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【荻原規子】あまねく神竜住まう国

荻原規子あまねく神竜住まう国

風神秘抄」の続編の「あまねく神竜住まう国」は源頼朝目線なんだけれど、これも良かったよ〜。「風神秘抄」を読む前にこっちから読もうとしてて、これ単体でも楽しめるとは調べたら書いてあったんだけどでも続編って立ち位置なら「風神秘抄」から先に読むかってなって順番に読んだんだけど順番に読んだ方が良い!ぶっちゃけネタバレ多いし、先に「風神秘抄」読んでからの方が100倍楽しめると思うよ。

 「風神秘抄」の感想はこちら↓

oljikotoushi.hatenablog.com

 

あらすじ

伊豆の地へ流刑にされた源頼朝は土地の豪族からうとまれ、刺客にも狙われて生きる希望を失いかけていた。そんな折に、源頼朝不思議な笛の力で助けた草十郎と、妻の糸世が一緒にやってくる。頼朝を助けることが2人の今後の未来に関わってくると言うが

 

読んでみて

助かった後の源頼朝目線な本作。頼朝は良いところのお坊ちゃんってタイプで、実際良いところのお坊ちゃんだったわけだし、あんまり面白味がない主人公。人生を悲観しているし。後に偉大にはなるはずなんだけどね。風神秘抄は特異な才能があって凡人とは抜きん出ている2人が主人公だったからこそちょっと物足りなさを感じてしまうのだけど、だからこそ読者を代弁してくれる存在なのかなと思う。草十郎たちの凄さを目のあたりに源頼朝が抱く気持ちは読者が感じている気持ちと一緒だな〜と思う。歴史上で言うと源頼朝なんて偉大すぎるはずなんだけど、この時の頼朝は平凡で希望もなく輝いていないんだよね。

糸世とちょっとライバル、みたいな立ち位置も良かった!当たり前だけど糸世の方がお姉さんではあるんだけど、2人がちょっとケンカしたり、でもなんだかんだ糸世が上手だったり。糸世が素直に草十郎が大事ってさらけ出せて、頼朝に対して嫉妬している場面は本当に糸世かわいいなあと思う。荻原規子の作品って女の子目線が多いから糸世からの視点で読んだらそれもすごく面白いだろうし、あんまり描かれないけれど糸世は糸世でいっぱい悩んでるんだろうなあと思う。草十郎目線だと糸世に対してちょっと美化入っているというか、他の男性陣もそうだけど女神っぽく見てるんだよね。でも糸世は糸世でたくさん悩んで生きてきたんだろうからそっちからも見てみたいなあ、共感できるだろうなあ、と思ったり。草十郎もはたからみるとすごい存在に見えるけど実際は悩んでるし失敗もしてるしね。本当は人間らしいんだけども。

糸世と草十郎のその後に出会えたのはよかったな。2人とも夫婦になってて嬉しかった。

最後の源頼朝との別れは悲しすぎた!この時も読者は源頼朝と同じ目線になって草十郎と糸世との別れを悲しむの。いつか会えるかもしれないけど、もしかしたら二度と会えないかもしれないっていうのはすごく悲しい。しかも2人とも別のベクトルでとても魅力のある人物だからその2人から離れるのって至難の技だよね。この2人についてずっと一緒にいたくなっちゃうもん。でもそうはいかないからそれぞれの道をいかないといけない。源頼朝源頼朝の、草十郎と糸世は2人の私たち読者は読者の、それぞれの道を歩んでいかないとね。あー悲しい。でも楽しかった!続編も最高でした。まる。