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【カニグズバーグ】ぼくとジョージ

 

あらすじ

頭がよく、ひかえめな少年ベンの中には、ジョージという少年がいた!うまくいっていた二人だったがー!?


読んでみて

パッと見は怖そうですが(特に表紙!)、カニグズバーグさんが作者なだけあって怖い感じにはならない。

ただ、色々と考えさせられる作品だった。


ベンを多重人格(解離性同一性障害)のように思ってしまうが、そういうわけではなくジョージはイマジナリーフレンドのようなものらしい。

危ういと思うけどね〜。

ただ、周りが変だと思っているだけでベンはジョージのことを特に困っているわけではないからね。


ベンやジョージの目線でみると嫌な大人たちが多いけれど、大人目線でみるとまあそうなるよね…と理解できる。

健常と異常があったら、大人はどっちかに当てはめようとする。とにかく枠組みに当てはめようとするけど、子どもはそういう考え方をしないから、大人の頭でっかちな考えを馬鹿にするし、反発するんだよね。

遊びとか余白とかっていうのがあんまりないのだと思う。

私は特に精神科医の先生の気持ちが分かってしまったよ…。


そう思うと、最後の薬物の部分も大人側からしたらそんなことやらずに正直に言えばいいのにって思うけれど、ベンやジョージや弟にとってはそうはいかないのだよね。

でも一歩間違えた大変なことになるわけだし、うーーーんという複雑にな気持ちなりました。

同じ著者のクローディアの秘密よりも、もうちょっと年上な作品かな。


あとがきにスタジオジブリ鈴木敏夫さんの解説もあっておもしろかった。

調べてみると、かりぐらしのアリエッティは最初はぼくとジョージをやる予定だったらしくて、それもみて観たかったなあ。

ジブリでやったらすごく有名になったかもね。

でも冒険物語ではないので、あんまり起承転結っぽくならないかもしれないけど。映画じゃなくて30分の連続アニメなら良さそう。

解説部分でアーシュラ・K・ル = グウィン、ポーラ・フォックスと、E・L・カニグズバーグの3人がイギリスで人気があると紹介されている。

ポーラ・フォックスさんは読んだことがなかったので読んでみたい。

 


心に残った部分

ベンは幸福な少年だった。その幸福がつぶされるまで、まわりの人たちは、彼が幸福だなんて、知りもしなかったけれど。人はよく幸福と快活を混同するのだが、幸福はかならずしもはでで明るくてにぎやかだとはかぎらないのだ。幸福は、種のない、うすい皮の中でほの赤く甘くなるスイカのように熟すものだ。スイカのように、じみな暗い色をした皮ですっぽり包まれていることがあるのだ。ベンジャミンも、外面はものしずかなはにかみやだったが、幸福だった。そうぞうしいジョージがからだの中にいれば、それでじゅうぶんだった。ベンとジョージはずっと仲よく、共生生物的にくらしてきた。ベンがジョージ以外の他の人たちに気に入られたいと思いはじめた六年生のころまで。


解説部分から抜粋

ヘロルド博士もいうように、ベンの心の中に、二つの人格が住んでいますが、これは決してジキルとハイドではなくて、二人は同時に存在し、いつも連絡し、会話をしあっています。これは、成長の危機(節)にある人間なら、だれでも起こる現象で、決して異常な状態ではないわけです。だれでも、心の中に二つの顔を持った管理者がいて、一人は安全をつかさどり、このままでいようよ、そうすれば安全だといい、もうひとりは、それではだめだ、こうすべきだ、すべきでない、とそそのかし、脅迫する時期があります。その時に、その内部の声にじゅうぶんに耳をかすかどうかで、成長のつぎの段階へ進むのか、それとも成長をやめてしまい、あたえられた価値観におとなしく従うのかが決まるのだ、と心理学者はいいます。その内部のメッセージを感じとり、自分の中でいま混乱が起こっている、その混乱は、たとえ苦しくても、大切にし、忍耐して、克服しよう、と決心することができる人は、群れとは違った、自分なりの価値観をつかむことができるのでしょう。