文学系心理士の自己投資ブログ

文学系心理士の感想部屋

文学系心理士が好きなことを徒然なるままに書きまくるブログ。小説、NETFLIX、たまに心理学のことも♪

むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました

日本昔話×ミステリの続編!!

読んでみて

竹取探偵物語

これは面白かったー!竹取物語で有名なかぐや姫がなんと探偵に!!しかも秘密裡に潜入していたという。かぐや姫が求婚者たちに出す無理難題も実は犯人探しのため。設定は好きすぎる!!

ただ、前半が幸せそうだったのでちょっと悲しかったな。

 

七回目のおむすびころりん

よくある意地悪じいさんのお話かと思いきやなかなか頭を使うタイムリープもの!タイムリープ好きすぎるのでこういうの好き。

意地悪じいさんが正直者で優しいじいさんの真似を全くしないのが逆に潔すぎた笑。どう考えても優しいじいさんの真似した方がすぐに欲しいものが手に入るのにね笑。要領が悪い人だよね。他人事に思えない苦笑。

 

わらしべ多重殺人

これもおもしろかった!あの有名なわらしべ長者。人を殺してしまう人がたくさん出てくるけど、実はーー!?

最後の探偵のターンがおもしろかったな。にしても多重殺人って怖すぎる。

 

真相・猿蟹合戦

あの有名な猿蟹合戦。悪い猿が懲らしめられたと思っていたけどー!?

一体目の前の猿は何者なのか。茶太郎と一緒に謎解きをするのがおもしろかった。でも実際にこんな謎かけされたらイライラしそう笑。

 

猿六とぶんぶく交換犯罪

茶太郎には幸せになってほしかったのに…。茶太郎…。

構成としてはおもしろかったかな。それにシャーロック・ホームズもどきっぽいのもよかった笑。とうとうシャーロックが動物になるなんてね!

 

まとめ

全体として前作よりもおもしろかった。今作の方が登場人物が魅力的だからかなあ?それか昔話ミステリに慣れてきたからか。私あんまり複雑な短編のミステリは好きじゃなくて、前作は物語に慣れたら終わっちゃうって感じだったので。特に竜宮城はわりとややこしかったから。鬼も悲しかったし。今回はそんなに暗くならずに読めたからよかったのかも?!

2022年上半期のベスト10冊

Twitterにあった「♯2022年上半期ベスト10冊」というタグに触発されてやってみました!2022年の1月から6月までに読み終えた本たちの中から選んだよ!でも!ちゃんと数えると、1、2、3…あれれ?

イカー街の女たち

シャーロック・ホームズに出てくるミセス・ハドスンとメアリーが主人公!女性たちがホームズたちを差し置いて謎解きをする。二人が探偵をしなければいけない理由もしっかり書かれていて分かりやすいし、ホームズも影ながらサポートしてくれたりしてホームズへの好感度が上がる!!

女性二人組の探偵が好きな方やホームズが好きな方はぜひ!

続編もおすすめ!もっと続きを読みたい!

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緋色の研究

こちらは本家のシャーロック・ホームズ。緋色の研究よりと四つの署名の方が好きなのですが笑、シャーロック・ホームズシリーズ全体をベストに入れたかったので緋色の研究にしました。

まだホームズシリーズは半分くらいしか読めてないけど、本当に楽しい!!!

ホームズがワトスンのこと好きすぎるのが気になりすぎている!!子どもの頃に読んだ時は気にしてなかったのに。もはや愛だよね?!!

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ハリエット・タブマン 彼女の言葉でたどる生涯

去年あたりからハリエットについて読んでいて、今作も読んでみたよ。

ハリエット・タブマンは元々奴隷だったけれど、逃げ出して、さらに地下鉄道の一員として多くの人を助けた女性。しかも一度も脱線させなかったというすごい人!

