価格:900円 |
あらすじ
翠の国は百十数年、鳳穐と旺廈という二つの氏族が争っていた。お互いに殺し合ってきたが、若い族長たちが選んだのは、最も困難な「共闘」だった!
読んでみて
すごく面白かった作品!ソナンと空人と同じ著者になるので、「ここソナンと似ている〜!」と思いながら読みました。
出版年からいったら本当は逆なんだけどもね笑。
1冊で完結なのでわりとサラッと読めますが!内容が濃い!
鳳穐(ほうしゅう)と旺廈(おうか)という元は1つだった氏族が争い続けて国は荒廃していく。十二国記だったら王が変わるところですが、残念ながらそういうわけにはいかないのでずっと戦い続けるという。
そんな中、鳳穐と旺廈のそれぞれの若い族長たちが協力して国を再建していく物語。再建するまでをじっくりってよりも、二人の人生をダイジェスト版で見せられているような感じでした。もっと長編でもいいのに!と思ってしまう。
読者として穭の意図は分かるので、薫衣同意してよ〜と思いながら読むときもあれば、薫衣が可哀想すぎる…となることもあれば、穭も大変だな…となることもあり、穭派になることもあれば薫衣派になることもありました。
でも大変な目に常に合っているのは薫衣なので、どっちかというと薫衣派になって薫衣を応援することが多かったかな〜。
廸学という考え方があって、その考え方が薫衣たちの指針になったりもして面白い。
旺廈派が反発し続けるのは分からなくもない。
今までの座から取り上げられて不当に扱われていると感じるわけだからね。平氏と源氏を思いながら読んでいました。
鳳穐と旺廈同士で協力していこうと思ったのも元は同じ血族だからってことも大きいように思う。
双子の兄弟同士だったわけで。
もうちょっと血が離れていたら協力することも難しかったのではないかな〜?
初めに思いついて考えた穭はすごいし、そんな突拍子のない考えにのった薫衣もすごい。
謀反を起こさずに叩き切ったのが凄かった!
絶対裏切るでしょってなったのでね。でも辛かったろうなあ。
河鹿と鵤のことは悲しい。もっと信用して話し合うべきだったのにね…。難しいのは分かるけども。
河鹿の気持ちも痛いほど分かるから辛い。でも個人の復讐のために多くの人が犠牲になるのも違うし…。うーむ。
最後に心に残った部分を抜粋。
「<殺せ>にも、<殺したい>にも、<殺すべき理由があった。だが、<殺したくない>には、何の理由もないのだ。どこから来たのでもない。もともと胸のうちにあるものなのだ」
「それは、いったい」
「薫衣殿、人はみな、どんな相手に対しても、<殺したくない>をもっているのではないだろうか。ただそれが、いろいろな理由から生まれてくる、<殺せ>や<殺したい>に押しやられてしまうだけで」
そうだ。穭はほんとうは、誰も殺したくなかったのだ。斑雪も、鬼目も、添水も、大陸から来た侵略者たちも。
けれど彼のまわりには、たくさんの<殺せ>があった。<殺したい>があった。何より<殺さなければならない>があった。
そんなものが押し寄せてこない世にしていくことが、彼らの戦いだったのかもしれない。