文学系心理士の自己投資ブログ

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【小野不由美】風の万里 黎明の空

小野不由美風の万里 黎明の空

十二国記4巻目!やっと再び陽子に会えた!!嬉しい!1巻で景麒に会えた陽子がどうなったのか、すごくすごーく気になっていたので嬉しすぎた!

でも王になって終わりではなく、王になったら王になったでなかなか大変な陽子。

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十二国記いままでの感想はこちら↓

oljikotoushi.hatenablog.com

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あらすじ

無事に慶国の王位に就いた陽子だったが、周囲は前王が選んだ官僚ばかり。慶国の内情も分からないため王としての役割を果たせず苦悩していた。芳国の元王の娘・祥瓊(しょうけい)は父を殺された平民として生きていくことを嘆いていた。才国で生きる鈴は、蓬莱から辿り着き、誰にも分かってもらえない気持ちを抱えながら苦しんでいた。

3人の少女たちは苦悩しながらも生きていくがーーー?!

 


読んでみて

王道のストーリー

悲しい展開が多いのだけど、どこか安定感があって陽子がいる限りきっと報われるはず!って感じることができたんだよね。なんというか話の流れとしてはハリウッド映画にありそうな感じかな?勧善懲悪というか。まあそんな単純ではないのだけど、永遠に訳もわからぬまま戦い、裏切られていた1巻に比べると安心できたんだよね

陽子は王だけど、実際まだお飾りの王というか、自分の部下は前の王からいる部下だから自分のことを完全に認めているわけではない大変だな〜と思う。会社とかでも他所から新しく新任された上司とかは大変だよね。なんか町奉行も同じような感じだったから思い出したりした。だから普通の王朝制とは違うよな、と思う。普通の王朝制なら自分を支持してくれる派閥はあるし、勝ち取った王座ならみんな言うこと聞くだろうし。

王座から引きずり下ろされることはなくても、自分の思い通りに人を動かすのは大変

みんなそれぞれ人間だからそれぞれ思惑はある。王の言うことを聞いていても「あわよくば」って思う人は多いわけで、そのしわ寄せが国民にいく。でも厳しすぎると反発されるしよりよい環境を作りたいなら圧政を行わない方が良いしね。王朝制ってみんな言うこと聞くし簡単だろうと思っていたけれどなかなか難しいらしい。愚王になった方がみんな怖いから言うこと聞くよね。


3人の少女たち

少女って言っても陽子以外は本当は少女ではないのだけど。見た目が少女なら永遠に少女なのか?外見に中身が引きずられるってこと?このあたりはイマイチ感覚が分からない。笑


少しずつ変わっていく祥瓊

はっきり言って最初は祥瓊のことは嫌いだった

上に立つ者でありながら国民のことを省みず、その後もずっと恨み辛みばかり視野が狭いし、相手の気持ちも分からない。沍姆のことも祥瓊はひどいと言うけれど、そんなことない自分たちが沍姆にした仕打ちを考えればそうは思えないはず。公主・祥瓊だとバレた時の村の人たちの反応の方が普通だと思う。そんな嫌な祥瓊だったから供王・珠晶がはっきりきっぱり言ってくれた時はスッとした。でも結局はそこから逃げ出す祥瓊は本当にやれやれっていう感じだったけども、まあ最後の方では祥瓊がその時逃げ出したお陰もあるかなと思うようにはなれたけども。

 

珠晶の言葉は心に染みる

祥瓊はその責任に気づかなかった。その責任を果たさなかった。野良仕事は辛い、掃除は辛い、嫌だ嫌だって駄々を捏ねて逃げ出す人間を許すことはね、そういう仕事をきちんと果たしている人に対する侮辱なの。同じように朝から晩まで働いて、盗みも逃げ出しもしなかった人と同じように扱ったら、真っ当な人たちの誠意はどこへ行けばいいの?」


責任があるからこそ豊かな暮らしができる。これ当たり前なことなんだけど現実じゃこういう風に考えれるトップってなかなかいないよね。いや本当。出番はちょっとだったけど珠晶のことがすごく好きになったし、珠晶の話が早く読みたくなった〜


でもまあ祥瓊の気持ちも分かる元々持っているものがなくなる、しかも奪われる、というのは辛いし、恨んでしまうのも分かる

貧乏人が死ぬまで貧乏人でも哀れんではもらえないけど金持ちが貧乏人になると哀れんでもらえる。それは元々持っていたものがなくなるからで、元々持ってない人は別に哀れんではもらえない。小公女とかもそうだよね。また再び取り返すのはスッとするけど、でもじゃあ元々持ってない人は?って思ったりもする

私もいまよりもう少し良い暮らしをしたいって思うし、多くの人はそう思っているから日々頑張るんだと思う。でも祥瓊は一番上の暮らし、贅沢を知っているからこそ折り合いがつかなくなってしまう。元々貧しかったら恭国で下働きができるだけでもすごいことだと思うし、実際祥瓊以外はそう感じていた。でも祥瓊は一番上を知っているからそれくらいじゃ折り合いがつかない

人って成長するにつれて折り合いをつけていくんだと思う。例えばスーパーマンや大富豪には普通はなれないことがちょっとずつ分かる。まあ自分はこれくらいの人間で、こういう感じに生きて死んでいくんだなっていうのを受け入れる。急にじゃなくちょっとずつ折り合いをつけていく。でも祥瓊は自分は一番上の人間だと思っていて、それを疑ったこともないし、深く考えたこともなくて、だから突然違う人生を強要されて、認められずに陽子のことでさえも恨んでしまったんだと思う。ずっとそのままだと相当生きづらいから、少しずつ変わっていけて本当によかった。