私が今まで読んだ本の中では一番読みやすいかも。ハリエットが実際に言った言葉が書いてあって、ハリエットがどんな人だったのか分かりやすかった。

 

木曜殺人クラブ

高級老人ホームに住むおばあちゃんたちが事件を解決する!!こんな余生を送りたい!!とすごく思えた作品。

仕事から引退していて肩書きもなくなったおじいちゃんおばあちゃんがどうやって事件を解くのかもおもしろいし、老人ホーム内の人間ドラマもおもしろい。殺人事件だけど陰鬱にならずに読めて読後感も良き。

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ロンドン謎解き結婚相談所

こちらは戦後のイギリス。良いとこのお嬢様だけど戦争で夫を亡くした未亡人と元スパイで独身謳歌中の女性の二人が結婚相談所を開く!ところが紹介したカップルの女性が殺され、男性が殺人犯として捕まってしまう!

二人ともそれぞれ違う個性があって好きになること間違いなし!全く合わないような二人なのに友情を育んでいくのも良き。戦争で傷ついた二人が一緒に立ち上ろうとする。

続編はこちら!

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夏物語

大阪の下町で生まれ育ち、今は東京に住んでいる夏子の物語。冒頭は「乳と卵」とほぼ同じ。夏子たちのその後が分かるよ。

夏子は精子を提供してもらうことで子どもを産もうとする。「会いたい」と強く願う夏子。本当に子どもの幸せを願うのならば生まれない方がいいと思う善百合子。

AID(非配偶者間人工授精)という言葉も初めて知ったし、子どもについて、生きることについて、自分の母や祖母について、色々と考えさせられる作品だった。夏に読むのが季節感があっておすすめかも!

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命を落とした七つの羽

カナダに住む先住民の人々への差別を描いた作品。同化政策という名の元に子どもたちは親から引き離され、寄宿学校へ入れられた。それは1996年まで続く。そこでは身体的、精神的、性的虐待が横行し、粗末な衣食住しか与えられず、多くの子どもたちが殺された。今でも跡地から子どもたちの骨が見つかる。そして差別は今も起こっており、2000年から2011年の間にサンダーベイに住む7人の子どもたちが亡くなった事件を描いている。

読んでいてとても辛いけれど、この事実を知るべきだと思う。

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わたしを離さないで

提供者の介護人をしているキャシーは、幼少期をヘールシャムと呼ばれる施設で多くの子どもたちと一緒に育っていた。そこには親友のトミーやルースもいた。キャシーは昔を振り返るがー。

カズオ・イシグロ作品を初めて読んだけれど、とてもよかった。自分達の運命を受け入れている主人公たちがとても悲しい。奇跡が起こるわけでもないし、待遇が改善するわけでもない。でも彼らは精一杯生きていた。

人間とはどこから人間なのか。人間かどうかを人間側か線引きしていいのか。彼らは人間なのにそれを証明しないといけないのが悲しかった。

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ウォーター・ダンサー

地下鉄道がある時代の物語。

なんとハリエット・タブマンも出てきて本当に嬉しかった。ホワイトヘッドの「地下鉄道」よりは直接的な残虐な描写は少ないから読みやすいと思う。ファンタジーっぽさもあるのでね。

白人の協力者と奴隷である黒人の違いを明確にしていた部分はとても考えさせられた。同じ目的を持って動いているように思えて、そこには差がある。また、作中でソフィアが語る言葉は現代の女性にも当てはまること多くて心に残った。

 

 

あの本は読まれているか

冷戦下においてアメリカが行った一大プロジェクト。ソ連に住むボリス・パステルナークは「ドクトル・ジバゴ」を母国では出版できなかった。アメリカ側はその本をソ連の国民に届けようとする。

女性たちが主人公。ボリスの愛人であるオリガ、スパイであるイリーナ、サリー。イリーナとサリーの関係がとてもよかった。

一冊の本がこれほど力を持つことに改めて気づかせてくれた作品。自由に本を読める国に生まれて嬉しい。今後も自由に本を読める国でいて欲しい。

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ののはな通信

女子校に通うののとはな。性格も家庭の状況も違う二人だけれど親友だった。ところがののには秘密があってー?!

二人の手紙のやりとりを通して物語が進む。学生時代は学生の頃を思い出しながら読んでいた。こんなに仲良しな親友がいるのって羨ましい。ののの秘密は大したことないだろうと思っていたら?!びっくり。

最初は女学生二人の恋愛模様だったのに二人とも成長して大人になっていってその時その時の悩みに変わっていく。二人がお互いにとって唯一無二な存在なのが素敵だった。

 

10冊に絞れなかったので11冊になりました!笑

にしても海外の作品が多いな…。

【宮部みゆき】よって件のごとし

三島屋変調百物語八之続になります〜!

