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【香月日輪】妖怪アパート 幽雅な日常

【香月日輪】妖怪アパート 幽雅な日常

妖怪アパートシリーズの第一弾!10巻プラス外伝あり。さらりと読める作品。

 

あらすじ

この春、高校1年生になる夕士は、3年前に両親を亡くしていた。親戚の家での息の詰まる生活から抜け出したくって寮のある高校を選んだのにも関わらず、住むことができなくなってしまった。そこで見つけたアパートはなんと妖怪アパートで?!

 

読んでみて

ちょっと不良ぶっているけど、早く大人にならなくちゃいけなかったから不良にはなれなかったような少年・夕士くん。あんまり殴り合いの喧嘩をする本を読んだことがなかったのでちょっと新鮮だった。にしても男の子って本当にあんなふうに殴り合う??と疑問が笑。少なくとも私の身の回りには怪我するほど殴り合う少年たちはいなかったけどなあ。ちょっと自傷っぽい感じもする。

そんな夕士くんだけど、妖怪や幽霊たちにはタジタジ。包容力のある大人たちのお陰で少年らしさが戻ってくる。クリもみんなに可愛がられているけど、夕士も同じだと思う。

ご飯が絶品で天然温泉のあるアパートなんて最高すぎて羨ましすぎる。特に料理を表現する部分で食べたくなってしまう。いいなあ。まあ自分が共同アパートに住むかって言われたら多分住まないと思うんだけどね。どっちかっていうと同じ寮に住んでいた加賀さんのが自分に近いと思う。でも共同アパートとか寮とかルームシェアとかちょっと憧れる気持ちはある。でも何かしら理由がないとあんまり選ばないよね。

クリとシロの話は悲しくって…。虐待って本当に辛い。一応専門家なので、それまで誰も気づいてあげられなかったのか、保護できる時はなかったのか、と考えてしまう。人昔前だと殴るのもしつけの一環だと世間的に認知されていたから余計に難しいと思うけども。母親のことを結構悪く書いていたけれど、社会構造の問題もあるように感じた。どんな理由があろうと暴力を振るうのは許されないことだけれど、母親をサポートできる体制が整っていたら問題なかったわけで。あと父親もないものになっているし。母親は父親みたいに子どもから離れられないからこそ、良い意味でも悪い意味でも絆が生まれるんだろうね。二人が密着しすぎてしまったからこその悲劇だから、誰かがもう一人、身近な人にしろ福祉サービスにしろ行政にしろ入ったらまた変わったんだろうな、と思います。外に助けを求めないところで何かしら起こるのでね…。

あとは霊獣である茜さんが一番好きなキャラクターかも。完全にもののけ姫のイメージで読んでいたけども笑。身近にいる犬も、実は着物着て古めかしい言葉使ったりするんだろうか?と思うと面白いよね。こういう不思議な話で一番好きなのは「百鬼夜行抄」という漫画

なんですが、あの作品は結構怖い部分を多く書いていて(最近はちょっとポップになっているけど)、そういう部分はあんまりこの妖怪アパートにはないなあと思った。百鬼夜行抄では、誰かがを迎え入れるのも、招くのも、何かしら代償がいるっていう考えなんですよね。でも妖怪アパートの場合は、妖怪アパートに来る者たちは善いものってことになっていて、そこの考え方が結構違うな、と思う。百鬼夜行抄の方に慣れちゃったので、そんな気軽に話したり招いたりしちゃダメでしょ!とハラハラしてしまった。今回はクリの母親が怖い部分なんだろうけど、今後は他にももっと怖いことが起こるのだろうか??それにみんな一体何者なのかも気になるところ。さらりと読めるので、続けて読もうと思う!

 


ちなみに、人間じゃないけど人間として生きる佐藤さんの言葉が心に残った。人間として生きるのもそんな悪くないのかも?

「普通の人間の子として生まれて、学校へ行って会社に勤めて、結婚して子どもを育てて、年をとって死んでゆく……。そういう人生を歩みたかった。人間のその限られた時間の中で、精一杯生きている姿がとても綺麗でさあ……憧れちゃうのよ。だからサ、おいらその真似事だけでもしたくてサ」