文学系心理士の自己投資ブログ

文学系心理士の感想部屋

文学系心理士が好きなことを徒然なるままに書きまくるブログ。小説、NETFLIX、たまに心理学のことも♪

【はらだ有彩】日本のヤバい女の子

ずっと気になっていた作品を読んでみました〜!

結論から言うとおもしろかった!

昔話とか古典とか読んでいると「ひどくない??」「なんでそうなる?」と思うことが多いけれど、そういうのを著者がバッサリ切っていて爽快だった


長くなるけども1個ずつ感想を書いていきます〜。

 

献身とヤバい女の子ーおかめ

まあ、これは本当にひどい

ベテランの大工である夫がミスをして、そのミスをカバーするための助言を妻のおかめがして、万事上手くいった。

ところが…おかめは女に助けられたことが世間に知られて夫の名誉に傷がつかないように自害した、というね。


もう意味が分からない話ですね。

著者と一緒で「死ぬ必要ある??!」となってしまう。

ひっそり黙っておくのもダメだったの??

女に助けられた、という事実があるだけでもうダメなの??

 

著者も可能性を色々と考えていますが、もう辛すぎるよね。

こうやって優秀な女性たちが活躍の機会を与えられなかった例がどれだけあるのか…。

差別とか偏見とかがなかったらもっとこの世は発展していたのではないだろうか。

 

秘密とヤバい女の子ーうぐいす女房

ある時綺麗な女性と屋敷を見つけ、幸せに暮らすことになった男。

妻から一番奥の座敷には入らないように言われたが、結局開けてしまいーー

というよくある話。


見るなの禁止と言われ、臨床心理学的にも解釈されることが多い。

北山修先生の著書があるよ


「見るな」と言われたら見てしまうのが人間の性かもしれない。

 

でも本作の著者は女房の試し行動の可能性を指摘している。

確かにそれもあるかもね〜。

まあ勝手に見るのではなく、勝手に試すのではなく、お互い話し合うのが一番ではあっただろうね。

 

失望とヤバい女の子ー人知られざる女盗人(今昔物語)

この話は初めて知ったのだけれど、なかなかおもしろかった。

昔話で男性に命令する女性の話って少ないように思うのだけれど?

お願いとかならあるけども。

この話はが出てくるからかSMと関連づけられて語られることが多いよう。

そういうのって昔からあったのだなあ〜!

 

でも言われるがまま危ない仕事をするのって主人公は大丈夫なのか??

もうちょっと能動的になって欲しかったのはその通りかもしれない笑。

 

身だしなみとヤバい女の子ー虫愛づる姫君(堤中納言物語

この作品のことは知ってました。

ナウシカのモデルはこの作品ということを聞いたことがある。


私も著者の考えと完全に一致。

虫を愛でるくら好きにさせろと思う。

まあそれができなかった時代。というか最近までできなかったように思う。

今でも女性が多い趣味がバカにされたり、男性の影響って言われたりすることも多いけども。

 

右馬佐は本当にウザい

でも一昔前の少女漫画ってこんな感じだったよな〜。

 

我慢とヤバい女の子ー飯食わぬ嫁

とてもケチな男がいた。

結婚すると妻の食費がかかるため飯を食わない女がいたら結婚を考えてもいいと言っていた。

 

...もうこの時点でアホやろ…と思ってしまう。

いや、結婚しないか聞かれて面倒くさくてそうやって言ってるならいいんだけどね?!

 

ところが飯を全く食わない女がやってきて結婚してしまう。

もう結末は目に見えているよね?!

男が目先のことしか考えてなさすぎて大丈夫か??という感じ。

 

この話の意味とは??と思っていたら、妻は菖蒲の中には入ってこれなかったから五月の節句には菖蒲を飾ることになりました、という締めがある。

それが言いたかったから話の内容自体はこんなに適当になったのでは?!と疑ってしまうよね。

 

人間と結婚した理由を真面目に冷静に考察する著者がおもしろい。

 

仕事とヤバい女の子ー鬼怒沼の機織姫

そのまま普通に弥十目線で読むのと、著者が書いてくれている機織姫目線で読むのとでは全く違う。

弥十目線で読むと、不思議な空間に入り込み、とても美しい人がいて、ダメだとは分かっていながらも近づいていってしまい…。

とホラーっぽくなる。

 

ところが機織姫目線で読むと、気分良く機織りをしていたら急に腕を掴まれて邪魔されて…。

機織姫目線で考えると違う意味でホラーになる。


私は女性なので、同じ境遇に立たされたらめちゃ気持ち悪いし混乱してしまうのもよく分かる。むしろ怒れたのがすごいと思う

 

第二の人生とヤバい女の子ー鬼神のお松

いやーもうこれは最悪な話でした。

もう本当にひどい。

女性というだけで自分の人生を生きれず、周りの男性に人生を左右され、弱みをつかれて…。

旅人を襲い出したのは、一度人殺しになってしまったからだからなのか…。

ちゃんと行政が機能していれば問題なかったのでは?