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あらすじ

おちかから百物語を引き継ぐことになった袋物屋三島屋の次男坊・富次郎。おちかとは違って墨絵を描くことで聞き捨てにしている。百物語にも慣れてきた富次郎だったがー。

 

読んでみて

前作の「魂手形」と今作は続きになっている。なので挿絵も三好愛さんという同じ方が描いている。

読みたくってたまらなかったのですぐに読んでしまったけれど、前作を読み返してから読めばよかったなと後悔。そのうち2作続けて改めて読もうと思う。

 

賽子と虻

神様のお話。

最初に蝉くらいの虻っていう意味が分からなくググって後悔した。でも虻ってそんな見たことないような気がする。虻って認識してないだけ?!!マジで蝉くらいの虻がいたら怖すぎる。蝉でも怖いのに。しかも虻って血を吸うらしくて…。

 

語り手は笑えなくなってしまった餅太郎。

幼い餅太郎にとてつもなく恐ろしいことが待ち構えているのかと戦々恐々としていたら、恐ろしいは恐ろしいけど人間の恐ろしさだった。

姉のためを思って呪いを受け、さらに燕の神様の代わりに痛手を被り、自分の命を捨てて大事な人を助ける餅太郎。なんてすごい子!!

もう餅太郎を幸せにしてあげてーーー!!!って何度思ったか、

 

というかそもそも神様のお社でずっと働き続けるってことが大変すぎる。

十二国記の鈴を思い出していて、彼女も長い年月働いたんだよね。嫌がらせもされてずっと働かされてだから拗ねていた鈴。でもそれが当然だと思うよ…。11歳の子どもが親や家族からも離れて仕事をずっとするなんて…。でもそれも昔は当たり前だったのだろうな…。子どもが子どもとして暮らせないっていう。

弥生様との仕事の差も身分の差っていう感じで嫌だったな…。

 

そもそも玉の輿に乗った姉に嫉妬するっていうのがひどい。宮部みゆきの短編集で同じようなのがあったのを思い出していた。「あやし」の中の「梅の雨降る」という作品。その作品では呪った側だったけれど。でも今回の加害者は全く反省していなかったけれどね。

 

神様たちの世界を垣間見えるのは興味深かった。本当にこんなふうなのだろうか?

人間たちに敬われている神様は強い。人間よりも圧倒的な存在が神様。でも人間に忘れ去られてはいけない。人間は時に神にひどい仕打ちをすることもある。

今まで信仰して敬っていた神様にひどい仕打ちができる人間って自分に自信があるのだなと思う。そうじゃないとできないから。

でも今主流の信仰も起源があるわけで、それ以前の信仰とは違う考えを打ち出しているわけだし。多くの人が信仰してくれればそれだけ神様は強力になるのだろうか…。

「それが神々の定められたことだと考えるとすると、さて、人と神々はどちらが先でどちらが後なのでしょうか。難しすぎて、わたくしにはわかりませんわ」

人がいるから神々がいるのか、神々がおわすから人がいるのかーー


お供してくれる賽子たちがよかった。自分の味方がいるのは嬉しいよね。

 

土鍋女房

こちらも神様のお話。

神様と夫婦になるということで、話としては聞いたことがある内容だと思う。

興味深かったのは「三笠の渡し守」。貧乏だけれど村の人々からは尊ばれる。でも危険な仕事だからこと短命。

難しいところだよね。誇りは持てるけども、お金はないし…。もうちょっと金銭的に何かできないのかと思ったり。

でもお金目当てでやるのはよくないって考えなのだろうな。うーーーむ。

 

話し手のとんびがとてもよかった。

そして最後には話し手から頂き物をもらってしまう富次郎。以前とは少し違う百物語の関わり方になってきているけども?!

 

よって件のごとし

こ、これは!??まさか?!!というお話。

現代ではよく見かけるけどもまさか江戸時代にもいたとは!??

