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【JRRトールキン】シルマリルの物語

【JRRトールキンシルマリルの物語

最初はちょっと読みにくくてグダるけど、中つ国の成り立ちから全て辿れてすごく良い本だった。この先が指輪物語につながっていくと思うと感慨深い。

 

あらすじ

中つ国の成り立ち、ヴァラールたち、そしてエルフ、人間。西の海を渡るとどこへ行くのか?アラゴルンの祖先やエルロンド、ガラドリエルは何者なのか。人間とエルフの関係、そしてサウロンが仕えたモルゴスとは?指輪物語につながる壮大な物語がここに。

 

読んでみて

トールキンの手紙は最後でも!

最初のあたりはわりと読みにくいので、「アイヌアの音楽」から読んだ方が読みやすいと思う。トールキンが出した手紙がめちゃ長くって、簡潔にネタバレがしてあるので多分最後に読んだ方が意味が分かっただろうし面白かったと思う。なんとなくしか分からないことを言われている感じが強い。にしても昔はメールとかなかったからあんなに長い手紙を送ってたんだね。メールない時代めちゃ不便だよね。ちなみに最後の訳者の人も書いていたけれど、最後の方にある「力の終わりと第三紀」あたりから読んだ方が指輪物語から入った人はとっつきやすいと思う。でもまあ順番に読むのも悪くない。

 

中つ国の始まりとヴァラールたち

アイヌアの音楽」「ヴァラールとマイアールのこと」あたりは似たようなことが書いてある。感覚的に書いてあるからかけっこう抽象的。最初は「どういうこと???」となりながら読んでいたけれど、徐々に形が見えてきてなんとなく理解できるようになる。ヴァラールはけっこう多かったので最初「これ誰だっけ?」と何度も戻っては読んでいた。読み終わる頃にはわりと覚えてはいたけど、途中からはエルフの名前が多すぎて(しかもなんかみんな似ている)、混乱しまくっていた。

前半部分は知らないキャラクターばかりで、これがどう第三紀につながるのかさっぱりだった。だからたまにサウロンの名前が出てくると嬉しくなってしまった笑。指輪物語でもサウロンの前にいた悪いやつのことがちょっと出てきたりしていて、それがメルコール(モルゴス)なんだけど、こいつの方がサウロンよりヤバくてびっくり。というか神々との戦いが実際にあったなんてね!そもそも中つ国ってそうやって作られたんだっていう衝撃が強かった。

 

エルフの時代へ

徐々に物語はエルフたちへと移っていく。私の中のイメージのエルフって「賢者」って感じが強かったのね。指輪物語に出てくる人たちはみんな悟っていたエルフばっかりだった。レゴラスはまだ若いけども。だからエルフの歴史を見ていくと、なんか人間っぽいなと思ってしまった。人間臭いというか。永遠の命を与えられたエルフ。死んでもどこにいくか決まっていて、ヴァラールたちの元へも行って憂なく暮らせるのに、なんていうかそういう平穏さを誇りとか自尊心から捨てるところがすごい。なんかもっと考えよう〜と思ってしまうけれど、このエルフたちの間違いがあったからこそ、ガラドリエルやエルロンドは賢者みたいになれたのかなあ。

にしてもフェアノールね〜〜〜。そんな馬鹿な誓い立てるなよ!!とどれだけ思ったことか。子どもたちも微妙だけど、そもそもフェアノールがそんなことしなかったら息子たちも巻き込まれることなかったし。フィンゴルフィンたちも。船を燃やすとかどんだけひどいのか。

同族殺しが定期的にあってめちゃ怖いなと思いながら読んでいた。掟を破ったり罪を犯した場合に容赦なく殺すのも怖かったけど、自分たちの欲求を通すために殺し合うのはもっと怖い。でも人間たちはたくさんしていることなんだけどね。エルフがするとなんだか余計に罪なことに感じてしまう。

あとエルフの世界も思ったより物騒で、フィンゴルフィンの娘・アレゼルが一人旅をしたときに、気に入られたから誘い込まれて嫁にされてしまって、完全に誘拐婚で怖すぎた。ルーシエンの場合もそういうことがあってエルフって野蛮人?って思ってしまった。その点ではシンゴルが自分の娘であるルーシエンを結婚させたくないからってベレンに無茶振り言うのもひどい。そのせいで色々ひどいことが起こるけど、もはや自業自得では?って感じ。ちゃんと娘の意見聞けよ、と。そしてメリアンも気づいてたんならもうちょっと諌めなよ、と思う。相手に合わせるだけが結婚ではないのでは?なんかみんな全体的に自分勝手だよね。永遠の命があるとそうなってしまうのか?シンゴルの無茶振りのせいで一番割を食ったのってフィンロド・フェラグンドだと思う。てかシルマリルにみんな魅了されすぎなのも怖かった。

