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【宮部みゆき】ソロモンの偽証

ソロモンの偽証(第1部) 事件 [ 宮部みゆき ]

価格:1,980円
(2021/5/4 10:57時点)
感想(35件)

あらすじ

1990年のクリスマスイブに城東第三中学校で中学2年生の柏木卓也が屋上から転落して亡くなった。警察は自殺と判断するが、匿名で殺人だと訴える告発状が届いて?!

読んでみて

1巻600ページ超えが3作品という分厚さ!流石に1冊1冊が長かった!でもさすが宮部みゆき!読み始めるとスラスラ読めてしまうので不思議。なんだかんだ1日で1冊読んだりしたので結構すぐ読めました〜。でも疲れた!


事件・決意・法廷の3部作で構成されている。1部の事件はその名の通り事件が起こる話なので結構読んでいると辛い。悲しいことばっかり起こる。

そもそもは中学2年生の柏木卓也が学校の屋上がから飛び降りた事件が事の発端。警察は自殺だと判定するがその後に同じ学校の不良たち3人組に殺されたのを見たという匿名の手紙が送られてくる。

その手紙が報道機関にも届いてしまったことから事件は大体的に報じられ、渦中にいる生徒や先生や保護者を巻き込んでいく。

主人公の藤野涼子は最初はただただ巻き込まれていっただけで、その波に抗うこともできず傷ついていく。

大人たちが子ども守るといって実際には何もしてくれないのに憤り、自分たちで裁判を起こすことにする。ここまでいく過程も長いけども笑。

そうして決意では裁判を起こすと決めてから、誰が参加するのか、いつどうやっていくのかから始まり、証拠集めに奔走する。

そうして最後の法廷では実際に中学校の体育館で裁判が始まる。

長い!とにかく長い!そして登場人物が多い!一人一人ものすごく丁寧に描かれているのでそれぞれの人物の考えと感じ方に対してすごく共感できる。

 


以下ネタバレあり!!

 

 

 

涼子とともに主人公の一人と言えるのが野田くん。

彼は柏木卓也とはまた別に人生に絶望していた人の一人。でも柏木卓也とは違って自分の人生をないものにしようとするのではなく、周りの障害を取り除こうとした。ある意味どっちに振り切れても不思議じゃない二人だったけども。でも結局野田くんは踏みとどまった。

柏木卓也は人生は意味がないと思っていたけれど、野田くんは自分の人生を生きたかったんだと思う。まあちょっと飛躍しすぎたけども。もっと親に反抗したり言い返したりしたらよかったのに。まあそういうのができない親子関係だったからこそ、急に突飛な考えに至ったんだと思うけども。

 

野田くんの成長物語だよなあと思う。人と関わるのも苦手だった野田くんが自分にも大事に思ってくれる友達がいて、そして夏中ずっと夢中になってみんなと裁判に取り組んで、時には自分の意見もちゃんと主張して、神原くんを支えて…。だから最後に大人になって登場するのが野田くんなんだな、としみじみ。

実は映画も読んだのですが、ちょっと違うところが多すぎてうーーむとなってしまった。映画自体は良かったんだけども!

やっぱ原作が好きで映画を観ると納得するのは難しいですね。

3部作にして欲しかった!!難しいのは分かるけども!ドラマ化の方が良かったのではー?!してくれないかな〜。

 

三宅樹里はなんとも言えない。松子に対しての厳しい言葉かけとかそういうのはひどいと思う。すごいツンケンしていて自分を大事にしてくれる相手にも素直になれないんだなあと。松子はすごく優しいし、それは素敵なことだけれど、自分のことを例え本心でなくとも否定する人間とはいなくてもいいのに、と思ってしまう。はっきりと主張することも大事。

樹里が大出たちにやられていた内容はなかなかにひどくて読んでいて辛くなった。警察案件だと思うけどもね。教師も見て見ぬふりをするのはひどい。誰も助けてくれない中で樹里に回ってきた一世一代の復讐だったんだな。その前に誰かがサポートしてあげて欲しかった。

養護教諭の先生の接し方がとってもうまくて参考になりました。彼女も樹里のことは疑っているのだけど、そういうのは全く表に出さないで彼女のケアに集中する。映画だとかなり若い方がやられていたので、ちょっと違和感が。もうちょっとベテランなイメージがしていたのでね。


裁判という突拍子のない出来事を決意するまでを丁寧に描かれていて良かった。ただ結構やり切れない出来事が多いので辛くなってしまう。

宮部みゆきはそういうの書くの本当にうまい!誰が悪とか善とかは相手や場所や時によって変わってくることなんだよね。色々考えさせられました。

学生時代のことも思い出したりなんかしてね。行動力や実行力が凄まじい子たち。夢中になって読んですごく楽しめた作品でした!

ただ、最後の弁護士の人が誰かわからなかった…。あんまり頭に入ってない時に読んだ部分なのか?分かる人がいたら教えて欲しいです。

 


また映画との比較なんかは別に書こうと思う◎