 

江戸時代は江戸時代で大変そう…とは思うけど、現代よりも戦えたりするのでは?!と思ったり。現代人なんてそもそも戦えないからね。武術の覚えがある人なんてほぼいないし。かといって銃なんて使えないし。海外とかならいいのかもしれないけど。

 

さらにパラレルワールド的な世界観も出てきておもしろかった。戻れなくなっちゃったから真偽は確かめようもないけども。

とにかくハラハラドキドキ。病っぽいけど未知の存在。中ノ村の人々がすぐに助けに行こうとするのがかっこよかった。なかなかできないよ〜。

そして村を捨てるか捨てないか、というのも辛いよね…。

やはり違う世界に来ると良くないのだろうか。例え似ていたとしても。悲しいね。

「繋がる縁なら、どんな困難だって乗り越えて繋がる」

そうだよね〜〜〜。二人を見た後だとそうなるよね〜〜〜。

人との出会いって不思議ですよね。もっとこうしておけばよかったな、と思うことがあっても、そこで出会って人がいるとそれなら今のままでいいなって思えてしまう。

私も若い時に失恋したことがあって、だいぶ引きずっていたのだけど本当に運命の相手ならいつかまた出会うかもしれないし、そうじゃないならそういう相手じゃなかったのだなと思うことにしたのだよね。合理化と言っていいのかというレベルの合理化だけど笑。

違う時期に会ってたらきっと仲良くならなかっただろうな、とかそういうこともあるし本当に縁だなって思う。

私もパートナーとは色々な偶然(?)的なことが重なって出会っているのでそれも縁だなと思います笑。


三島屋の人々もちょっとずつ変化がある。

おちかはお嫁に行き、妊娠中。

そして古参のおしまが瓢箪古堂へ行き、なんと最後には伊一郎も帰ってきて環境がどんどん変わっていく。伊一郎も参加したりするのかな?!

どうなるんだ〜〜〜!?そもそも百物語はしばらく休むらしくて、それも悲しい…。

にしてもお嫁に行くっていうのが…身内から外れるっていうのが…。

つ、つらい!!おしまも夜逃げ的な感じで行かないといけないっていうのが…。

め、めんどう!!つらい!!

江戸もの好きなのだけど徹底的な身分制度とか男女差別とかには怒れてきてしまう〜〜。


次回作も楽しみです!!!生きる糧!!!

今までの感想はこちら↓

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【本】7月に読んだ本

7月に読んだ本のまとめです〜!

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誓願

侍女の物語」を1年くらい前に読んでて誓願をやっと読めました!侍女の物語は結構辛い内容が多かったので連続で読むのはやめたのだけど、侍女の物語よりも誓願の方が希望を持てるストーリーになっているので連続で読めばよかったな〜と後悔中。

マーガレット・アトウッドの他の作品もたくさん読みたくなった。

 

自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと

「一般男性」が自分のことを率直に語る。目の前で話されているようでグイグイ引き込まれてしまう。

「こういうふうに考えているのか〜」と納得できる部分もあれば、引いてしまうところもあった。でも色んな考え方があることを知れたし、男性の世界って生きづらそうだなあと思った。ホモソーシャルってその中の男性たちも苦しいはずなのに、それを苦しいと言えなくなっているのが問題だよな。

 

兄の名はジェシ

兄のジェイソンは自慢の兄だった。ところがー?!

トランスジェンダーについて書かれている作品。小説でトランスジェンダーを題材にした作品を読むのは初めて。私が子どもの頃にはトランスジェンダーについて書かれた子ども向けの小説ってなかったと思うから時代が移り変わっているのだと感じた。

性役割が明確に分かれていて、そこから外れることに拒否反応を示す人々が多いよね。

 

自由研究には向かない殺人

とにかくおもしろかった!!完成度が高い。

私もピップと同じように事件の謎を解いている気分を味わうことができた。続編もあるみたいなので読みたいな。

 

たかが殺人じゃないか

戦後の日本で起こった殺人事件。

少し前までは人殺しが賞賛されていたのに戦争が終わると犯罪者になってしまう。戦争って本当に狂ってると思う。

戦後の日本の様子をあまり知らなかったのでその辺りもすごく興味深かった。戦争の悲惨さも描いている。登場人物たちがとても魅力的だった。「深夜の博覧会」という作品が一作目にあたるらしいのでそちらも読んでいきたい。

