クロニクル千古の闇(5) 復讐の誓い [ ミシェル・ペイヴァー ] 価格:1,980円 |
あらすじ
トラクの大切な人が<魂食らい>に殺されてしまった!トラクは復讐を決意するがー?!
読んでみて
「復讐の誓い」というなかなか怖い題名がついている。
トラクは復讐に囚われてしまい、フィン=ケディンやレンを危険にさらしてしまう。
もう気づいて〜〜〜と思いながら読んでいたけれど、なかなか気付くのは難しい。
復讐を誓う
復讐についてフィン=ケディンの言葉が心に残る。
「復讐は燃え上がる炎だぞ、トラク」流れにのって遠ざかりながらフィン=ケディンが言った。「おまえの心も燃やし尽くす。そうなれば苦痛が増すだけだ。そんなことにならんよう気をつけろ」
児童書なのもあって恐らく復讐に突き動かされて敵を倒すことはないんだろうとは漠然と思っていた。
けど、トラクが復讐に突っ走るのを見るのは辛かったな〜。
まあ父が殺されてからずっと復讐を誓ってるのだけども。でも今まで人を故意に傷つけようとはしてないんだよね。
トラクが復讐から解き放たれた後の気持ち。
胸の痛みはすい石のようにするどくなった。トラクは長い間、復讐しなければという思いに突き動かされてきた。それが消えてしまった今、残っているのは悲しみだけだった。胸の中にあったかたまりが溶け出してきて、トラクは泣いた。声を上げ、あえぎ、しゃくりをあげながら、すすり泣いた。自分を残して行ってしまった死者たちを思って、泣いた。
悲しいね…。本当に。
氏族間の争い
にしても毎巻そうなんだけど、氏族たちの騙されやすさと扇動されやすさと争いやすさといったら!
トラクやレンがどれだけ言っても聞かないし、その割には全部終わった後は後悔するし。
もっと早く気づいてくれる人いないんか?!となっていた。
でもこれって現実の世界と一緒だよね〜。
<魂食らい>たちはみんな魔術を使えて、さらにリーダーシップもあって知恵も回る。
そういう人からしたら多くの人を思い通りにするのは簡単なんだよね。シアジとトラクがみんなの前で言い合うのが怖かった。シアジがトラクのことを悪者扱いして、みんながそれを信じちゃうのね。
こういうことって現代でもあるな〜と。
情報が多いからこそ、より取捨選択して見極めていかないといけないんだろうな。
天地万物の精霊
そしてとうとう天地万物の精霊が実際に姿を表す!
なんか私、「精霊」って書いてあるからか複数いると思っていて。八百万の神様みたいに。
でも実は一人だったみたいで!
驚いた!
やっぱ一神教だからなのだろうか。
「<天地万物の精霊>は、冬にはヤナギの枝の髪を生やした女性として高地を歩く。夏には雄ジカの角を生やした背の高い男として森の奥を歩く。」
もののけ姫を思い出す〜。
正道を讃える世界
深い森に住む人たちは「正道」というものを信じている。
恐らくこういうのが後々の宗教になっていくのだろうな、と思う。
正道を信じる人と信じない人で対立し合うことへの注意を喚起している。
正しいものはない
心の残った言葉↓
「確かなことなど、どこにもないのだよ、トラク。おまえに勇気があるなら、おそかれ早かれその事実に直面するだろう」
(中略)
「決して直面しようとしない人たちもいますよね」
(中略)
確かなことはどこにもないのだ、とトラクは思った。そう思うと、さわやかな、ひんやりした風が体の中を吹き抜けていくような気がする。
難しい!これ子ども読んで分かるのだろうか?
文章としては分かっても実感するのはもうちょっと大人になってからでは?そんなことない?
ウルフの子供たち
そして最後に幸せな報告が!!
あんまりトラクに会いに来なかったウルフには実が事情があって!
子オオカミたち可愛すぎた。
にしても途中でウルフがトラクはオオカミじゃないと気付く場面はなかなかに衝撃だった。
ウルフ目線からしたらびっくりだよね〜。
トラクが「知ってると思ってたよ」ってサラッと言っちゃうのもなかなか。
まあ外見からはオオカミらしさはないからね。
でもそこも乗り越えて最後はレンも含めて家族になってよかった。
ウルフにも幸せがきてよかったよかった!
次巻で最終巻!とうとうトラクたちの旅が終わる!