文学系心理士の自己投資ブログ

文学系心理士の感想部屋

文学系心理士が好きなことを徒然なるままに書きまくるブログ。小説、NETFLIX、たまに心理学のことも♪

【ウォーカー】カラーパープル

 

 

あらすじ

セリーとネッティーは姉妹。セリーはネッティーを父から守っていた。ある時、セリーは父親に言われミスター** と結婚することになる。ミスター** の妻が殺され、子どもの世話や家事をやってくれる相手を探していたのだった。従うことしかできなかったセリーだったがー。

 

読んでみて

主人公であるセリーが神様への手紙という形をとって物語は進む。

最初は少しわかりづらいけれど、すぐに慣れてくる。

そして最初っから悲しい事実が判明する。


セリーは父から性的虐待を受け、子どもを2度も産んでいた。母も助けてはくれない。

そして母も亡くなり、子どもたちもとられたセリー。

父が妹のネッティーを見る目つきから妹へも危険が迫っていることを知る。


セリーを厄介払いしたい父は、ネッティーのことを好きになっているミスター** にセリーを勧める。

もう本当に辛い。悲しい。

父がクズ。

そしてネッティーのことを好きだって言っておきながら結局セリーと結婚するミスター** もクズ。


とにかく物のようにセリーは売られていく。

結婚先も最悪で、子どもたちの世話、家事が待っている。

ミスター** はセリーに暴言を吐き、暴力も振るう。

家事や育児を助けてはくれない。

子どもたちも助けてはくれない。


子どもがセリーを石で叩いて血が出るっていう場面が衝撃的だった。

最悪な家庭でもセリーは逃げない。

耐え続ける。

本当に逃げて!反抗して!と何度思ったことか…。


一方でネッティーは逃げる。

そして親切な牧師家族とともに宣教師としてアフリカへ向かう。


行動を起こすことができなかったセリーだが、シャグという女性にあって変わっていく。

最初はシャグがとっっても嫌な人だったのだけれど、自分のことを尊敬してくれるセリーを好きになり、二人は親友になる。


親友であり愛していた妹と離されたセリーにとって、シャグは唯一の存在となっていく。

二人が親友になり、そして愛し合っていく過程が丁寧に描かれている。

ずっと我慢していたセリーにとっては美しく、自由で、自分の人生を生きているシャグは輝いて見えたのだろうな。


そしてネッティーからの手紙をミスター** が握り潰していたと分かった時にセリーの怒りは凄まじい。

それまで従順だった分、殺してやりたいと思うほどの怒りになっていく。

セリーはミスター** にきっぱりと言う場面が清々しい。

あんたよ、その性悪のあんたが我慢ならないんだよ。あたしは言った。あんたから離れて、生きたいのさ。あんたの死体をあたしの出発のはなむけにしてね。

何だって? ショックを受けて、彼は聞いた。

テーブルのまわりの人たちのロがあんぐりと開いている。

あんたは、 あたしの妹のネッティーをあたしから取り上げてしまった。あの子しか、あたしを愛して くれる人はいなかったのに。

ミスター**はど り始めた。 だがだがだがだが……。 車のエンジンのように聞こえた。

(中略)

あんたたちはみんな腐れガキだった、あたしの生活をこの世の地獄にしてしまって。このあんたの父さんという男は、死んだ馬のクソにも値しないやつさ。

ミスター** の手が伸びて、あたしを打とうとした。あたしはナイフをつかんで、彼の手を突いた。

このあばずれが。彼は叫ぶ。家のこともせずにメンフィスなんぞに出かけて行ったら、世間の人は何と言うと思うんだ。

アルバート、あんた正気なの?人が何と思うかなんて女がほんとうに気にすると思って

るのかい?

シャグが首を振る。

いやあ、とグラディーがここで割って入った。人の言うことを気にしてたら、女は男をつくるってこともできないもんな。

シャグがあたしの方を見る。あたしたちは笑いだした。ソフィアも笑いだした。みんな笑いに笑った。

男ってどうしようもないね。シャグが言う。あたしたち女は、うんと言って、テーブルを叩き、涙を拭いた。


父の性的虐待に耐えるしかなかったセリー。

結婚相手を勝手に決められ、夫にも耐えるしかなかったセリー。

そのセリーが主体性を持ち、しっかりと言い切る。ミスター** に反抗する。本当によかった。


そして可哀想なソフィア!

市長に暴力を振るったため、袋叩きに合い、その後何十年も奴隷のように市長の家に仕えることになってしまったソフィア。

家に帰してもくれず、子どもたちにも会えず…。

こうやって虐げられた人々がどれだけいたのか。

ソフィアに育てられた市長の子どもであるエレノアとの関係も興味深かった。


ハーポがソフィアを殴って言うことを聞かせようとするのも嫌だったな。

もちろんソフィアは殴り返すけれど、妻は自分の言うことを聞いて当たり前だという考えが蔓延しているのが怖い。


セリーの夫であるミスター** は、作中でずっとミスター** と呼ばれている。

シャグは名前で呼ぶが、セリーはミスター** と呼ぶ。

セリーがミスター** にはっきり意見を言い、離れた後で、二人の関係はかなり改善されていく。

そこで二人は初めてお互い人間として関わることになる。

離れた方が良くない?!と思うが、長年一緒にいたため、お互いの大事な相手も共通してるから難しいのだよね。


そして最後の最後に感動の再会が!

セリーもネッティーも見た目は変わってしまっても、心は変わらなかった。


序盤から途中までは最悪な状況が続くけれど、途中からセリーに味方が増え、女性たちで団結し自立していくさまは読んでいて勇気をもらえた。

個性豊かな登場人物が多くて、あっという間に読むことができた作品だった。


ちなみにスティーヴン・スピルバーグ監督の映画もあります。

↓黒人差別について知ることができるおすすめの本はこちら↓

oljikotoushi.hatenablog.com