 

三十の反撃

「アーモンド」の作者の続編。

派遣社員的な立ち位置で働く女性。働きながら塾に通って勉強をしていて、韓国ってすごい!ってなりました。日本って働いてからあんまり勉強しないよね。

社会へ反旗を翻していくのだけど、大それたことはやらないのがリアル。私自身が一般的な就職活動をしたり競争したりっていう感じのを経験してないし、大企業に入りたい!!って思ったこともなかったからかそこまで共感はできなかった。「何者にもなれない」人たちが主人公なのだけど、私はもう自分のやりたいこと決まっているからなあ…。でも日常の中でちょっとしたスリルというか反旗を翻す様はワクワクするものがあった。

 

クララ殺し

前作に引き続き2作品目!

クララ殺しだけど、アルプスの少女ハイジではなくE・T・A・ホフマンの小説がモチーフになっている。くるみ割り人形と鼠の王様とかなんとなくは知ってるけど詳しくは知らなかった。元ネタを知ってたらもっとおもしろかったかも!

そして相変わらずエグい!!ビル可哀想すぎる!

 

最近あんまり体調がよくなくて本も読めないしブログも書けないし読めない〜。

無理せずに過ごそうと思います...。

【ホリー・ジャクソン】自由研究には向かない殺人

よく見かけていて絶賛されていたので読んでみたよ!!

あらすじ

高校生のピップは自由研究で数年前に起こった17歳の少女の失踪事件について調べることにする。犯人とされた少年は既に自殺していたが、彼は無実だと感じるピップは自由研究を口実に関係者にインタビューをしていくがーー?!

 

読んでみて

570Pほどある作品だけれど、すぐ読めてしまった。全然長く感じない。

続きが気になってどんどん読めてしまう。文中にはピップの自由研究の資料が時折挟まれており、読者もピップと一緒に自由研究をしながら犯人を探している気分になれる。

こんな感じに自由研究の発表資料やインビューや手帳なんかの情報が載っているのって、なんだか子どもの頃に読んだ「フィリックスの手紙」みたいで好き。


ピップの行動力がとにかくすごい。

まず自由研究として殺人を扱うのがすごい。建前としてはメディアの調査報道やメディアが果たした役割についての研究としている。でも当たり前だけど教師は反対。それでもちゃんと自分の意思を通すピップ。

それに高校の最後の学年なので大学入試もある。しかもケンブリッジ

大学入試の描写もあるのだけど、日本の試験とはまた違った感じみたいだった。


ピップがなぜそんなにも真実を突き止めたいのか?

それは途中で明かされるけれど思ったよりもあっさりしたもの。でもそれが逆に現実っぽくなっていた。

加害者の家に行ったり被害者の家に空き巣に入ったり麻薬ディーラーと駆け引きしたり…。

なかなか危ないことをするピップ。

途中でやめてーーー!って何度思ったことか。


そしてピップが脅される場面。

脅しに屈してしまうなんて!って思ってしまうけれど、実際に同じような場面になったらそうしてしまうよね…。

ただ、脅されて言うことを聞いたとしてもそこで終わるかは分からないのだから、周囲に相談することが本当は一番いいのだよね。誘拐でもそうだけど。

脅されていることを周囲に知ってもらうことが自分の身を守る一番いいやり方だと思う。

でも子どもだと難しいよねー...。


犯人が分かるようで分からなくなっていたので最後まで楽しめた。

友人との葛藤なんかもあって深みが出ていたように思う。


にしても高校生がこんなことするなんて!!

ピップすごい!!!


読んでいて楽しかったし読後感もいい作品でした。

ちょうど続編が出たらしいのでそれも読みたいな。

【本】6月に読んだ本

6月には7冊読みました〜!

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oljikotoushi.hatenablog.com

 

読んでみて

平安ガールフレンズ

茶箱(id:pooh70inu)さんが紹介されていて、読みたいと思い続けやっと読めた作品。

読みやすいし分かりやすいしで古典苦手意識ある人でも楽しめるはず。著者はやや清少納言ひいきだったけど笑。

平安時代の暮らしとかも知りたいな〜と思い始めている。

茶箱(id:pooh70inu)さんが他にも紹介してくれている平安時代の本をまた読んでいきたい。

私の詳しい感想はこちら!

