十二国記の5巻目!丕緒の鳥の4作品目!この短編集は全体的に悲しい話が多くて読んでるとちょっと鬱々としてしまうのだけど、これは希望を感じられる作品!
あらすじ
蓮花は王に家族を殺された。女は国から出ていかなければならないという王が下した布令のために。しかし国を出る旅の途中で王は斃れた。故郷に戻るのも嫌で、新しい生活を始めることになった蓮花だったが、そこは変わり者が多くいる暦を作る職場でーーー。
読んでみて
まず蓮花の境遇が悲しすぎる。それまで「女を国から排除しようとした」ことは知っていた。でも実際にどういうことが起こったのかは詳しくは知らなかったし、表題である丕緒の鳥でも明確には描かれてなかった。景麒のことを考えると前王のことをそこまで悪くは感じられなかったのだけど、こうやって描写されると本当に最低だと感じた。ここまでひどいことが起こるとこの十二国の制度自体に問題があるように感じてしまう。でもうまくいけば数百年安泰な可能性もあるわけでそうなったら天国だろうけど。民主主義になっても戦争はなくならないわけだし。でも偶々そういう王の時代に生きている人たちにとっては最悪だよ。
そんな壮絶な体験をした蓮花が故郷に戻りたくないのは自然なことだと思う。故郷にはあまりにも色んな思い出が多すぎるだろうしね。最初は世間のことに疎くて自分の興味があることに関心を持っている人たちに呆れていた蓮花だけれど、一緒に過ごすうちに徐々に心が癒されていく。やっぱり俗世から離れて植物や生き物と触れ合うっていうのが1番癒されるのかもしれない。秘密の花園しかり。熊蜂と関わる場面では「獣の奏者」でエリンが同じく蜂と関わっていたシーンを思い出した。昆虫とか他の生き物って人間とは違うし、人間から離れたものだと思っていたけれど必ずしもそうじゃなくて昆虫からも人間として生きるためにどうしたらいいのか学ぶことができるのだなあ、としみじみ。しかもいろんな生き物を観察することで作物が豊作がどうかも分かってしまうのってすごい。きっと現代でも色々データを取ってやってくれる人がいるんだろうけど今までは考えたこともなかった。
蓮花が人の命よりも書物を優先した彼らに怒るのは最もだと思う。けれど少しいたたまれない部分はある。でもきっとそうしないと辛くてどうしようもなかったっていうのもあっただろうな。八つ当たりすることで辛い経験を直視せずになんとか頑張ろうとしてたのだと思う。
とにかくラストがよかった!いまいち野木っていう考え方はあんまり慣れないのだけども。王が立つだけでここまで色んな影響があって、そして希望を持ってなんとか生きようとできる。陽子にもちゃんと感じて欲しい。いやでも陽子なら分かってるとは思うけども!でも陽子が王に立つのを妨害されたお陰でこんなところにまで影響があったなんて悲しすぎるなあ〜。
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