角隠しの由来を知らなかったので、今回調べてみたらなかなかだった。

女性は弱い立場に立たされていたからこそ、現世では何もできず、鬼になるしかなかったのだろう

鬼なる可能性がある境遇だと周りも理解していたからこそ、鬼にならないように戒めたのでは?

 

女性に対して怒るなって言うのと一緒だよね〜。

男性が感情的でもそれぐらい重大なことだと捉えられるけど、女性が怒るとヒステリーだと言われる。

悲しいな。

 

喧嘩とヤバい女の子ーイザナミノミコト(古事記日本書紀

この話は有名ですね〜。

そしてここでも見るなの禁止が!

大抵見るのが男性だよね。男性が主人公なことが多いから?


私も著者と同じで「女から声をかけたのがよくない」ってどういうこと??と思いました。

こうやってナチュラルに女性軽視が入っていることが多いよね。

まあこれくらい昔ならいいのだけど、明治以降でこういうのを見ると辛くなってしまうから読めない。

 

変身とヤバい女の子ー清姫安珍清姫伝説)

この話は知らなかった〜。

清姫の執念すごいな、と純粋に思う。

そんないい男だったのか?と思っていたら、著者が「やってもうたんちゃうの?」と疑問を呈していて、「それだったら事情は変わってくるな。」と思いました笑。

いや、ほんと。

 

当時だったらもう他家の嫁になることも難しいだろうし、もしかしたら子どもができる可能性もあったわけじゃないですか?

そりゃあ責任取れよ、という話になるよね。

 

あとぐいぐい迫られたからって嘘ついて逃げるのはよくないよね。

一番やっちゃダメなやつでしょう。

安珍清姫のことナメてたわけで。まさか追ってくると思わなかったわけじゃないですか。

まあでも事実は分からない。

 

贈り物とヤバい女の子ーかぐや姫竹取物語

贈り物の話はいいですね〜。

臨床心理学的にも色々考えられてるよ。


かぐや姫は有名な作品だし、ジブリでも高畑勲さんが出している。

かぐや姫の物語」は難しかったけども好きだったな〜。


結婚しないっていう選択肢が当たり前にあったらよかったのにな〜と思う。

この時代は誰でも結婚することが当たり前の時代だったからこそ断るためにややこしい理由をつけなきゃいけなかったわけで。

 

結婚とヤバい女の子ーオシラサマ(馬娘婚姻譚)

書き方が現代風になっていて笑ってしまった。

まあ確かに娘と馬がベッド・インしていたら驚いてしまうのは分かる。

でも殺さなくったっていいのに…。

 

この作品を一般的な結婚話に当てはめて考えているのが興味深かった。

例え父が認めなくったて、それは当人たちの問題だからね。

 

命とヤバい女の子ー八尾比丘尼

突然不老不死になってしまった女の子

少し老化が遅くなるならいいけど、不老不死だと周りがみんな死んでしまう。

それは確かに悲しい。

 

無限の時間があると嫌になってしまうのものなのだろうか?

それとも楽しめたりするのか?

でもいつかは飽きてしまうのは分かる。


人魚の肉ってどうやって取ったのかがすごく気になった。

 

靴とヤバい女の子ーお露(怪談 牡丹灯籠)

そんなにも人を好きになれるのだなあ。

大体、誰かしら恋路の邪魔をするのだけれど、現世でどうにかする方が幽霊になってからどうにかするより楽な気がしてしまうけど、どうなのだろう?