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アリス殺し

日本の作家さんってあんまり読まなかったのだけど、日本のミステリーも読みたい!!と思い始めて読んでいる。

書店で見かけて題名に惹かれてしまった。続編もあってどれもみんな知っている有名な主人公たちの名前がついている。

一見楽しいファンタジー系ミステリーかと思いきやエグめのミステリーでした。残虐なのがそこまで苦手ってわけじゃないのですが、普段読むミステリーでは残虐じゃない方がミステリーに集中できるから残虐じゃない方がいいんですよね〜。

でもこの作品は前提がファンタジー?SFっぽいところがあったのでそこまで重くならずに読めました。でも痛そう!!!やめてあげて!!!痛そう!!!と思ってしまう部分があったよ…。

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ののはな通信

去年の夏フェアから読みたいと思っていて、やっと読めた作品。

思ったよりも分厚い!!そして中身濃い!!!

タイプが違うけど親友同士の女の子。でも秘密があってーーー?!みたいな感じに書かれていたんですが、「まあ、秘密って言ってもそんな大した秘密じゃないだろ」って思っていたら、まあまあな秘密だった。高校生なのに?!!

てか生徒に手を出す先生がいるのヤバい。まあでも生徒と結婚した先生って意外に珍しくないよね〜〜〜。怖すぎ。

 

兇人邸の殺人

最新作読めて満足!と思っていたら出版されたのが2021年という。

1年前??!1年早くない?!!という驚き。

続編も読みたいなと思います。

 

シャーロック・ホームズの復活

シャーロックが復活したよ!!よかったねシャーロック!よかったねワトスン!残念だったねコナン・ドイル

ボリューム十分の短編ばかりで楽しめました〜。

にしてもシャーロックの復活の仕方があっけなさすぎるな。

 

ゴーストハント3 乙女ノ祈リ

再び学校が舞台。

読んでいると超能力のこととか色々学べておもしろい。

ナルの秘密も気になるな〜。

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准教授・高槻彰良の推察5

秘密がやっと明かされたけど、高槻の方の謎はまだまだ。

サラリと読めておもしろい。

百物語がうらやましすぎた。誰か一緒にやって欲しい…。でもパニックっぽい感じにはならずに和気あいあいと終わりたい…。

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そんなに読めなかったのが残念〜。

誓願」は6月中に読んでたのだけど、ぎりぎり読み終わったの7月になってしまったのだよね〜。長くて内容が濃い本は1週間くらいかけて読みたいのでね。

【ラーラ・プレスコット】あの本は読まれているか

 

 

あらすじ

冷戦下のアメリカ。ロシア移民の娘であるイリーナCIAにタイピストとして入職する。ところが裏の仕事としてスパイになることになりー?!一方ソ連では、作家のボリス・パステルナークドクトル・ジバゴを描き続けていた。モデルとなったオリガ強制収容所に入れられてしまうーー

 

読んでみて

「アメリカで出版契約金200万ドルのデビュー作で、アメリカで初版20万部、世界30ヵ国で翻訳決定、アメリカ探偵クラブ主催の2020年エドガー賞最優秀新人賞ノミネート」というすごい作品。

おもしろいのが著者のラーラ・プレスコットは「ドクトル・ジバゴ」の主人公・ラーラと同じ名前でもある。


ドクトル・ジバゴも知らなかったし、この作品がどういう内容かも知らずに読み始めた。もっと本の話なのかと思っていたら冷戦もの、スパイものだった。しかも本当の話で、「ドクトル・ジバゴ」も実際にある。映画化もされており、1965年の作品らしい。ちょうどNetflixで「ストレンジャー・シングス」を観ていたらレンタルショップのところで「ドクトル・ジバゴ」の名前が出てきてびっくりした!私が知らないだけでめちゃ有名な作品みたいですね。そのうち読んでみたい。


まり普段はスパイものとか観ない。戦争ものの本は読むことが多いけれどもっと一市民目線の凄惨な戦争の物語を読むことが多いので、こういう形の戦争ものは初めてだった。そもそも冷戦なので普段読む第二次世界大戦と内容が違うのは当然なのだろうけど。