 

人間とエルフ

人間がだいぶ経ってから出てきて、エルフに出会った人間たちがエルフに仕えるようになるのは興味深かった。やっぱそうなるのねー!有限の命である人間と有限がないエルフ。有限の命である人間の身からするとエルフうらやましいし、人間がその点をどうにかしたいと思って唆されてしまうのは仕方ないように感じた。まあ無限じゃなくてもいいから500年くらいがいい。って思うけど、500年になったらもっとって思うのが人間の性なのでしょうか。にしてもモルゴス側につく人間がいつも一定数いたっていうのは悲しかったなー。エルフたちはみんなモルゴスの敵なのに人間はモルゴス側についているのも少なくなくって。それが種族の違いなのか…。まあエルフたちはモルゴスにひどい目に遭わされているっいうのもあるだろうけどね。

あとドワーフの誕生の秘密がなかなかに愉快だった!まさかそんな!でもエルフたちが出来損ないみたいな言い方で呼ぶのはなんかひどいと思ったよ。エントの名前は出てこなかったけど恐らくエントたちであろう描写は出てきたのでよかった。エントたちの歴史ももっと知りたかったな。あとトム・ボンバディルについても知りたかったのだけど、そこは謎に包まれているのか?でも考えられるとしたらマイアールだよね〜。

 

エルフと人間

アラゴルンを入れて、エルフと人間たちの結婚は3組ある。ルーシエンベレン、イドリルとトゥオル、アルウェンとアラゴルン。みんな女性側がエルフで男性側が人間。でもアラゴルンの祖先はエルロスなので、系図的にはアラゴルンもエルフの末裔ではある。ただエルロスが人間になっちゃったからエルフではないんだけど。だからアルウェンからみるとアラゴルンは自分の伯父の末裔ってことになる。複雑。アラゴルンが長命な理由も分かってすっきりした。

指輪物語の時にエルロンドがアルウェンとの別れをすごく悲しんでいて、はっきり言ってよく分かっていなかったんだけど、この本を読んでその意味を理解できて、あの別れは本当に永遠の別れだったのだなと気づいた。エルフと人間は全く別物で、エルフは死んでもいく場所があるし、中つ国から離れてヴァイヤールたちの元へも行くことができる。でも人間と生きることにしてしまうと運命はそちらになってしまう。そしてエルロンドたちは第三紀が終わったら去らなければいけないことが分かっていたんだよね。悲しいなあ。自分の運命を変えてまで添い遂げたい相手がいるってすごい。エルフって恋愛すると命をかけるタイプなのかな。何百年と恋愛してこなくっても運命の相手と出会うと一筋って感じ?

ガラドリエルが最初っからずっと見守っていたのに驚いた。だからあんな感じだったのねー!ガラドリエルがどうして中つ国に来たのか気になるなあ。ちなみにガラドリエルはアルウェンのおばあちゃん!びっくり!みんな年齢を重ねないから分からないしイメージつかないよね。エルロンドからみると義母っていうのも面白い。ちなみにエルロンドには人間の血が入っているのも興味深い。半エルフってハーフと似たような意味だと思っていたけど違いました。

 

サウロンについて

サウロンはなかなか悪いやつでアラゴルンからみると元々の祖国を壊したやつってことになる。でもまあ王様ももうちょっと考えなよー!と思ってしまわなくもない。でもサウロンはエルフでさえも騙せたんだから人間なんて簡単だったろうね。にしてもエルフたちにちやほやされているサウロンって不思議。よく悪役も子ども時代や悪役になる前があって、その時に倒せばよかったのに〜と思うけど、サウロンもまさしくそう!でも実際にそうとわかるまでは手出しできないし分からないよね〜。指輪物語ではサウロンってなんだか怖いやつってイメージだったけど、そのサウロンが動き回って人間やエルフの周りにいて、時にヘコヘコしてたと思うとなんかおかしくも感じる。

 

ガンダルフたち

ガンダルフって不思議だなと思っていたのですが、まさかその正体がマイヤールだなんて!マイヤールってヴァラールと違ってたくさんいて便利だよね。サウロンもマイヤールだったわけだけど、イスタリがたくさんいてもサウロンに勝てないって不公平だよね。なぜ指輪物語の最後でガンダルフも西に行かなければならない理由が分かってよかった。

 

終わりに

あとトゥーリンとニエノールの話は悲しすぎた。でもトゥーリンは全体的にひどい逸話が多いのであんまり好きになれない。もうちょっと周りの意見も取り入れよう。ああいう近親相姦的な内容って昔話とかにもよくあるよね。

残念ながらホビットたちのことは全然書いてなかって悲しかった。その辺りはどこにも載ってないのかなー。

歴史の教科書ほど硬くはない歴史の資料集を読んでいる感じでした。終わらざりしも読むのが楽しみ。