今だったら自分から会いに行くこともできただろうにな。

 

別れとヤバい女の子ー乙姫(浦島太郎伝説)

浦島太郎はやっぱり難しい。

年老いたからといってそれが罰ではないのは分かるけど…。

でもならずっと竜宮城にいた方がよかったじゃん?って思ってしまう。

そんな生活は永遠には続かないよってことなのだろうけど。

 

幽霊とヤバい女の子ーお菊(落語 皿屋敷

有名ですね。

なぜ皿くらいで死なねばならなかったのか…。

この時点で悲しすぎるよね。

 

王子様とヤバい女の子ーある末娘(猿婿入り)

これも猿側から見ると悲しいけど、娘側から見ると妥当だよね。

契約で得た関係なのに娘を信用できる猿がすごい。

普通そう思わない??

 

まあ父親と契約したから娘も同意していると思ったのだろうか?

父親を介して契約できるという時点で娘の権利が全くないよね。

牛蒡は家族みんなで採ったらよかったのにね。


猿はきっと王子様なら警戒しただろうけどもかわいい女の子は警戒しなかったのだろう。

父から契約をなしにしたいって言われるより自分よりも弱いと思っていた少女から拒絶される方が怒るような気がする。


私が娘だったらここまで度胸のあることができるか自信ない。

でも王子様は助けに来ないし自分でなんとかするしかない。

捕まってから来るか分からない王子様を待つよりもよっぽどいい。

強いなあ〜。

 

顔とヤバい女の子ー鉢かづき

シンデレラとかと一緒で大変なことがあってもハッピーエンドになるお話。

顔の美しさもお金もなくても好きなってくれる四番目の息子素晴らしいな!と思う。

鉢が割れて出てきた顔の造形が「ブス」だったら、恋人はやっぱり気が変わって去ってしまっただろうか。今まで感じた魅力や敬意は容姿によって霞んでいってしまうのだろうか。もしもの話は誰にもわからないが、それならそれでいいのだ。そのための鉢なのだ。自分の価値基準を見えやすくするための鉢。自分の魅力に価値を感じ、魅力とそれ以外の気に入らない部分とを天秤にかけたとき、となりにとどまる方を選ぶ人間を見つけるための鉢なのだ。

 

距離とヤバい女の子ー織姫(天稚彦草子/七夕伝説)

自分がなんとなくしか織姫と彦星の話を知らなかったのだということが分かりました。

最初は大蛇だったり、1年に1回は織姫が言い間違えたからだったり…。


まあやっぱ1年に1回は少なくない?と思ってしまうけども。

普通の女の子だったのにすごくガッツがあったのだなあ。

 

理不尽とヤバい女の子ートヨウケビメ(奈具の社)

これはとっても悲しい話でした〜。

老夫婦ひどくない??

人間じゃないものたちを恐れていることが多いのに、今回は全く恐れないという。

何か理由でもあるのか?

「優雅な生活こそが最高の復讐である」という言葉があるが、私は「物語に従わないこ が最高の復讐」だと思う。自分の身に勝手に起こったことに りやり感動的な意味を見出さす、精神的成長としてつじつまを合わせず、物語を無効化する。あるいは、因果関係のない別の物語を自分で始めてしまう。勝手な展開で許可なくエンドロールを流そうとする何者かの 一切登場しない、まったく新しい物語を。

 

女とヤバい女の子ー女右大将/有明の女御(有明の別れ)

「とりかへばや」みたい!

女性の立場の弱さを詰め込んだ話だな…と思いました。

性的虐待もあるし…。

悲しくなったけれど、最後に二人が再会するのは救いがあった。

女と女の関係は社会のなかで後回しになっていく。肩書きがあればいっそ完全に決別することができたのに、いつ終わるのか、まだ親密な感情を持っていていいのか、それとももう終わってしまったのかわからない。だけとあなたが対の存在のように傍にいてくれたから、私、ここまでやってこられたんだよ。

私たち、何だったのかな。離れてしまった今は、あの頃のように毎日会うことさえ難しい。彼女や妻や母になったら、もうあなたと親しくしちゃいけないの? 名前がないまま失くしたものは、とうやって探せばいいのかな。誰かがほんの少し力を加えたら、今の関係もまたばらばらになってしまうのかもしれない。今でも私が一番あなたの力になってあげられる自信はあるのに、へたをすればとちらかが死んだことを知る術もなくなってしまうかもしれない。それでもあなたがたった今もこの世界で生きていると思うと、心の底からの安心を感じる。

さようなら女達。会えなくても、どこにいても、誰よりもあなたの幸せを祈っているからね。


女の子同士の関係性って肩書きがないから難しい。

親友だとしても恋人や夫の方がより親密になってしまうから…。

 

ちなみに続編も出ています。

 

同じ著者でこちらも気になる…。