人かの視点から語られる物語で、あらすじにはイリーナの名前があるけれどイリーナだけが主人公なわけではない。

ロシア移民でアメリカに住みCIAのスパイとして活動することになるイリーナ

同じくスパイで第二次世界大戦から活躍しているサリー

ボリスの愛人であり「ドクトル・ジバゴ」のヒロインのモデルでもあるオリガ

ドクトル・ジバゴ」を書いているロシアの作家ボリス・パステルナーク

大体この辺りの登場人物が主軸となって物語が進んでいく。


接戦うような場面はないのだけれど、オリガが強制収容所に連れていかれる場面がすごく辛かった。

強制収容所は劣悪だし人としての尊厳を失わされる。しかもオリガ自身のせいで入れられたのではなく、ボリスの愛人だったからボリスに圧力をかけるために連れていかれたのだよね。

強制収容所では強制労働をさせられるのだけれど、何十時間も穴を掘ったりするような辛くて無意味なことをさせられる。ソ連だから寒い。地面も硬い。第二次世界大戦の時にソ連に連れていかれた日本兵たちのことを思い出した。

食事も満足に食べさせてもらえないし、ずっと外にいるわけだから肌が荒れる。それまで綺麗だったオリガが急に年をとったようになってしまう。肌が変わっていくっていう描写がすごく印象に残っている。今までの自分と違う自分に変わってきているっていう。生きているだけでもいいと思わないといけないのかもしれないけど、そういう変化が堪えるように思う。オリガは数年で出たけれど、一生いる人もいるかと思うととても辛い。


っきり言って私だったらボリスのこと嫌いになってしまうというか、ボリスが悪いわけじゃないと分かっていても今まで通り愛せないと思う。なのにボリスの方が会う時に怖がっていて会わなかったりして、「なんだこの男?!!」となりました。だって自分の代わりに強制収容所に行ったようなもんじゃん?!!とイライラ。葛藤するのは分からないでもないのだけど、だからって会いに行かないのはひどいでしょ!

あとオリガとボリスの関係が愛人で、妻と離婚できない理由も分かるけれどオリガが都合のいい相手として扱われているのが嫌だった。妻でもないし家族でもないからいつでも切り捨てられるというか。最後も会わせないってどうなの??と思ってしまった。だからまあ家族じゃなくて愛人だったのだなあ、と。いい意味でも悪い意味でも。大事な人ではあったのだろうけど。あと妻のことも思うとうーーーんという感じ。まあなんか昔の倫理観って今思うとどうなの?ってなること多いし、著名で素晴らしい人でも男尊女卑で女性にはひどい人とかいるもんね。昔はそれでも良かったのだろうけど、今はそれだとさ…というね。

 

はオリガにもっと幸せになって欲しいと思ってしまった。愛人なんかじゃなくてさ…。二人の絆は本物だったとは思うのだけど、でもオリガばかり理不尽な目に遭っているように思えてしまった。そもそもはオリガをひどい目に合わせたソ連側のせいなのだけど。こういうことをして人に言うことを聞かせるのだな…。


リーナとサリーの関係がすごく好きだった。

とにかくサリーがかっこいい

第二次世界大戦ではすごく活躍したのに、戦争が終わると女性にスパイは無理ってことになってしまったらしい。意味分からないよね。

まあ日本でも男性がいない間は女性が車掌になったりしていたけれど、男性が戻ってきたらなれなくなってしまったらしいので、そういうことだと思うけど。ひどい。

女性はただのタイピスト。男性たちの言葉を記録するだけ。女性の意見は求めてない。求めているのはお茶汲みだけ。

 

リーは「宝島」「ロビンソン・クルーソー漂流記」「洞窟の女王」を子どもの時代には読んだと書かれている。「洞窟の女王」は知らなかったので読んでみたい。

読んでいて、最初はなぜイリーナとサリーの関係が暴かれると良くないのか全然分からなかった。

「なんで???誰と付き合おうがなんでそれがCIAを辞めることまでに発展するの???」って。

でもしばらくしてこれが冷戦の時代だってことに気づいた。冷戦の時代は同性愛ってことが分かると職を追われることになってたらしいんだって。今も完全に差別がなくなってはいないし、同じような目に遭っている人がいなくなっているわけではないけれど、現代の感覚でいうと「CIAがそんなことするの?!」という驚きの方が強い。今やったら大問題だよ。何も仕事に関係ないのに。