自分の限界を知るのって辛いけど、でもそうすることで目の前の今の暮らしを大事にできると思う


大人になっていく鈴

一方、鈴は最初はただただ可哀想な子だと思っていたけど、なんだか世間知らずな子だなあ、となって、長年生きているのにこんな子どもなのか!とびっくりした。清秀の方がよっぽど大人だよね。笑

 

↓そんな鈴に才国の王・黄姑は言う

「生きるということは、嬉しいこと半分、辛いこと半分のものなのですよ」

「人が幸せであるのは、その人が恵まれているからではなく、ただその人の心のありようが幸せだからなのです」

本当そうだなあ〜。めちゃ良いこと言ってもらっているのにこの時の鈴は「は?」みたいな感じだったからね。でもそんな鈴も成長するにつれて自分で考えていけるようになっていく。


↓そして鈴の言葉。そうだよなあ、としみじみ自分を可哀想だって思ってばかりいても意味ないよね。

でもあたし、ぜんぜん可哀想なんかじゃなかったわ。清秀に比べたらとても恵まれてた。そんな自分を分かってなくて、自分を哀れむので精一杯で、清秀をここまで連れて来たの

そしてもう一つ↓

傷つけられるのは苦しいから。やがて痛みにもう無条件に怯えるようになってしまう。苦しみから逃れるために我慢する。そのうちに我慢することで、何かをしている気分になる。ーー本当は何一つ変わってはいないのに。

これ分かるな〜。変化は怖い、新しいことは怖い、だから逃げる、動かないように変わらないようにする。確かに新しいことはないし安心かもしれないけれど何も変わらないって良いことも起こらないってことだもんね。とにかく学習性無力感になる前に抜け出そう!

 

陽子と祥瓊と鈴

祥瓊が楽俊と会ってちょっとずつ陽子への見方を変えていったのに対し、鈴は陽子に負の感情を抱き始める。その対比が面白かった。2人ともその時々で陽子に対して色んな思いを持っている。自分と比較しやすいからだよね。

自分より豊かに見える人自分より幸福な人、なのになんで自分は違うのか?自分と彼らは何が違うのか?私が何をしたっていうの?!私が悪いことをしたわけじゃないのに!!って。

今の時代だと芸能人とかそういう対象になりやすい。自分と同年代で自分よりキラキラしている人。でもその人にはその人の悩みがあるのにね。陽子だって一国の王で大体のものを得ることができるけど、だからって悩みがないわけじゃないし、無条件で幸せなわけじゃない。

「私は蓬莱で人に嫌われることが怖かった。始終人の顔色を窺って、誰からも気に入られるよう、無理な綱渡りをしていたんだ。ーいまとどう違う?愚王と呼ばれることが怖い。諸官の、民の、景麒の顔色を窺って、誰からも頷いてもらえるよう、無理をしている」

陽子は陽子なりに葛藤していて、でも誠実に生きようとしていて。それで市井に出て行った。最初の蓬莱にいた時の陽子と比べると別人すぎてびっくりする。でも蓬莱の時の陽子も陽子なわけで、すぐには変われないけど、でもそれを自覚して変わろうとする陽子はすごいと思う。尊敬する。それに2人にちゃんと自分のことを話せたのも陽子らしいしすごくよかった。


陽子と景麒

2人の関係はあんまり良くなくて、前王と同じ道を辿るのは辛い!!と思っていたけれど、陽子は誠実だし真っ直ぐだし、辛いことにも目を逸らさずに見据えることができるからきっと大丈夫だと思う。

この流れが好き↓

「……なぜ、わざわざそれを訊く?」

その眼の翠に勁い色が浮かんだ。

「それは、確認する必要があることなのか?」

勘気を知って景韻は思わず目を逸らす。妖魔の視線でさえ受け止められるはずが、主の視線を受け止めることができなかった。

「景麒だけは、私を信じなくてはいけない」

「…申し訳ありません」

「私を信じない第一の者は、私なんだから。誰が疑わなくても私だけは、私の王たるべき資質を疑っている。猜疑が過ぎて道を失った王だってあっただろう。だから、たとえ世界中の誰もが私を疑っても、お前だけは私を信じていなければならない」


そして、

「...それほど私にお怒りか」いや、と陽子は背中を向けたまま首を振る。「自分に腹が立っているだけだ……」景麒は軽く息を吐く。自分は言葉が足りないのだ。とくに言葉を惜しむわけではないが、常に気が廻らない。足りなかったことにあとから気づく。「申し訳ございません」「景麒のせいじゃない」振り返った顔は複雑な色の笑いを浮かべている。「怒って悪かった。……八つ当たりだ」「私の言葉が足りませんでした」「いや、私がちゃんと訊けばよかった。……済まない」行こう、と促す主の顔を見やって、景麒はわずかに眼を細めた。責めない主の強い心根が嬉しく、同時に懐かしい気がする

ーいいえ

懐かしい幼い声がする。

ーぼくが早とちりしないで、ちゃんとお訊きしてれば良かったんです

景麒は藍の漂い始めた空を見やる。

かの国はーーあちらだろうか。


景麒は確かに言葉足らずではあるけれど、陽子は独りよがりではないからきっと大丈夫なはず。それに景麒の思いとか人間らしさとかそういうのを実感できたのが嬉しかった。景麒も前王のことがあるし悩んでいたんだよね。


終わりに

陽子は市井に降りて1人の人間として人々と関わって、そこでできた仲間とは王とか以前に陽子との間で絆がある。陽子は自分で仲間を見つけることができた。そうやって行動できるのは陽子の強みだと思う。

祥瓊や鈴もこれからも陽子の近くにいるみたいだし、また3人の絡みがみたいなあ〜。