだ最後はスカッとしたというか、上皇とどうケリつけるんだと思ってたからうまく纏まったのは安心した。

神にさえなった草十郎がその立場を捨てるのちょっともったいなく思っちゃったけど糸世には変えられないから。最後のあたりで鳥彦王が言うなら糸世を諦めるっていうのも本当に感動したよー。うるさい鳥としてみてなかったのが最後には親友になるのが感慨深すぎる!!!続編で糸世が糸世だと証明するために鳥彦王との関係を言うんだけどもそれが切ないんだよ…。言葉なんて通じなくてもいいじゃん!一緒にいれば!とも思うけどもそういうことじゃないんだろうな。2人は違う道を歩くことを決めたんだもんね。ただ「何かったら鳥が知らせてくれるはず。」っていう草十郎の言葉は鳥彦王のことを感じさせて一緒にいなくても2人は繋がっているんだなって思わせてくれた部分がすごくよかった

まあとにかく鳥彦王が好きすぎる!空色勾玉から好き。2人は違う鳥彦王ではあるけども。

久々にこの時代の歴史を調べたりして勉強にもなったよ。懐かしすぎた!こういう形で歴史上の人物の物語を読むのも面白いよね。

ちなみに鳥彦王も出てくるオススメの「空色勾玉」!