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【ニクス】ライラエル 氷の迷宮

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あらすじ

「サブリエル」の死闘から14年、古王国ではサブリエルを嘲笑するように各地で死霊が発生していた。その頃、クレアの娘であるライラエルは14歳になってもまだ「先視の力」を授からず絶望していた。自殺を決心したライラエルだが、彼女の定められた運命が明らかになりー?!

読んでみて

ネタバレありです!!

 

古王国記の2巻目。1巻目は「サブリエル」でその一巻で話は終わったんですが、今回は「ライラエル」と次巻の「アブホーセン」と2冊で1つの物語になっている。

またサブリエルに会える?!と思いながら読むと、サブリエルは主人公の座を退いているのでなかなか会えない。残念。

でもライラエルもとっても魅力的な主人公なので夢中になってしまう。

ライラエルは「クレア」で、「サブリエル」の時、クレアたちはサブリエルとタッチストーンを助けるためにチラッとしか出てこなかった。

クレアの「先視の力」があれば完璧じゃん!と思っていたのだけど、実際にはそこまで甘くはない。クレアたちは女性ばかりで、一つの共同体として一緒に暮らしている。「先視の力」が出てくれば一人前のクレアとして認められる。ところがライラエルにはその力がなかなか授からず、死のうとすら思う。

共同体の一員として認められず、疎外感を感じて自殺を考えるのは思春期あたりの年齢の時にすごく強いと思う。その時を乗り越えればまたしばらくはそういう思いは薄くなると思うんだけどね。でも当の本人にとっては死活問題なんだよね。


ライラエルは図書館員として勤務することになるけれど、図書館は危険な場所らしい。「どういうこと?」と思っていると、その危険がどういうことなのかちょっとずつ分かっていく。そして「不詳の犬」と出会う。このキャラクターが本当に可愛い!前作は猫のモゲットがいて素敵だったけれど、今作はさらにこの犬も出てきて嬉しくなる。こんな犬がいてくれたら嬉しいだろうなあ

そんなこんなで相棒を見つけてライラエルは孤独も吹き飛んで図書館を探検することになる。チャーター魔術師としても優秀なんだから先視の力なんてなくていいじゃん!と思うんだけどね。難しいね。


ライラエルがひと段落したところで今度はサブリエルとタッチストーンの息子であるサムが中心となる。サムがアンセルスティエールの学校に通っているのをみるとサブリエルを思い出させる。それに学友といる時に襲われてみんなで戦うのも一緒!

ところがサムにはベルがないし、そもそもアブホーセンとしてもほとんど学んでいない。ここで親友のニックに可哀想なことが起きる

その後サムはずっと塞ぎ込んでしまう。姉のエミリアの空回りぶりがなんだかおかしい。サムは本来とは違う役割を担っていたんだと分かると、サムの塞ぎようも納得できる。


そしてライラエル!なんとアブホーセンだったなんて!リメンブラザーもあるのにアブホーセンにもなれるなんて。サムの様子をみるとアブホーセンは死霊を怖いと思わないのかな、と思う。

何にもなれなかったライラエルがアブホーセンだと分かって、自分のルーツも知って、急には受け入れられないけど一段落ついた感じ。

 

「往く者が道を選ぶのか、それとも道が往く者を選ぶのか?」

またこの言葉が出てくる。深いし難しい。


ライラエルはとうとう自分の運命を背負って出発する。一方、サムは自分の運命から逃げようとする。サムが途中で警察を殺した時はサムのことをもう好きになれるか分からなくなったのだけど、それが誤解でよかった。サムは人間臭くって弱いので、共感できるのだよね。ライラエルとかサブリエルは使命を背負っているからサムみたいに逃げようとすることさえできないからね。

サムが自分の馬を殺さないといけなかった場面で、サムは自分で手をかけないといけなかったけどかけれなかったし、結局殺してしまったということを話すけれど、ライラエルは仕方のないことだと言う。まあモゲットなら王子として育てられて甘えているってことなんだろうけども。でもそういう人間らしさがサムの魅力だと思う。


今作でチャーターの始まりが少しずつ明かされていく。

五人のチャーター聖賢が

手に手をとって国造り

王冠抱く一賢者

死霊を鎮める二の賢者

三・五は石と漆喰に

四は氷に閉ざされる

 

むかしむかしの物語、あなたのために歌いましょうー

七つの星がきらめいた、はるか昔のお話を!

さて、その七つ星はなにをした?

それはほら、チャーターを織った七つ星!

五つは縦糸最後まで。

二つは横糸、あちこちに。

七つの星は分かったが、星は九つあったはずー

きらめくことをためらった、あとの二つはなにをした?

八は隠れて逃げまわり、

七つの星に捕まった、

九は剛力、暴れたが、

哀れ独りのオラニスは、光を奪われまっぷたつ、

塚の下深く埋められて、

世の終わりまで恨みごと


ちょっとした大死霊じゃなくって、太古の昔から存在した悪が目を覚ます。なんだか指輪物語を思い出させる感じになってきたぞ。


あと犬が言ったこの言葉も心に残っている。

「選り好みをする者は物乞いになる。たとえ自ら物乞いを選んだわけでなくとも」