リーナは最初は初心者で、サリーに色々教えてもらっていた。でもだんだんできるようになっていって、大事な仕事もこなせるようになっていく。万博でドクトル・ジバゴを秘密裏にソ連の人々に配る場面はドキドキした。意外に持って行ってくれる人がいるのにもびっくり。でも表紙を変えたりどこかに隠せるようにしないといけなかったけれど。自国の本が他国でしか読めなくて自国で読めないって変な感じだよね。絶対にそうなって欲しくないな。

イリーナとサリーの関係が甘酸っぱくてとてもよかった。私、男性同士の謂わゆるBLにはそんな興味ないのだけど、女性同士の恋愛は好きなのだよね。多分女性の方が自分を投影しやすいからなんだろうけど。BL好きな人は壁になりたいって言うの聞くので自分をあんまり投影したくないのだろうね。

この時代はサリーみたいに自由に生きたい女性にとっては男性と恋愛しにくかったろうなと思う。仕事をしてても家庭に入って良妻賢母になって欲しかったり、サリーみたいな女性は遊ぶにはいいけど家庭には別のもっと家庭的な女性を求めていたり。


くてかっこよくて憧れてしまうようなサリーが性的暴行を受ける場面がある。あまりにもあっさり書かれていて、でも私はすごく衝撃的だったし加害者を罰して欲しかったし、周りが流すのが信じられなかった。サリー自身もその場では諦めるのもとても辛かった。

友人だった相手がサリーの状況を理解した上で何も対応しないのが最悪すぎた。結局のところサリーは切り捨てられる相手で、どれだけ優秀であろうと性的暴行のために加害者である男性を切り捨てる方が損って考えられている。大学を出た優秀な女性が男性たちの発言のをタイピングするしかできなくて自分の意見を言ったらその仕事でさえ外されてしまうのだから。

よく男性の将来のことを考えて、とか聞くじゃん?他の犯罪でそんなこと言う??

とにかくすごく怒っていたのだけど、サリーも同様に怒っていて復讐を果たす。この復讐は本当に怖い復讐で、そういう状況になってしまったことは悲しかった。これもちゃんと法律で罰することができていたら違っていたわけでしょ?ちゃんと法律で裁かれなかったらこうなってしまったわけで。法の下に平等に裁かれることは大事だと思う。ただ、この方法はサリーらしいと思ってしまった。今までの全てを捨てても復讐したのが。

 

リーとイリーナが別れて行ってしまうのは悲しかった。

イリーナのお母さんが亡くなる場面も悲しかったし。

でも最後の場面で衝撃的な事実が分かってよかった。あの場面は本当に感動した。


の本を読んで一冊の本がこれほど力を持つことに改めて驚いた。

何気なくいつも本を読んでいるけれど、本にはこれほど力があったんだって。今、当たり前に好きな本を読めて色々な外国の本も読めて、過去に問題作と言われた本も読めるって贅沢なことだよね。独裁国家になったらそういう自由もなくなるわけだから絶対になって欲しくない。どこの国も。女性が学ぶことさえ禁じている国なんて酷すぎる。知識は力で知識があることで支配されにくくなる。

ネットもいい面はあるけれど、フェイクが混じりやすいしそういう意味では本って最強だと思う。まあ色んな本を読む必要はあるけどね。


作中に出てきた作品。

「宝島」

ロビンソン・クルーソー漂流記」

「洞窟の女王」

動物農場

「若い芸術家の肖像」

「ロリータ」

カラマーゾフの兄弟

罪と罰

「白痴」

「路上」

「荒涼館」

「リトル・ドリット」

「007/ダイヤモンドは永遠に

グレート・ギャツビー

「神は躓く」

 

同じ翻訳者さんが翻訳した作品!

どちらも戦争に翻弄される女性たちの絆と闘いを描いた作品!
「コードネーム・ヴェリティ」

「ローズ・アンダーファイア」

この2冊読みたい!!